Last Update: Novemver 18, 2018
Linear Algebra I (Introduction to Linear Algebra from AY2008-AY2011)
線形代数学 I(2008年度から2011年度までは 線形代数入門)
この授業について :
受講者の皆さんへのひとこと
- この授業では、連立一次方程式の理論と、それと関連して、行列および行列式について学びます。2008年度から3単位となり、線形写像についての簡単な性質と、固有値、固有ベクトル、対角化についても少し扱うことになりました。2012年度から名称が線形代数学I と変更になりました。この科目は、線形代数学 II, 線形代数学 III と続きますが、そこまでが一連の線形代数学です。多くの理系の大学で線形代数学として扱う範囲となっています。数学は最低限と考えている人以外は、ぜひ、II, III も受講してください。
- このコースでは、厳密な理論の展開よりも、線形代数を使うことを目的としています。しかし、なぜそうなるのかという根拠を理解することはたいせつにしながら進んでいきます。その理解がおろそかになると、簡単な計算はできても、少し複雑になると、なにを計算すればよいかも、理解できず、思考停止に陥るからです。その意味では、理論の入り口を学ぶと表現した方が安全かもしれません。講義で理解できたつもりでも実際に問題に当たるとなかなか難しいものです。必ず自分で手を動かして、計算して下さい。その意味でも、演習が主で、講義は補助的と思ってください。最低でも一週間に三時間ぐらいは講義演習とは別に時間をとって頭と手を動かして下さい。特に、Core Problems としてあげてある問題は、殆どが奇数番の問題で、教科書に答えがあり計算結果を確認することもできますから、指名されたときにすぐ説明できるように演習までに必ず自分で解いておいてください。演習ではそれ以外の特に偶数番の問題も取り扱います。積極的に問題にチャレンジしていってください。線形代数学は少なくとも自然科学や経済学においては必要不可欠です。授業では、教科書の順序に従いますが、教科書に書いていないことを中心に話したいと思います。
- 応用はあまり授業で取り上げる時間はありませんが、教科書には、たくさんの応用と例が含まれています。練習問題の数と共に、応用と例の豊富さが英語の教科書を使う理由です。しかし、日本の教科書には含まれていない理由のひとつに、コンピュータの利用の問題があります。実際の応用を考えると、どうしても、手計算では難し面が出てくるからです。授業では、少し紹介するだけですが、宿題などの解答によせて、少しずつしょうまいしていきたいと思います。Linear Algebra Toolkit, R, Octave, SageMath です。下のものは、簡単な紹介ですが、見てくだされば幸いです。
教科書・参考書
- 教科書 :Linear Algebra and Its Applications, 5th Edition, by David C. Lay, paper back, Pearson, Global Edition(2015年度〜)
- 教科書 :Linear Algebra and Its Applications, 4th Edition, by David C. Lay, paper back, Pearson, New International Edition(2014年度)including Student Study Guide
- 教科書 :Linear Algebra and Its Applications, 4th Edition, by David C. Lay, paper back, Pearson, International Edition(2011年度から2013年度、教科書にしています。)
- 参考書 :Haward Anton & Chris Rorres, "Elementary Linear Algebra, Application Version", John Wiley & Sons, Inc., (10-th edition) (2010年度まで 9th Edition を教科書としていました。)
- 参考書:Haward Anton 「アントンのやさしい線型代数」現代数学社
"Elementary Linear Algebra" Wiley の第2版日本語訳。平易に書かれているが証明はほとんどない。(2002年度の教科書)
- その他の参考書:
「線型代数学」佐武一郎著 裳華房
「線型代数入門」斎藤正彦著 東大出版会
