Last Update: December 8, 2006
Linear Algebra II (線型代数学 II)
この授業について :
目的(教養学部要覧から)
数学及び自然科学を学ぶために必要な線形代数学の基本疑念を学ぶ。
ベクトル空間、次元、線形写像、線形写像の行列表示、計量空間など。
Basic course on linear algebra basic to further study in mathematics and natural sciences. Includes the concepts of vector spaces, dimension, linear transformations and their matrix representations, and vector spaces with a metric. (Bulletin of the College of Liberal Arts)
内容
線型代数学Iでは、連立一次方程式の解法、行列 および、行列式について学びました。線型代数学IIは、「『線型性』から得られるもの」がテーマです。自然界や、社会科学などの現象が、「線型性」という抽象的な性質をもつことが分かると、ベクトルや行列を用いて様々な性質を導き出すことができるという、数学の醍醐味が味わえる理論を学びます。内容は以下の通りです。
- n次元ユークリッド空間(Euclidean n-Spaces)
- ユークリッド空間における線型写像(一次写像)(Linear Transformations on Euclidean n-Spaces)
- ベクトル空間とその部分空間(Vector Spaces and Subspaces)
- 線型独立性と基底(Linear Independence and Bases)
- 部分空間の次元(Dimension of Subspaces)
- 内積空間( Inner Product Spaces)
- 正規直交基底(Orthonormal Bases)
- 線型変換(一次変換)(General Linear Transformations)
- 線型変換の行列表示(Matrices of Linear Transformations)
公理化・抽象化により築かれる理論の汎用性(すなわち、広い分野への適用力)が非常に高まります。しかし困難もあります。一つめとして、厳密な定義と、ある対象物が、その定義の条件を満たしているかの検証。そして、その条件のもとでの定理の証明です。線型代数学Iは殆どが基本的な理解ができれば、あとは、計算でしたが、線型代数学IIでは、それに理論的な部分、そして証明が加わります。抽象的な理論の美しさに酔いしれて、具体的な対象物に則して理解しないと、何を考えているのか分からなくなります。講義でも、何を考えているのか、なぜそのような事を考えるのかを中心に解説します。しかし、それで分かったような気になっても、講義だけでは決して理解は得られません。教科書を読み多くの例と接し、その問題をたくさん解き、演習で不明な点を解決しながら進んでいって下さい。
教科書 (Textbook)
Elementary Linear Algebra: Applications Version, 9th Edition, by Haward Anton and Chris Rorres
(Lnear Algebra Iで使用した英語の教科書です。)
参考文献 (Reference Books)
入門的な線形代数学のテキストが図書館に 200 冊ほどあります.「線形代数」「線型代数」「Linear Algebra」で検索して下さい。しかしまずは教科書。
クラスの運営と学習支援
このコースは講義は鈴木が担当し、演習は主として非常勤助手の先生が担当します。Course Helper(大学院生、および Support Volunteer)もつき、個々の質問に答えます。コース全体の責任は鈴木が持ちます。コース運営に問題や疑問・要望があれば、早めに鈴木に言って下さい。
サポートとして、コメントシート、ホームページや、ITツール、オフィスアワーなどを活用する予定です。数学は深く理解するまでの筋道は人によって異なりますし、時間のかかり方も異なります。より多くの受講生がしっかりと理解できるよう学習支援は、講義と演習、さらにクラス外でできる限りのことをしたいと思います。すべての講義とすべての演習に時間通りに身も心も頭も出席することは受講生の責任。講義や演習の時間を充実したものとすることは、担当教員の責任です。病気などでやむを得ず講義・演習を欠席してしまった場合には、IT サポート・ツールを利用したり、直接質問に来るなどして早めに欠席した部分を補って下さい。
2006年度授業の反省点
- 毎年、反省点をまとめて書いています。すぐ忘れてしまうので。次に同じ授業を教えるときの参考とするためです。公開しているのは、教える側がどのように考えているかを知ることも相互理解のために無駄ではないと思うからです。
