Last Update: November 9, 2003

「彩」(sai)

2003年度 ICU 祭 テーマに寄せて


ICU はユニーク(個性豊か)な大学でしょうか。世界中の大学の中で…。私はそう思っています。では、何がそんなにユニークなのでしょうか。それは、ICU で学び、そして卒業し、世界中で生きている一人一人がそれぞれの場に特別の彩りを添えて輝いているということだと思います。

私は ICU Alumni Open Lecture そしてその小冊子が大好きです。そこで話しておられる卒業生たちが異なる個性を持ちつつ、何か彩りといえるような生き生きとした輝きを放っているのはなぜでしょうか。

ある卒業生が、ICU は anonymous(没個性)ではいられないところだと言っていましたが、これは、ICU をとてもよく表していると思います。人の影に隠れて、自分を表現せずに、一日を送ること、そして卒業していくことはできない。常に「あなたは?きみは?」と問われ、それに応答することを求められる。彩りは単にいろいろな色をそろえただけではありませんね。ICU は一人一人が様々な波長の違う光を発信し、それが全体として彩りとなっているコミュニティーです。このことを共に祝うのが、ICU 祭なのだと思います。

みんなが同じ応答をすることは無いのでしょうか。不思議ですが、最初は似た応答があっても、だんだん一人一人少しずつ違いがあることに気づかされるのでは無いでしょうか。不思議と一人一人がとても違う。ここに気づかされ、それが当然のこと、すばらしいことと思えるかどうかが、ICU にいて幸せでいられるかどうか、ICU から世界に出て行って幸せでいられるかどうかの、鍵ではないでしょうか。

一人一人がかけがえの無い個性を持った人間ということは、自分が個性を持っていると言うだけでなく、私たちの周りの一人一人も、もちろん世界中に生きている一人一人がかけがえのない個性を持って造られ、生きている存在だと言うことですね。その一人一人の彩りを大切にすることを実感できる ICU 祭であることを願っています。

私は、色盲なので、実際の彩りのすばらしさを感じることは難しいのですが、それゆえに、そのものが放つ他の彩りに特別の注意を払っています。私の感じる彩りと、みなさんが感じるそれとも違うのかもしれません。そんな一人一人がそれぞれに輝いて見えるものを分かち合うことができるのはとてもうれしいことですね。

ICU は20世紀前半の二つの世界大戦の反省にたって建てられた大学です。残念ながら "As neighbors we are one world. As brothers we are not."(開学の年1953年の教養学部要覧より)と告白せざるを得ない。彩りをもった一人一人が、We are one world as brothers and sisters. といえるにはどうしたらよいのでしょうか。彩りは単に様々な色が混ざっているだけでは美しくは無いはずですね。調和と輝きを加えるのは何でしょうか。

先日、ある英語の訳で聖書を読んでいましたら、次のような箇所がありました。「えっ」と思って、読み返しました。

Have the salt of friendship among yourselves, and live in peace with one another. (Mark 9:50, TEV)
「塩で味付けられた友情で、互いに平和に暮らす」とはどういうことでしょうか。その問いに一人一人が応答し、色とりどりの皆さんが、塩で味付けられた友情で平和を育む、その希望を確認することのできる、ICU 祭であることを願っています。


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