理論的な部分に興味のある学生、数学または物理を専攻予定の学生、それ以外の分野であっても大学院進学を考えている学生は、ぜひこれらの二冊を手元において、勉強して下さい。 ただ、少し難しいです。佐武一郎の「線型代数学」は最初の出版では「行列と行列式」となっていて、複雑な公式まできっちりと書かれていますので、線型代数でわからないことがあったときに参照するのに非常に便利です。一方、斎藤正彦の「線型代数入門」は代数の理論として非常にスッキリした書き方がされています。しかし最初からその美しさを理解するのは難しいでしょう。しかしこの本の姉妹本として「線型代数演習」もあります。
教科書巻末にある訳者あとがきの参考図書を参照。高度なものとしては、そこにある佐武一郎、斎藤正彦のものに是非挑戦して下さい。比較的やさしくかつ計算例が多いものとしては、
有馬哲・石村貞夫「よくわかる線型代数」東京図書 等があります。有馬哲、石村貞夫著 「よくわかる微分積分」 東京図書
教科書としては非常に豊富な計算例が出ています。その意味でとても親切な教科書ですが、問題が二つあります。
- できるだけこの欄を充実させていく予定です。図書館にあるこの授業に対応する参考書は日本語200冊、英語100冊程度入っているようです。少しずつ紹介していけたらと思っています。
- "Basic Linear Algebra", by T.S.Blyth and E.F.Robertson, Springer Undergraduate Mathematics Series, Springer Verlag (ISBN 3-540-76122-5)
- "A First Course in Linear Algebra with Applications", by Hal G. Moore and Adil Yaqub, Academic Press (ISBN 0-12-505760-1)
普通のアメリカの理系テキスト。分厚く問題も多い。奇数番の問題の解答がついている。
- "Introcuction to Linear Algebra", by Lee W.Johnson, R.Dean Riess, and Jimmy T. Arnold, Addison-Wesley (ISBN 0-201-82416-7)
普通のアメリカの理系テキスト。分厚く問題も多い。奇数番の問題の解答がついている。MATLAB も利用している。
- "Linear Algebra", by R.B.J.T.Allenby, Arnold (ISBN 0-340-61044-1)
歴史的な記述が面白い。
- "Linear Algebra", by Stephen H. Friedberg, Arnold J. Insel, and Lawrence E. Spence Illinois State University, Prentice Hall (ISBN 0-13-23859-9)
数学の学生向けのアメリカの教科書。通常のテキストより難しいが、証明も書かれている。
- "Linear Algebra", by Serge Lang, Undergraduate Text in Mathematics, Springer-Verlag (ISBN 0-387-96412-6, 3-540-96412-6)
数学の学生向けのアメリカの教科書。通常のテキストより難しいが、証明もしっかり書かれている。著者は数学者としても有名だが、教科書をかくことでも定評がある。
- "Solution Manual for Lang's Linear Algebra", by Rami Shakarchi, Springer (ISBN 0-387-94760-4)
上の本の解答集。詳しく書かれている。
2002年度授業の反省点
- 月曜日の演習が極度に少なく、また、私の出張も月曜日にかかることが多く、十分な指導ができなかった。もう少し演習の状況をこまめに見るべきだったかもしれない。
- 小テストは受講生にとっても私にとっても忙しかったが、効果は高いと思う。
- 今回、全くの合計点方式をとった。客観性を高めるため、また、最初から評価基準を示すことを考えれば、この方法になる必然もあるが、問題点も多い。本当に理解しているかどうかを、成績に反映させるのであれば、期末試験での結果をじっくり判断すべきである。しかし、学生がどれだけ努力したかをはかるのであれば、この方式で良い。アメリカ型と日本型の違いもこのような形でも現れるのかもしれない。むずかしい。
- 絶対的な講義の時間が短いと思ってしまう。なかなか例を中心にじっくり説明する事ができない。
