他のコースを教えていたときに同じようなタイトルでメッセージを書きました。なるべく重複は避けようと思います。(「数学の構造」この授業を楽しんで下さった方へ 参照。また、コースの目的は異なりますが、「数学の世界」 この授業を楽しんで下さった方へも参照して下さい。)
最近本を読んでいましたら数学者の弥永昌吉先生が数学教育には「派手」なものと「地味」なものがあると書いておられました。その定義とは少し違いますが、現在の国際基督教大学の一般教育科目の数学の授業は2種類あり、「数学の世界」と「数学の方法」となっています。数学の世界に触れるのが前者で、数学の楽しさ、高校までの数学とはちょっと違った数学に触れることが目的ですが、この授業は、どちらかと言うと地味な物です。楽しんでばかりはいられない、数学です。感想に、皆さん、難しい、難しいと書いていました。私の授業が未熟だったことはこの難しさの半分の責任を負っていると思います。しかしともかく、これから数学を使って行く、またはさらに深く学んで行くときには基本となる、集合と論理・線形代数・微分積分をテーマに取り上げました。ここでは、網羅的にはせず、しかし基本的な問題に絞ってそれぞれであつかういくつかのトピックを扱いました。これらに関する本は沢山出ていますが、何を目的にするかによって大分変わって来ます。私もこの授業の準備のために10冊程度は手元においていろいろと見てみましたが、アイディアは多少もらいましたが、どれもあまり気に入りませんでした。高校の教科書も大分勉強しました。結局、次のステップとしてそれぞれの分野を直接勉強して欲しいと思います。
統計関連のコースは、秋学期に「MTH271 確率・統計入門」、冬学期に「MTH272 確率論と統計学」が開講されています。「MTH271 確率・統計入門」は「微分積分入門」を既修のこと、「MTH272 確率論と統計学」は「微分積分学」を既修のこととなっています。
これら以外に、専門の数学を勉強してみたい。応用より、なぜそうなるのかその理屈を理解したい、と言う方は、数学通論I、II、IIIへと進んで下さい。数学通論 は、どうにかなるかと思いますが、II、IIIを履修するときは、微分積分入門、線形代数入門および線形代数学ぐらいは履修していないと難しいと思います。このような科目に興味がある人は、数学の先生に相談してみて下さい。
私は、数学だけではなく、皆さんに、自然科学系の基礎科目を履修してもらいたいと思います。リベラルアーツと言っていながら、自然科学を一般教育科目だけで勉強すればそれで良いのでしょうか。数学とともに、自然を学ぶことは、人間にとって、基本的だと思います。どうでしょうか。
「高校の時でさえほとんど勉強していないのに、理学科の科目なんて分かるのでしょうか。」と言われる方もいるかも知れませんが、安心して下さい。ご存知のように、高校での数学の必修はごくわずか、理科には必修科目はありません。それを想定して、ICUでは、カリキュラムが組んであります。確かに高校でその科目を勉強して来たことを仮定しているものもありますが、そうでないものもたくさんあります。自分の分野に生かしたい人だけでなく、リベラルアーツの一部として、是非、数学、自然科学を学んで下さい。理学科の基礎科目を履修するとき、この「数学の方法」の授業で学んだことは大きな助けとなるはずです。実際に、微分積分や線形代数を利用することとともに、論理的思考の基本は数学を通して得られることが多いですから。
下にお勧めの、特に、最初に履修すべき科目を書きます。実験・実習は、4時限で2単位、ここに挙げた数学は全て演習がついていますから、講義1時限、演習2時限で、2単位です。「しんどい授業をとるつもりはない」などという ICU 生は、いませんよね。
これ以外に、地球科学概論 (春学期)、地質学概論(秋学期)、天文学(春学期)、生態学 (秋学期) も高校で何を学んで来たかに関係せず受講できる科目です。ぜひ、チャレンジして下さい。