一般教育 NS-III 「自然の化学的基礎」水と人間
目標:
自然との関わりの中に生きる人間のあり方を化学を通して考える。 具体的には,まず第一に,水という誰でも知っている物質を取り上げ,ごく身近にありながら他の物質には見られない水の不思議な自然科学的特性に目を向けさせ,自然科学の方法論とおもしろさを示すこと。第二は,水があらゆる生命にとって必要不可欠な物質であり,地球の自然環境と深く関わっている事を示すと同時に,自然環境が人間活動の影響によって深刻な汚染を受けている問題を考えることが目標である。そして,全体を通して,人間と自然(科学)との関係について総合的に考えることを目標としている。
講義内容:
第1章:序・自然とは何か,化学とは何か。
第2章:水の科学史。「水の本性は何か」という問いに向かい合って来た人間の歴史をエピソードとデモ実験を交えて話す。
第3章:水の自然科学。まず,水を例にして物質の三態,温度の下限上限,熱の本質について考える。次ぎに,水の性質(密度,比熱,沸点,氷点,溶解度,表面張力など)が一般の物質と比べて異常であることを「仮説実験授業」を通して学び,身近な現象や生活との関連について考える。
第4章:自然環境における水。動植物の生命活動が水といかに深く関わっているかを学び,さらに,地球上の水の大循環と自然環境との関係,人間の水資源の利用とその結果起きている環境(水質)汚染の問題を考える。
第5章:水の起源。地球(水惑星)を特徴づけている水(海)の起源をたずねることは,宇宙(元素)の起源,地球の起源,生命発生の謎をたずねることであるという立場から,講義全体のまとめをする。
方 法:
基本(クラスのスタイル):講義、デモ実験、プリント、パソコンと液晶プロジェクター(データ,画像,写真)、VTR
展開法:
- 仮説実験授業
- 質問(クラス内で)
- レポート課題:
例.地球カレンダー、新聞などのメデイアからの情報収集- VTR(ライアル・ワトソン「水の惑星」に対するコメント)
- 最終試験
- 学生からのクラスに対する感想
- 教師からのコメント
参考文献:
- 吉野輝雄, 「水を通して人間を考える一般教育」, 一般教育学会誌, 10, 71-74(1988).
- 吉野輝雄, 「一般教育(化学)科目への『仮説実験授業』方式の導入」, 一般教育学会誌, 13, 94-102(1991).
- 吉野輝雄, 「「水と人間」に関する情報収集を課題とする一般教育授業」, 大学教育学会誌, 19, 138-142(1997).
(文責:鈴木寛(講演者のノートに基づく))