Last Update : December 8, 2000
NS I 数学の構造
この授業について :
受講者の皆さんへのひとこと
この授業は、数学についてのことを扱うものではなく、数学自体を、数学における考え方を体験してもらうことが目的です。その意味でも、皆さんが自分の頭で理解しようとし、考えて下さらないと始まりません。その意味で、「頭の体操」という要素も持っています。ただ、それが最終目標ではないつもりですが、それは、受講されてからのお楽しみです。是非、通信欄メッセージなども読んで下さい。クラスの雰囲気がわかると思います。以下に授業中、何度も言っているいくつかの「細かいこと」について書きます。
- 教科書は指定しません。しかし、この授業で使う問題の約半分は下の本からとったものですので、これを参考書としてあげておきます。
ロバース他著・秋山、フランクル共訳
「入門組合せ論」共立出版
- 定義は黒板に書きますが、証明を詳細には書きません。自分の言葉で理解して、それを書いて欲しいからです。私が書いたものをそのまま覚えてもらいたくないからでもあります。
- 理解したつもりでも、間違っていることは良くあります。私も解けたと思っても間違っていることを発見することが日常的です。数学を専攻する学生は、自分の論理に綻びがないか、飛ばしていることがないか、この論理の訓練が大学での基本的な訓練事項です。その、ほんの一部分を皆さんにもここで経験してもらいたいと思っています。この問題を解決するため次の二つの項目があります。
- 小テストをします。証明問題が殆んどです。クラスでやった問題、または、それと殆んど同じ問題なので、面白くないと感じる人もいると思いますが、それを毎回、小テストの後もう一度説明し、採点して返します。あっていると思って書いた人でも点がとれていなかったり、書こうとして、自分が良くわかっていないことに気づいたりということがあると思います。
- 友達同士で説明をしあったり、家族の人に話したり、家庭教師先で話したりはよい訓練となります。自分が良く理解できているかチェックできます。
- 上のように、誰にでも理解でき、誰から聞かれても説明できる言葉で論証すること、これは、数学の基本の一つです。そのために言葉を厳密にしていくわけですが、そのステップをあまり踏まなくて良い題材として、ここでは、「組合せ論」を選んでいるわけです。他の題材でも可能だと思いますが、私が一番やりやすいものを選んでいます。
- 殆んど理解しているがあと一歩というひとがたくさんいます。この辺から、わかるわからないがわかれていくのでしょう。みんなが、苦労せずにわかってしまっては私も商売あがったりですから、これは、これで良いのですが、その一歩を越える努力をすると、世界が広がると私は思っています。その世界を経験していただければと思います。
- 世の中には、「数学が得意な人」「数学が不得意な人」もちろんいます。ある人が、遺伝子が違うと言っていました。生まれつき違うものです。「数学ができる奴もいるし、できない奴もいる」このことは事実です。それは受け入れてしまって良いと思います。でも、運動能力が抜群の人でなくてもスポーツを楽しめます。いろいろな楽しみ方があるからです。かつ、それぞれの楽しみ方でも、スポーツはそれぞれの人にとって有益です。数学もそう言ったところがあります。
- 基本的には、楽しんでいただければ一番だと思っています。授業ですから、成績は出ますが、大切なのは、皆さんのノウミソが刺激されかつ、それが快感のうちに一学期過ぎていくことです。楽しんで下さい。
- 私の授業に出ることのできない、ICU以外の方々も、このページで様々な面で楽しんでいただければと思っています。
1998年度授業の反省点
- 数学の問題をなるべく日常語で説明しようということ自体は良いと思うが、どうしても言葉の問題が現れ、存在命題などにおいて、表現に細心の注意が必要。誤解を招くことが何度もあった。私自身が「数学語」に慣れ過ぎてしまっていることからおこる問題も多かった。
