「私は、何を教えるのが良いのだろうか」と最近よく考えます。それは、私が何を教えたいかでもありますが、皆さんに何を学んで欲しいかと言うことでもあります。もちろん、それは、私から、皆さんへのメッセージであるとともに、「いのち」をある一時皆さんと共に育むことだと思っています。
「人間がより人間らしくなることを助ける営み」が教育だとすれば、授業においてもそれは、全人格的な交わりであるべきだと思います。しかし、それと同時に、私が今、召されているのは、数学の教育、皆さんが数学を学ぶお手伝いをすることのはずです。大学で学ぶ数学は何の為でしょうか。「高校以上の数学は何の為か」というのが最初の問いでした。皆さんは今、どう思われますか。アメリカでの大学入学の為につかわれている SAT の基本となる、SAT I は、Math and Verbal です。言語と、数学です。私は、学ぶものが何であれ、その基礎となるのは、言語能力と、数学の能力だと思います。言語能力は、ICUでは、ELP で最初に徹底的に鍛えられます。日本では、この何かを書いたり、まとめたり、議論したり、表現したり、説明したりという部分の言語能力の訓練がはなはだ乏しいと思います。ICUの学生が有能となるのは、ELP でのこの言語訓練がしっかりなされるからではないでしょうか。ELP は、よく言われるように、単なる英語の訓練ではなく、English for Academic Purposes。Critical Thinking 等を養うことにより、学び、議論し、表現していくための言語能力を英語という言葉を用いてするものです。
もう一方の数学の能力のうち基礎的な部分 (どんな学習にも必要な基礎学力としての数学) は、私は、簡単に言うと、計算力と、論理の力だと思います。このうちの論理訓練を、言語訓練と関連づけてするためには、証明を書いてもらい、それをチェックすることが、非常に有効だと思っています。小テストや、授業で証明にこだわったこと、そして、テストを返し間違いを確認することを大切にしたのは、このためです。単なる暗記にならないよう、説明はしましたが、証明を黒板に書くことはしませんでした。自分の頭で理解したことを書き、説明 (証明) する訓練としたかったからです。この人数ですから、十分できたとは言えませんが、ともかくこれを目的としました。小学校、中学校、高校とその教育の中で、証明問題を、計算問題と共にたくさんの時間をつかってするのが良いと思いますが、十分できているとは思えません。ここで言語能力の訓練もされるはずです。
基礎学習能力としての数学の力を訓練する題材として、この授業では、組合せ論を使いました。どうでしたか。かなり高度な考え方も含まれていたかも知れません。その意味で、内容はちょっと特殊だったかも知れません。数学には、この基礎学習能力としての数学という面以外にも、もちろん、自然科学、社会科学を支える手段としての数学があり、純粋な理論としての数学もあります。この後者、二つの面を見るには、題材は、偏っていたかも知れません。また、他の授業を通して、さらに学んで頂きたいと思います。
入門書ですが、本格的に学びたい人向け。時間はかかりますが、皆さんも読めると思います。
楽しく書かれていますが、扱っている内容は本格的です。
「高校の時でさえほとんど勉強していないのに、理学科の科目なんて分かるのでしょうか。」と言われる方もいるかも知れませんが、安心して下さい。ご存知のように、高校での数学の必修はごくわずか、理科には必修科目はありません。それを想定して、理学科では、カリキュラムが組んであります。確かに高校でその科目を勉強して来たことを仮定しているものもありますが、そうでないものもたくさんあります。自分の分野に生かしたい人だけでなく、リベラルアーツの一部として、是非、数学、自然科学を学んで下さい。
下にお勧めの、特に、最初に履修すべき科目を書きます。理学科は、来年度から、大幅にカリキュラムが変わりますので、来年のスケジュール (予定) で記載します。実験・実習は、4時限で2単位、ここに挙げた数学は全て演習がついていますから、講義1時限、演習2時限で、2単位です。「しんどい授業をとるつもりはない」などという ICU 生は、いませんよね。
これ以外に、専攻科目の NSGe200-1 一般地質学 I-II (春学期、秋学期)、NS210 天文学(秋学期)、NSBi 213 生態学 (秋学期) も高校で何を学んで来たかに関係せず受講できる科目です。ぜひ、チャレンジして下さい。