- 概要:この大学に移ってきてからすでにかなりの年月になる。線形代数学 II は教えてみたいコースであったが、今まで機会が無く、初めてのチャンスをいただいた。しかしやはり一年目は大変。時間配分、つまりコースの組み立てと、学生が理解に困難を覚えるところが漠然としかわからない状態での計画であった。さらに演習担当の先生と十分なコミュニケーションが取りづらい状態であったことはさらに問題を困難にした。しかし、コースヘルパーだけでなく、四年生も積極的にサポートをしてくれ、時間としては学生もかなりの時間勉強にさいていたようだ。
- 実数上の列ベクトル空間およびその内積、線形写像をまず2回かけ、概観してから、一般のベクトル空間、内積空間、線形写像と進める教科書の順序をそのまま使ったが、一番核となる、一般ベクトル空間での基底の部分と、線形写像およびその行列表示に十分な時間をかけることができなかった。最初に、列ベクトル空間で概観しておくことは、その一般化であることを意識してもらえる点、さらに、例として使いやすいメリットがあるが、同じ事を二度するための時間的ロスもある。どちらのやり方が良いかは一階には言えないだろう。今後の検討課題である。
- 係数体が実数でない例として、途中で、二元体を用いた符号の話をする予定であったが、すべて消化不良になることをおそれ、その時間を取らなかった。複素数体上のベクトル空間も、内積の導入の時にコメントすることを考えたが、それも取りやめた。つまり実数体のみに限った。教科書の扱いからもそれが自然で、実数以外については、スカラーというときのお話し程度で良いのかも知れない。線形代数学III のようなところで代数閉体が必要なときに説明し、内積にも触れるのが良いかも知れない。少なくとも現在の時間では、他の体を導入するのは、難しいだろう。
- 課題で、応用について学ぶレポートを課した。冬休みの宿題とし、期間を長くとったのも、このような応用を自ら学ぶチャンスを与えたのも総じて良かったように思う。今まであまりやらなかった形式の課題であるが教育的な意味は十分あると思う。しかし、同時に評価が難しい。他の小テストや期末試験の評価を厳格にしているときに、レポートによる評価には正直困った。形式以外はあまり差が出ず、かつ、あまり時間をかけていないと思われるものと力作との間の差もあまり付けられなかったのは評価の難しさを表している。最初は、学生に許可を取って公開も考えていたが、実際に手にするとその難しさを感じ取りやめた。殆どが、教科書の中からのもので(実際それを課題にしたので)公開には著作権法上の問題もからみ、また、学習の効果として公開するにも値しないものでもあった。学習成果の公開は大切だと思うが、同時に難しさも複雑であることを学んだ。相互の学びの為ということも考えて、NetCommons での公開としたが、スキャンして Up したのが遅かったこともあり、おそらく殆どその効果も得られなかったであろう。
- Quiz は総じて評価が高かった。どのコースでも私が教えるときには行っているこのスタイルは有効だとおもう。授業を真剣に聞くことも、促されるし、学んだことをすぐ消化する効果もある。ただ難しいのは、一緒に学ぶということから、十分理解できていないのに、高得点を取ってしまう学生が無視できない割合生じてしまうこと、さらに、自分だけで考える学生が不公平感を持ってしまうこと。これは、どのようにしても起こりうることで、単純ではない。NetCommons でのコメントシートの応答に何回か説明したが、学生に意図をしっかり伝え、理解を得ること以外は難しいかも知れない。またすべて英語による解答のみとしたが、やはりもう少し、解説も入れた方が良かったかも知れない。準備の時間にも限界があるが。
- コメントシートのコメントをすべて打ち込み、応答を丁寧に書いた。これは、学生の側の心を理解する上では非常に有効であるが、学生にどれだけ、プラスとなったかは不明。実際、あまり読まれていない状態が続いた。NetCommons の利用に個人差が大きかったことも原因していると思われる。しかし、勉強時間自体に個人差が多いのであるから、これ以上は無理かも知れない。
- 期末試験は、本当にできていない学生が多かった。証明については、初期の段階から、もっとしぼって、幾つかのもののみ丁寧にすることが必要だった。これは、経験不足としか言いようがない。最後の Reveir の段階で始めて、核となる証明をリストしたのだから。これは、次回教えるチャンスがあれば、かなり改善されると思う。非常に熱心に勉強している様子をしょっちゅうみていると、演習などでの学生自体の理解度チェックをせずにある程度理解できていると考えてしまう。人の頭の中は本当にわからない。コメントシートも授業の本のすこしの問題しか救えないとも感じた。これも今後の課題。