- 言葉の説明はもう少し丁寧にすべきところが多かった。不必要な不安を引き起こす必要はない。
- 大教室で字がつい小さくなってしまう癖が直せなかった。
- 「球詰め問題」の準備不足がたたり、伝えたいことが十分伝えられなかった。
- もう少し、自分の専門についても話しができれば良いと思った。簡単な言葉で説明できないと言うことは、まだ、自分でも良くわかっていないことなのかも知れない。
- 私からのメッセージが批判的なものにかたよりすぎ、学生のメッセージを受け入れるものが少なかった。
- 期末試験の証明問題に工夫が足りなかった。
- 私自身大学での数学教育についていろいろと考えることができた。ここでは、ほんの一面のみチャレンジすることができたが、もっと、様々な形で挑戦していきたい。
- もう一回、組合せ論中心の授業をしてから、次は代数をテーマにしたものに挑戦してみたい。
- 実際に社会科学系などの分野でも応用されるという意味で、単に論理の訓練ではない、「微分積分」「線形代数学」などを理学系以外の学生を対象に授業することにも将来チャレンジしてみたい。
- コース補助員の助けで学生からのメッセージの入力もかなり助けられ、このホームページができたことは大きな収穫。(コース補助員・コース補助員制度に感謝。)
2000年度授業の反省点
- 「この授業を楽しんでくださった方へ」にも少しメッセージを書きました。
- このあとにある、受講生からのコメント はちょっと恥ずかしいぐらい褒めてあるものが多く、楽しんで下さった方がおられたようでうれしいですね。たとえ、期末試験の時に書いてもらったコメントということで、お世辞が入っているとしても、人間は、褒められて嫌な人はいません。わたしも上手に褒めることができるとよいなと思います。人から、「それは、ホメゴロシですね」とか、「先生のは、褒めているのか、イヤミなのか良くわからない」と言われますから、私は、褒めるのが下手だと言うことですね。修行ではおそらく克服できないのではないでしょうか。自分の内面にあるものが出てしまうのでしょう。死ななきゃなおらないかな。
- 今回は、英語を少し使いました。私のへたっぴーな英語では、単なる雑音で迷惑だった方も多いかと思います。しかし、私は、今、「多言語コミュニケーション」の大切さ、多様な理解のしかたの重要性をよく考えます。多様な人達のいる中で、マイノリティーか、マジョリティーかでどの言語を使うのではなく、それぞれが他の人の理解の仕方をシェアすること、たとえ時間がかかり、面倒なことであっても、それぞれに取って、すばらしいときなのではないでしょうか。人間理解も、その問題自体の理解も深まるのではないかと思います。どうでしょうか。皆さんは、それができる訓練を十分受けている、すばらしい資質を持っていると思います。多様性そのものが、生物の貴重な財産です。
- ある大学院生に「先生達は、一般教育で何を教えるべきか考えていないのではないでしょうか。そう思える授業があまりにも多すぎる。」と言われてしまいました。私も、正直言って、何を数学で教えれば良いか分かりません。でも、今回の授業を通して、このことを皆さんの協力のもとで少し考えることができたことが、私にとっても貴重な経験でした。また、他のトピックに挑戦したいと思います。
受講生からのコメント
今後の受講生、および、私へのアドヴァイスとして有益と思われるもののみ掲載致します。受講生(過去(1996年以前)の受講生でも構いませんが、その時は、何年に受講したかも明記して下さい。)の皆さんからのコメントをお待ちしています。
掲載希望と書いてメールを鈴木宛(hsuzuki@icu.ac.jp)に送って下さい。何らかのご迷惑がかかるといけませんので、個人名は省いてあります。
