Last Update: June 29, 2013
World of Mathematics (Formerly NS I Mathematics A)
数学の世界(旧:自然科学 I 数学 A)
この授業を楽しんで下さった方へ
感謝
この文章を読んで下さる方がいらっしゃると嬉しいですね。題名が、「この授業を楽しんで下さった方へ」ですから。
この授業を通してみなさんが得たものはそれぞれ異なると思います。しかし、私が目的としてあげたのは三つです。
- 論理的思考・数学的思考を体験すること。
- 一つの数学の世界を垣間見ること。
- 数学を楽しむこと。
もちろん、最初が一番大切です。この内容はいろいろな事を含みますが、通常論理的思考といわれるもの、あることを導く理由を明確にする事ですね。たとえば「木という性質をもつグラフの辺の数は頂点の数より一つすくない」のですが、これを証明するのに、それぞれのステップで、どのような理由を使うのか。「13人の人が握手をし、そのうちの一人であるAさんが残りの皆に聞いたら、聞いた人はみな、握手の回数が違った」このような状況で、たとえば「Aさんは必ず一回は握手した」とか「Aさんが握手した回数はきまるだろうか」とかの問題を考えるのに、何が本質的な理由なのかを明確にすること。本当にその理由だけで、言えることなのか、それを考えること、を大切にしてきました。他にも、あるところで利用した証明方法を一般化し、定理を作り、非常に難しい問題を解決したり。数学で考える問題は、現実離れしてはいますが、現実の問題を考えるヒントもたくさん含んでいると思います。
物事を純粋に客観的に見ること、あることが述べられたとき、それは、主観的なことなのか、それとも、客観的な事なのか、これはローカルな価値観によって判断しているのか、普遍的なものにつながっていることなのか、純粋論理的に考えると、このような状況で、このような結論を導くためには、どのような条件を用いているのか、いろいろと理由が並べられている中で、いま結論することのために、絶対必要な理由は何なのか。このようなことを考えることにも、数学的思考が生きてくると思っています。相手を理解すること、人の意見の中でも、自分の考えの中でも、上のようなことを一つ一つ解きほぐし、共通の基盤を築いていく営みにも、数学的思考は貢献できるのではないかと思います。どうでしょうか。
数学を勉強していて今述べたような力がつくかどうかは皆さんの判断に委ねるとして、物事には、直接影響をもつことと、間接的な影響を持つことがあることも理解して欲しいですね。高校生のとき、別の文脈で聞いた話ですが、あるおばあさんが、川でざるで水をすくっていた。通りかかった人が「おばあさん、ざるでは水はすくえませんよ」というと、おばあさんは「でも綺麗になったでしょ」といったとか。数学自体も価値があると思いますが、数学をする事で得られることにも目を向けて欲しいと思います。
次のステップ
- 数学の方法 (Mathematical Methods in Science) :
高校で勉強したような数学が勉強したい。線形代数や、微分積分を勉強したいというひと、数学を社会科学などで利用するので、その基礎的なことを学んでおきたい。数学をもっと勉強したいが、基礎科目を履修する自信はまだない。数学をつづけてもう少し楽しんでみたい。というかた、是非、この数学の方法(数学のもう一つの一般教育科目)を履修して下さい。ただ、下に書くような、線形代数入門や、微分積分入門を履修した人は、内容が、ほとんどこの二つの科目に含まれますから、履修しないで下さい。理学科の学生は履修できないことになっています。上記のコースが必修だからです。
- 線形代数:線形代数入門 (Introduction to Linear Algebra)(旧:NSMa100 線形代数学 I (Linear Algebra I) :
行列と、行列式、連立一次方程式が中心です。 J が秋学期、E は冬学期です。
- 微分積分:微分積分入門 (Introduction to Calculus) (旧:NSMa106 初等微分積分 (Elementary Calculus)、微分積分学 (Calculus) (旧:微分積分学 II)
高校で数学 III を学んだ人は、微分積分学 (冬学期)、学んでいない人は、微分積分入門 J (春学期) E (秋学期) となっています。