- ある企業に依存するようなファイル形式例えば [PDF] などは使いたくないと思っているが、platex + dvipdf + acrobat reader 5 などで数式が克服できるのであれば、この利用も考える必要もあるかもしれない。しかし、ここでまた、学生のコンピュータ技術の高低、コンピュータの質の善し悪しが、差となって現れないような便宜も大切である。
- 英語の使用は難しい。どのようにすべきか、今後の課題。
2007年度授業の反省点
- 最初のシラバスでの、進度と、教科書単元の明示、講義、定理の教科書の番号表示、コメントシート、ネットコモンズでの応答、ジャーナル、キャビネット、Quiz、Quiz のメッセージ欄とその応答、応用に関するレポート、演習、演習での小テスト、学生による発表、演習の巡回、期末試験の作り方、評価の仕方。大体、スタンダードなコース運営ができたと思う。
- 今回の最大の難しさは、教科書が英語、板書も英語、説明は日本語ということだったと思う。この設定で線形代数学 I の授業をしたのが初めてだったこともあり、板書計画が十分できておらず、たくさん板書して、読みにくく、わかりづらいという状況を作ってしまった。同じ設定でも、もう少し配慮し、板書は記号などで略記することでわかりやすく大きく書けたと思う。次への改善点である。来年度からは、2コマ授業、2コマ演習になるので、コース自体の成り立ちがかわってくると思われるが。
- 月曜日の演習が火曜日に比較して2回少なかった。運営の面でも、困難が生じたことは確か。単純な解決方法は思いつかない。月曜が休日の時に、自主的に火曜日の演習に来ていた受講生もいたが、それを強制することはできない。教学改革のためにある程度仕方がない面もあるが、会議のために、演習に十分出席することができなかったのは、悔いが残る。そのため、一人一人の理解度について見ることができなかった。次回からは、この改善は重要である。
- 演習の運営は、二人の先生ということで、均一に行かないのは仕方がないが、その割には、それなりに、整った演習ができていたように思う。二人の先生の連携と経験のたまものか。演習で何をやったかのコミュニケーションも常に取ることができたのは良かったが、もう少し、中に入り込んで、個々の学生が苦労している点などについても、話す機会があると良かったかも知れない。
- 小テストは受講生にとっても私にとっても忙しかったが、効果は高いと思う。金曜日夜7時の提出も、途中からは、理解してくれていたと思う。NetCommons を用いた、コメントシートを通してのコミュニケーションも、最初あまり、利用されていないことを知っていたが、そのまま続けて良かったと思う。コミュニケーションを強制しては、信頼は得られない。
- 内容的には、Determinant の定義が cofactor expansion から入るのは、最初かなり苦労した。定義、証明、例、応用と計算練習の通常の説明ができないからである。しかし、ある程度、計算に慣れてから、combinatorial definition をする利点も理解することができた。これは、教育の奥の深さと難しさでもある。講義二コマになると、膨大な計算による証明も入れることになると思うが、それが果たして良いかどうかは、疑問。
- 連立一次方程式の一般論について、もう少し、しっかりとした理解ができるように、時間を割くべきだったかも知れない。Quiz 7 の最後の問題や、Final の 5 (c) に正解が少なかったのは、問題を感じる。ただ、全般的には、今年は学生の理解度が非常に高かったと思う。演習での雰囲気も良かった。最後の復習のセッションにもS312にあふれるぐらいの学生が来ていた。理学科一年生が今年少なかったことは、残念ではあるが、学習には良かったと思う。さらに、計算力もある学生が、何人もいたことは嬉しかった。これからも数学に興味を持って伸びていって欲しい。
2010年度授業の反省点
- 2008年度から新しいコースなり、名称も線形代数学Iから線形代数入門となった。単位は、2単位(講義1+演習2)から3単位(講義2+演習2)に変更、それに伴って、内容には、2次元と3次元のベクトルと、固有値、固有ベクトルが加わった。線形代数学、線形代数特論と続くが、これらを履修しない学生が多いことを想定して、他分野で最低限、固有値などについて知っておいた方がよいとの配慮からであるが、どの程度踏み込みかは、未確定であるため、教員に任されている。
- 教科書は、数年利用している、Anton-Rorres の Elementary Linear Algebra, Application Version (Wiley International Edition) 9th Edition を利用したが、春に10版が出版され、夏に International Edition がでたこともあり、購入にも困難が生じた。来年は、10版にする可能性もあるが、この機会に教科書を見直すべきであると思う。簡単にこの教科書について書くと