2000年度受講生
-
鈴木先生へ
1学期間ありがとうございました。
期末テストが時間ギリギリでメッセージ欄に手をつけられなかったのでe-mailを書かせ
てもらいました。私は先生のように楽しそうに数学の話をする人の授業を初めて受け
ました。ここでいう数学は、公式の受験テクニック的運用の仕方とか問題傾向分析の
ことは含みません。先生が、「京都駅に並んでいるロッカーを見ると、”お、これは
問題に使えるぞ”とか思っちゃうんだよね。」と言われたとき「あぁ、そんなふうに
思って京都駅のロッカーを眺めている人がいたのか...。」と新鮮な驚きを覚えると
同時に教育社会学のある教授が、「物理学者とか数学学者とは結婚しないほうがい
い。なぜなら彼等は思いついた公式を床でも壁でもそこら辺にあるものに書き始めち
ゃうからね。」と言っていたのを思い出しました。
「この授業を楽しんで下さった方へ」の中で「数学とともに、自然を学ぶことは、
人間にとって、基本的だと思います。」と言っていらっしゃいますが、私もそう思
いますし、自然科学的分野のみならず人間生活の諸活動に関係するありとあらゆる
事象に少しでもいいから親しむことができたら理想的であろうと私は考えています。
最近ジョン・デューイの「学校と社会」を読んだのですが、デューイも社会との関
連性を失わず専門に閉じこもらない学問の在り方を主張しています。こういった思
想は堀尾輝久氏にも代表されるように日本でももう長いこと唱えられてきたことか
のように思っていました。そしてその方向に進むと。
しかし世の中のニーズはそれとは違ったものだったようです。大学改編の流れの
中で一般教養課程の廃止が叫ばれ、それが現実化されつつあります。
ただ私は教養主義教育と専門主義教育が対立する二つの潮流だとは捉えていませ
ん。一方が他方より優れているという性格性のものでもないと思っています。以
前ICUで”ICUは生き残れるのか?”(名称は確かではありません)と銘打ったシ
ンポジウムがあり、そこでは専門主義教育を主張する側と教養主義教育を主張する
側によるディベートが行われていました。どちらの教育を受けた人間のほうが好ま
しいかということに議論は集中していました。これは私にはとてもナンセンスな
ことに思われます。何故ならどちらを選択するかということは全く個々人の好みの
問題であり、また教養主義教育は必ずしもそこが終着点ではないからです。
私自身は教養主義教育を選択しました。これには大学教育に携わるものとしてICU
の教育を高く評価している父からの影響も多大にあります。私はまだ専門教育を受
けるにたる器ではないと考えていますし、専門主義教育の全段階として教養主義教
育を受けることに価値がある思っています。それにもしICUに来ていなければ数学
に対する視点に変化は訪れなかったでしょう。
素晴しい授業をありがとうございました。
- 自分の脳みその固さを痛感しました。
- もう一問解こうかなーと思いましたが、精神力が尽きたのでやめました。
「この授業を楽しんで〜」読みました。
論理的思考力はたしかに重要だと思い
ます。計算だけじゃない、今回の授業のような数学は、思考力を高めるのに大
いに役立つでしょう。「あーだからこーなって・・・」と考えていくのはなか
なか楽しいものでした。学科にとらわれず、自由に授業をとれるICUって実は
凄いのね、と再実感。4年じゃなければ、先生のすすめて下さった授業もとって
みたのですが・・・。やはりジェネードは1、2年で取るべきでしたね。残
念です。説明を聞いてもいまいちわからない所もぽつぽつありましたが、とて
も楽しい授業でした。卒論前に頭をリフレッシュした気分です。一学期間あり
がとうございました。
- 卒業して。ICUで一番思い出に残った授業は何かと聞かれたら、迷わずこ
の「数学の構造」を挙げます。一学期間あっという間でした。merci!