このあとも線形代数は、線形代数学、線形代数学特論と続きます。微分積分は、解析概論 I、II、III となります。アメリカの経済学の大学院の教科書を見ましたらこれら全てのものの内容を使っていました。しかし、必要になってから勉強する方が動機付がはっきりしていてよく勉強できる意味もあります。そこで私のおすすめは、べつに経済学に限らず、社会科学系の勉強をして行こうとする方は、最初に書いた I のレベルのものをまず勉強してみるのをおすすめします。経済を勉強する人はそれに加えて、微分積分学IIまで履修する。あとは必要になったり、ミクロ経済学や、計量経済学を深く勉強しようとしたり、外国の大学院に留学するようなときに勉強するのが良いでしょう。もちろん、それらを履修して面白くなったら是非どんどん勉強して欲しいですが。皆さんが線形代数入門を履修することは何も問題がありませんが、たとえ数学の方法を履修しても、高校で数学IIIを履修していない場合は、微分積分入門を履修するのが良いと思います。微分積分には複雑な計算がでてきてちょっと難しいかも知れません。
これら以外に、専門の数学を勉強してみたい。応用より、なぜそうなるのかその理屈を理解したい、と言う方は、数学通論I、II、IIIへと進んで下さい。数学通論Iは、どうにかなるかと思いますが、II、IIIを履修するときは、微分積分学、線形代数学ぐらいは履修していないと難しいと思います。このような科目に興味がある人は、数学の先生に相談してみて下さい。
私は、数学だけではなく、皆さんに、理学科の基礎科目を履修してもらいたいと思います。リベラルアーツと言っていながら、自然科学を一般教育科目だけで勉強すればそれで良いのでしょうか。数学とともに、自然を学ぶことは、人間にとって、基本的だと思います。どうでしょうか。
「高校の時でさえほとんど勉強していないのに、理学科の科目なんて分かるのでしょうか。」と言われる方もいるかも知れませんが、安心して下さい。ご存知のように、高校での数学の必修はごくわずか、理科には必修科目はありません。それを想定して、理学科では、カリキュラムが組んであります。確かに高校でその科目を勉強して来たことを仮定しているものもありますが、そうでないものもたくさんあります。自分の分野に生かしたい人だけでなく、リベラルアーツの一部として、是非、数学、自然科学を学んで下さい。理学科の基礎科目を履修するとき、この「数学の方法」の授業で学んだことは大きな助けとなるはずです。実際に、微分積分や線形代数を利用することとともに、論理的思考の基本は数学を通して得られることが多いですから。
下にお勧めの、特に、最初に履修すべき科目を書きます。実験・実習は、4時限で2単位、ここに挙げた数学は全て演習がついていますから、講義1時限、演習2時限で、2単位です。「しんどい授業をとるつもりはない」などという ICU 生は、いませんよね。
物理
- 物理学の概念 (春学期)、基礎物理学 I (秋学期)、基礎物理学 II (冬学期)
どれも、高校で物理を履修しなかったひとも履修できるようになっています。基礎物理学 I は、力学、II は、電磁気学。I を飛ばして、II を履修しても構いません。
- 基礎物理学実験 I (冬学期)、基礎物理学実験 II (春学期)
物理学実験です。
化学
- 化学入門 (秋学期)、化学概論 (冬学期)
化学入門は、高校で化学を勉強したことを仮定していません。化学概論は、高校で化学を勉強した人または、化学入門を履修した人用です。
- 基礎化学実験 (春学期)
化学実験です。高校で化学を勉強したことを仮定していません。
生物学
- 生物学入門 (春学期)、基礎生物学 (冬学期)
生物学入門 (春学期) は、高校で生物を勉強して来なかった学生向け、基礎生物学 (冬学期) は、高校で生物を勉強して来た学生向けです。
- 基礎生物学実習 (春学期)
生物学実習です。高校で生物を勉強したことを仮定していません。
情報科学
- コンピュータ基礎 (春学期)、情報倫理 (春学期)
- プログラミング基礎 (秋学期)、情報科学実験 (冬学期)
コンピュータ実習です。
これ以外に、 地球科学概論 (春学期)、地質学概論 (秋学期)、天文学(春学期)、生態学 (秋学期) も高校で何を学んで来たかに関係せず受講できる科目です。ぜひ、チャレンジして下さい。数学以外の一般教育科目もおすすめです。もう卒業要件は満たしたなどと言わないでぜひ履修して下さい。
また、少し、数学や自然科学を楽しむチャンスがあると良いですね。