Last Updated : December 29, 2000

バラバ試写会の感想と報告

大野 克美 (Katsumi Ohno)


12月25日クリスマスの日、新宿厚生年金会館ホールで試写会が行われました。

日本で は映画にお金をかけて、よい作品を作ろうとする意欲が、アメリカ、ヨーロッパに比べて 少ないようです。メンバーの中島さん、鈴木さんは2年間このために祈ってきたそうです。 2000名が入るホールでしたが80%位入っていた感じでした。鈴木牧師が玄関で待っ ていて迎えて下さいました。
鈴木さん達のバラバは最近いろんなメディアでも登場するた め、マスコミの人達もずいぶん来ていたみたいです。ニューズウィーク紙でも、2000 年、11月6日号で元ヤクザ幹部の中島さんへのインタビューも、多くのメディア関係の 人達が興味をもった理由でしょう。この記事は英語、日本語、韓国語版で紹介されました。 そのほか鈴木さん達のドキュメントを韓国のKBSテレビ(日本のNHKテレビ)で12 月4日—8日までゴールデンタイムの国民的人気番組「人間劇場」に放映されたことも大 きな影響だと思います。韓国史上最大の視聴率だったそうです。この番組は大統領他、か なりの政治家、経済人、教育家、大衆一般が見る番組だそうです。反響が大きく100万 本の問い合わせがテレビ局にあり、電話回線がパンクしたそうです。この報告がこの映画 を成功させる会の韓国側代表、2002年日韓共催ワールドカップ元組織委員長の朴正直 (パク、セジュン)氏よりありました。日韓の和解の口火を切った映画となるでしょう。
制作費用は4億円、このお金は何とかそろったようですが、さらに5月の連休に向けての 映画公開のため、さらに宣伝費2—3億円を必要としているとの発表があり、協力お願い のアピールが民主党の副幹事長であり、牧師の土肥隆一氏よりありました。
会場には日本 と韓国の役者さんもかけつけました。撮影の体験談などを語ってくれました。多くの役者 が「今まで何回となく役をこなしてきたが、これほどまでに一般の人達に祈られて完成し た映画はなっかた。どんな評価が出るかとても緊張している。」と語りました。映画の役 者としての経験は少ないが、元歌手のピンクレディ、増田恵子さんの体験談は面白かった。 「今まで他の人達がおっしゃた事ですが、皆様のお祈りのおかげで本当に撮影中、何の事 故も無く無事に撮影が終えたことは感謝です。しかし私個人についていえば大変な事もあ りました。というのは今回、私の役はヤクザの愛人というため、奥田英二さんには大変い じめられました。殴られる、蹴られる、髪をもって引きずられる。それを奥田さんは本気 でやるのですから。(場内笑い)私は両親がやさしい人のため、殴られたり、蹴られたり の経験は本当に一度もなかったのです。本当に驚きました。でも楽しく、本当に役に立ち ました。どうもありがとうございました。」増田さんは今年の大晦日紅白歌合戦に出演す るそうです。

映画の内容は、監督:斎藤耕一 脚本:松山善三
キャスト:渡瀬恒彦 奥田英二、ガッツ石松、渡辺哲、中村賀津雄、夏木陽子 増田恵子 (元ピンクレディ)
韓国側キャスト:ナ・ヨンヒ、 ユウ・ユソン、チョン・ユンスク、
映画の内容はバラバのメンバー、鈴木さん、中島さん、吉田さんなどの人生を映画化した ものです。

ここから後は大野個人の感想です。

  1. 人は誰でもやり直しが出来る。 鈴木さん、中島さん、吉田さんなどは、元ヤクザ幹部の経歴から、かなり他の人達と 違った特別の体験を持っているわけです。バラバの人達は悪いことをした分だけ、悔 い改めも大きいと思います。このような原体験を持っている人は、人に喜ばれる大き な仕事が出来ると思います。今日の日本では,物は豊になったが、精神的にはかなり 絶望したり、自暴自棄に陥っている人も多くいます。土肥隆一牧師議員もいっていま したが、今の日本を見ると、毎日悲観的なニュースが流れています。「もしかすると この会場にも、明日倒産するとか、家庭内暴力で悩んでいるとか、何かの問題で本当 に落ち込んでいる人がいるかも知れない。でもこのバラバの人達の人生を見て下さい。 人はどんなにどん底に落ちても、必ずやり直しが出来る」この映画は多くの人に希望 と、励ましを与えることが出来ると思います。映画のシーンで初めは完全なヤクザ映 画ですね。脚本家の松山善三氏はヤクザ社会のことを余り知らない部分も在るので、 中島さんあたりからヤクザ社会のコーチがあったのでしょう。指を詰めるシーンなど はちょっとギョットしますね。

  2. 韓国女性の奥様達が持つ、愛と許しのテーマが良く出ていた。 これが普通の家庭であったら、とっくに離婚でしょう。人はそんなに我慢ずよくない からです。少し聖書的になっていましたが、愛の本質は忍耐であり、相手の全てを受 け入れ、相手のすべてを期待する。韓国女性、奥様方の信仰の深さが良く出ていまし た。この映画はほとんどが日本語ですが、韓国側の女性キャストの日本語なかなかう まかったですね。韓国人同士が話しているときは、日本語の字幕が出るようになって います。日本人同士が話している時は、韓国の人達がわかるように、韓国語で字幕が 出るようになっているそうです。今の日本で、この映画の韓国人奥様のような人が果 たしているでしょうかね。日本の奥様もこの映画をみると、だんなにもう少しやさし く、寛容になるのでは。でもこれは男の身勝手な考えかも。その前に「あなたが私に もう少しやさしくてもいいんじゃないの」と奥様にいわれるかも。

  3. この映画は日韓のよき和解の映画になる。 この映画を韓国人が見ると、鈴木さん、中島さん、吉田さんのヤクザ人生は日本人と ダブって見えるのではないでしょうか。マフィア、ヤクザ日本人としてです。韓国の 人達は文化的にも、歴史的にも自分達の方が日本人より上であるとの思いが心の奥底 にはあるかも知れません。日本は韓国の弟であるはずなのが、だんだん高慢になり、 成り金になり、最近では37年間も韓国を植民地として支配した。とても許せる話で はない。忍耐をもってずっと我慢をし続けた。韓国人にとっては暴力に耐え忍ぶ鈴木 さん、中島さん、吉田さんの韓国人妻の姿と自分達韓国人の姿が同じ心境に思えたの ではないでしょうか。日本の政治家指導者は「本当に悪いことをしました。どうか許 してくださいと。」素直に言えない。でもこの事を韓国人に対して素直にストレート に表現したのは、何と政治家指導者ではなく、日本で最も忌み嫌われているヤクザの 人からであった。でも彼等の中には、心からの正直さと、悔い改めがあった。そこに 韓国の人達の心の深みに響く何かがあったはずです。韓国の政治的指導者のなかには、 クリスチャンが多いことで知られています。300名の議員のうち何と200名がク リスチャンだと言われています。感情的には難しい問題があっても、愛と許しの原則 を韓国の指導者は知っています。この辺の理解を深めていくことが、日本と韓国の友 好を深めていくのにとても大事なことです。この映画は国家の問題でも個人の問題で も和解とはどんな事を意味するのか。その問題提起を投げかけています。民間レベル でこれほど多くの人達がこの映画を見るのは日韓で始めてのこととなるでしょう。こ の中から良き友好関係が生れるようにと期待しております。


TOP HOME(J)