- とても楽しい授業でした。とくに先生が必ずメッセージにコメントを下さ
る事には感動しました。私にとって。ICUで最後の授業となりました。ありが
とうございました。
- 中学までは数学は好きでした。その時の面白さが久しぶりに味わえました。
高校からの数学はどうしてあんなに辛く、つまらないのでしょうか。なんだか
イメージがわからなくなってくるというか・・・。もう4年なので無理ですけ
ど、もう少し理系の勉強(いえ学問ですね)をしてみたくなりました。
- 数学は苦手なんですが、一学期間頑張りました。分からない人にも簡単に
説明して下さって良かったです。一つ改善してほしい点を強いていえば、説明
が英語だけの時があり、分かりずらかったことです。(私みたいに数学苦手な
ものにとって、それを英語で説明されると、とても分かりにくくなります)一
学期間ありがとうございました。
- 久しぶりに数学というものに触れました。途中かなり苦しみましたが、わ
かるようになると楽しかったです。後、HPが、とても充実していて便利だっ
たのに感動しました。Hでは考えられないことです。
- もう少し時間ほしかった。数 I Aしかやったことのなかった私ですが、と
ても楽しめました。
- お忙しい中、追試の時間を作っていただいて有難うございました。もとも
と数学が大の苦手で、授業についていくことがなかなか出来なかったりしまし
たが、論理的に考えて解く証明問題のおもしろさに、少し興味をもつことが出
来るようになりました。
- なかなか面白かった授業でした。
- ひじょうに楽しかったです。しばらく数学的なものの考え方からはなれて
いたので、数学の楽しさを改めて感じることができました。
- 数学は苦手ですが、たのしく学べました。先生のresponseが、いつも丁寧
ですばらしいと思いました。
- グラフはどうも苦手でしたが、色々な原理などは自分でも深く考えていく
ことができ、パズルを楽しめました。ありがとうございます。
- 難しかったです。でも楽しい授業でした。
- 一学期間どうもありがとうございました。楽しかったです。
- 思ったより難しかったけれど、質問にいってわかったりすると、とてもお
もしろく感じた。
- 数学苦手だからつらかったけどがんばりました。大学の数学はパズルみた
いで、高校のみたいに暗記する前に考えることがたくさんあってたのしかった
です。
- 数学楽しくできました。グラフといえば放物線しか頭になかったので、と
ても勉強になりました。HPをよんで、来年のNSのファンデで、微積をとって
みたいと思ったのですが、先生が教えて下さるのでしょうか?
- 公式と証明のテクニックとは程遠い数学の原点を見ました。
- こんなに数学をがんばったのはひさしぶり(はじめてかも)です。でもあ
まり伸びなかった気がする。やっぱり文系の頭なのかしら?と思いました。で
も楽しかったです。数学が面白いって思えるようになりました。一学期間あり
がとうございまいした。
- 数学嫌いだった私ですが、この授業をうけていろいろな見方ができ、数学
が少しおもしろいと思うことができました。ありがとうございました。
- とてもおもしろい授業でした。毎週のQuizもちょっと大変かなぁという
かんじはありましたが、自分の理解を示す客観的な数字であり、大変良かった
と思います。ICUのGen. ed.でこういう本質的なことをやさしい切り口で学ぶ
ことができて、とても良かったと思います。
- 今まで知らなかったことが色々学べて、毎回とても楽しかったです。数学
ってやっぱり面白い!!一学期間お世話になりました。ありがとうございま
す。
- 当初おっしゃっていた数 I, A, B の範囲を遥かに逸脱した問題もあったと
思います。頭の体操には最適でした。
- 数学最高です。数学を楽しめるのは高校までと思ってましたが、大学でも
楽しめて、本当によかったです。ありがとうございました。
- Special Office Hour の時間に親切に教えて頂いて、授業でわからなかった
ところを克服することができました。物事を別の視点から考えることができた
という点でとても楽しい授業でした。
- すっごい楽しかったです。ありがとうございました。
- 正直なところ私にとっては難解な内容でした。なんとかついていこうと頑
張ってみましたが、なかなか思う様にいかず・・・。それでもネットワークの
話など、こういうものの見方もあったのかと、新鮮な驚きもありました。
- ありがとうございました。オスマーで丁寧に教えて頂き、感謝しています。
- 授業自体はとても面白かった。ただ、どの理論も基本は面白くてわかりや
すかったが、応用や計算の方にいくとわかりずらかった(私だけかもしれない
ですが)。
- 復習の時はわかっているつもりでいたのに、わからなかったところがあり
ました。また復習してきます。いろいろ勉強になりました。ありがとうござい
ます。あとは今日のテストみたいにわかっているつもりでわからないところの
補強ですね。先生といつかお話ができたらなーと思います。
- 自分でわかっているつもりでproofしてもちがうことが沢山あってsuffer
しまくりました。