- やさしく、わかりやすくかつ例も多い。三版の日本語訳を以前使っていたことからなじみもあり、この教科書にしていた。英語の教科書の特徴で、演習問題と一部その答えがあり、関連書籍も充実しているメリットもある。
- 応用をあつかった Chapter 11 が特徴的で、この部分が充実している。わたしはこの教科書二回目であるが、どちらもこの章に関するレポート問題を課題とし、学生にも好評であった。(期末試験時のメッセージ欄にもポジティブなコメントがいくつかある。)
- 証明を考えて構成されていない。そこで、間を埋めて証明することすら難しい配列になっている。特に行列式では、Cofactor Expansion で帰納的に定義している。これは、仕方がない面もあるが、10版では、交代和での定義すら無くなっている。すべてに厳密な証明はなくても、筋が通っていないと、少なくとも、このコースにつながるコースでは使えない。実際、線形代数では、1/3程度、線形代数特論では2/3程度教員が独自に講義録を作って埋めることになっている。
- 上の二項目からもある程度見て取れるかも知れないが、練習問題で洗練されていないものがある。非常に研鑽量が多いにも拘わらず、あまりきれいなことがでないなど。ひたすら問題を解くことは重要だが、あまりに数学の美しさが失われている。
- 最大の問題は三省堂(学内書店)で購入が難しいこと。値段の差がありすぎる。そこで購入がむずかしい。次年度からは、まずは、三省堂で購入できる、日本支社がある International Edition を出版している会社のもので、かつ、線形代数学と、線形代数特論に使いやすい教科書に変えたいと思う。良い教科書が見つかれば良いが。アメリカでは一般的に、微分積分が一年生で、線形代数は二年生が学ぶことが多く、教科書の充実度も、差がある。良い教科書が見つかることを願い、図書館に幾つかの教科書の購入申し込みをしている。できれば年内には決めたい。
- 最初のシラバスで、進度と、教科書単元の明示、コメントシート、NetCommonsでの応答、Quiz、Quiz のメッセージ欄とその応答、章末問題の宿題2回、応用に関するレポート、演習での学生による発表、コアプロブレム、評価の仕方など説明したが、いくつか予定通りに行かなかった。
- NetCommons が RAIDがこわれたため、ちょうど使い始めた時期に使えなくなってしまった。そこで、w3 にホームページを作り、代替として運営したが、NetCommons では、書類の download 状況がモニターできるが、それができないため、学生がどの程度、Quiz や Quiz の解答、コメントシートの応答などを読んでいるのか把握できず、手探りで運営しなければならなかった。ILC でも、NetCommons は授業に利用したくないようなので、今後は利用できず、Moodle などに変えていかなければいけないようだ。個人的には、Moodle より使いやすいので、ちょっと残念。
- 線形代数に関するレポートの質が高く、小テスト1回分の配点では、どうかと思うようになり、小テスト1回半分の点数に変えたため、演習の点が減り、評価基準を変えることとなった。演習の評価基準もなかなか定まらず、公開できなかった。演習の運営に関しては、3人のTAの人たちに対する私の対応が十分では無かったと思う。もう少し丁寧にコミュニケーションすべきだった。
- 基本的には、シラバスを契約とは考えず、柔軟に対応していった方が教育効果は高いと思うが、説明が十分できなかったのは問題だった。
- 講義について
- 内容については特に固有値と対角化をどこまでするかが問題だった。教科書としても、3章から7章に飛ぶ分、一次独立や、基底、内積空間について学んでいないため、教科書をそのままは使えず、演習問題には配慮が足りなかった。工夫が必要。ここだけは、ハンドアウトで対応するのも一つ。次の教科書が決まってからの検討課題。
- 英語であることが最初なかなかなじめないことにつながっていることは否めない。コメントシートへの対応で、納得してもらう方法をとっているが、簡単な用語集は作っても良いかも知れない。安心を与えられる。微積も、物理も、化学も、生物も英語の教科書を使うことから、英語の教科書自体は問題ないが、厚くて重いという問題は、深刻になってきている。あと数年後には、pdf の open textbook などに移行するのも検討課題。すでに英語では何種類か公開されている。まだ市販のものとくらべて質が落ちると見えるが、次の次の教科書選択あたりでは、使えるかも知れない。
