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一意分解整域上の多項式環

ここでは、R を一意分解整域、 を商体とする。

練習問題にもあるように、R が一意分解整域ならば最大公約元、最小公倍元は存在する。

 

 

m の最小公倍元、d の最大公約元、 とする。 は互いに素である。さらに、

ここで、 とおけばよい。

は、R 上の原始多項式、ab は互いに素な R の元とする。 だから、それぞれの係数の最大公約元を考えると、最大公約元は、正則元倍をのぞいて、一意に決まり、 はともに原始多項式だから、 となる がある。従って、

K の2元 について、 となる が存在するとき、 と書く。このとき、 について、

 

を原始多項式、

p は素元、とする。 のうち、p で割れない最小の i とする。また、 のうち、p で割れない最小の j とする。すると、

で、 は原始多項式と書く。すると、 で、 は、 より、原始多項式だから、

 

の元として既約ならば、 の元として既約であることは明らか。 において、 とする。ここで、 は原始多項式とすると、 より、。従って、 又は、。従って、 においても既約である。

 

である事に注意すると、かつ上の が素元であることは明か。

逆に を素元とする。f = gh とすると、g, h のいずれかは、 の元だから、 又は、同じことだが ならば、f は、R の素元である。 ならば、f は既約で、かつ より となり f は原始多項式。従って、この場合は、 が成立する。

定理 gif の証明 だから、n = 1 の場合、すなわち、R が一意分解整域の時、 が一意分解整域であることを示せばよい。

が素元分解可能であることを に関する帰納法で示す。 の時は、R が一意分解整域であるから、補題 gif に注意すれば の素元に分解できることが分かる。 かつ可約の時は、f = gh と表すと、 だから、帰納法の仮定により、gh ともに素元分解できる。従って、f も素元分解できる。そこで既約とする。すると、 は原始多項式と書くと、 は既約でもあるから、補題 gif により素元、後は、R における素元分解を適用すれば における素元分解が得られる。

一意性: f の素元分解とし、
は次数が 1 以上の既約原始多項式とする。すると、 は 補題 gif により、ともに原始多項式だから、

を得、ある によって、 と書けるから、R が一意分解整域であることより、この部分の一意性は得られる。一方、 は、体上の多項式環だからユークリッド整域、とくに一意分解整域で に一意性を適用すると、適当に順番を入れ替えると、 と書くことが出来る。 だから を得、 が原始多項式であることより、 を得る。従って、分解は一意的である。



Hiroshi Suzuki
1999年09月30日 21時04分33秒