- すこし理論的な証明が多すぎたかと心配したが、学生の講義についての反応はおおむねポジティブ。数学の面白さを感じてくれているようで嬉しい。コンパクトにより整った授業に変えていくことと、教科書とのリンク、演習とのリンクを整備することが重要。
- 黒板の字が小さいことを今年も克服できなかった。人数が今回ぐらいであるなら(45)もう少し小さい部屋の方が良いかも知れない。以前よりは、文字数を減らしたので改善はされていると思うが。
- 講義の内容を、もう少し演習に実質的に反映することも考える必要がある。
- 演習について
- TAが一人をのぞき、初めてだったこともあり、三人で統一することが難しかった。わたしが、コースが新しくなってから1回目であったことも、影響したと思う。特に、演習で学生に発表させるさせ方、コア・プロブラムを宿題とどのていど思わせるかと言うこと、説明をTAがどの程度するかということ、授業との関連などなど、正直3つの演習の統一性を保つのは難しかった。以前は、演習で1問ずつ小テストという形式をとったこともあったが、今回はそこまで手が回らず、まったくの発表回数だけで演習点をつけることになった。最初からもっと整理しておかなければならない。
- 今回の最大の改良点は、コア・プロブラムをクラスでアナウンスし、演習の最初の時間にしてもらったこと。これも演習のクラスによって扱いが異なったようだが、提出はしないが、宿題扱いとして、演習を進めることにはなったと思う。
- 期末試験について
- むずかしいことはわかっていたが、このレベルを目標とすることをもっと早くから学生とTAに示すべきだった。これも1回目という経験不足の所以である。もうすこし、コア・プロブレムの選択を大切にして、そこから問題を出すべきだったと反省している。次回は、いきつく先を最初からTAに伝えることで、改善できると思う。
- 予想通りかなりの幅ができた。それはおいて、期末試験前の Review セッションが機能しなかった。やはり質問ではなく、Review Session と明示した時を一回作った方がよいのか、これは、難しい。すくなくとも最後の演習は、期末試験に向けた復習をもっと具体的にすべきだった。Review Sheet ができたのがぎりぎりだったので仕方がないが。
- 改善点が少し見えてきた気がする。
2011年度授業の反省点
- 教科書について:
- 2010年度まで利用していた、Haward Anton & Chris Rorres, "Elementary Linear Algebra, Application Version" の9版が新版である10版になることになり、教科書選びが2010年秋から始まった。Anton-Rorres は、良く使われている教科書であるが、大学内の書店で買うと非常に高価になるため、業者に販売に来てもらう等していたため、追加注文などが難しく、大学内書店からある程度安価で購入できるものに変えたかった。さらに、厚すぎて持ち運びに適さない(アメリカの教科書は概してその傾向あり)、練習問題の質が十分とは言えないものが多い。などが理由である。教員だれも納得のいくものではなかったが、いちおう、Linear Algebra and Its Applications, 4th Edition, by David C. Lay を選択した。
- 今回の教科書は、線形写像が非常に早くに登場し、連立一次方程式、ベクトル方程式、行列方程式、線形写像に関する性質の関係が一章から紹介される。一学期間を通して、これらの行き来をするので、その意味では興味深い。行列式については、cofactor expansion で定義し、通常の交代和の式は消滅。それが主流なのかも知れないが、やはり多少不満。性質の証明を厳密にはできない。ベクトル積は教科書に含まれていない。演習問題は、まあまあかもしれない。
- 英語の教科書は学生にとって負担であることは確かだが、一応、英語とする理由を書いておく。
- 線形代数と、微分積分は最初のコースを日・英と二コース出しているが、二番目のコースからは、一つのコースとなる。数は圧倒的に4月生(日本で中等教育を受けた学生)が多いが、9月生(日本以外の教育システムで中等教育を受けた)学生もある程度いることを考えると、英語にするメリットは ICUとしては大きい。秋学期から物理、冬学期から生物、化学も英語の教科書を利用しているので、慣れるのには良い機会でもある。
- 演習問題が豊富で、奇数番は答があるなど、構成が日本語の教科書と比較して良くできている。特に、何人ものTAを使って演習をするときには、とても重要である。簡単な問題も多いことは、有効。
- 応用例が豊富。日本語の教科書では、これほど豊富な例や、応用は含まれていない。特に数学の教員では、一人でそれだけ書ける人はいないからである。特にICUのように、様々な分野の学生が一緒に学ぶときには、各方面の応用例が多いことは有効。
- 講義について
- 教科書の構成が最初十分理解できず、教科書を十分利用できなかったときがあった。ベクトル積は、教科書に無いのだから、省いても良いかも知れない。他の教員との調整が必要。2章をどこまで扱うかも最初定まら無かったが、結経、実際の授業の通り、2.4までで良かったであろう。単射、全射や、特別な線形写像をどの程度扱うかは今後の課題。
- 2回目の授業から実施した、ハンドアウトと、スライドの組合せによる授業運営は余裕も生じ良かったと思う。準備は大変であるが、まずは、ハンドアウトを作り、それをもとにスライドを作成する。最初スライドで少し復習をしてから、始める。今年から、N220 にはメインスクリーンのほかに二つのサイドスクリーンができたため、サイドスクリーンを使って、黒板で説明をする事ができ、非常に良くなった。これからもこの方法を有効に使いたい。
- 今年から Moodle を利用。コメントシートへのレスポンスも、多少遅れ気味ではあったが、最後まで続けることができた。今後もこのサイクルは良いように思う。しかし、Moodle での質問は殆ど利用されなかった。やはりここに質問をするのは、勇気がいるということか。
- Take-Home Quiz をやめ、宿題レポートを4回行った。採点は大変であったが、適切であったと思う。ただ、HW4 for Review はもう少しカバーした問題をしっかり扱っていた方が良かったと思う。改善事項。
- 最後の授業で少し難しめの問題で復習したのは良かったと思う。ただ、すでにかなり遅れてしまっていた学生はもっと早い時点でアプローチする必要があった。反省。
- 演習について
- TAが一人だけ新人だったが、3人とも、かなり高いレベルの演習をしてもらえたとおもう。特に途中から、みな、演習での詳細、十分理解できていない学生のことなど、丁寧に報告してくれたのは良かった。ただ、わたしが本部棟での仕事が多く、あまり演習に出ることができず、学生の顔と名前も一致しなかったのは問題。今学期の一番大きな反省である。Eとなった学生のまだ何人かサポートできたように思う。
- コア・プロブラムをクラスでアナウンスし、演習の最初の時間にしてもらったことは良かった。最後欠席がある程度の割合いたこともあり、演習点の明確化のために、小テストをしたが、これは、有効なので、これからもしてみたい。私が作る問題でも良いが曜日がことなるため、二種類作成するのは、うまくいかないかも知れない。
- 講義、演習、宿題などなど全体で整っていたと思うが、学生によっては、関連性が見えにくいと思っていたようだ。なにか工夫が必要かも知れない。とはいえ、これはなかなか難しいが。
- 期末試験について
- むずかしいことはわかっていたが、このレベルを目標とすることをもっと早くから学生とTAに示すべきだった。昨年と同じ文藻を書くのは能がないが、教科書が変わって、毎回余裕が無かったのが正直なところである。同じノートなどは殆ど使えなかった。もうすこし、コア・プロブレムの選択を大切にして、そこから問題を出すべきだったと反省している。次回は、いきつく先を最初からTAに伝えることで、改善できると思う。
- 予想通りかなりの幅ができた。それはおいて、期末試験前の Review セッションが機能しなかった。やはり質問ではなく、Review Session と明示した時を一回作った方がよいのか、これは、難しい。
- 改善点が少し見えてきた気がする。と毎年同じ事を書くのは悲しい。
- 教科書に[M]マークがついている問題がたくさんあり、MatLab を利用することを前提としている。日本で教育を受けた学生は計算力もある場合が多く、MatLab は不要とも言えるが、授業のあと、Let's try SAGE! を行った。15人ほどが来てくれた。このような取り組みは続けたい。Computer の利用は実際に使うときにとても重要。
(2011年11月22日)
2012年度授業の反省点
- 教科書について:
- 昨年は、多少違和感があったが、全体の流れを理解してみると、いくつかの項目をのぞいて、満足である。
- Linear Algebra I として、気になることは、ベクトル積が書かれていないこと。行列式の Combinatorial な定義はやはり最後にでも書いておいて欲しいこと。
- LInear Algebra II としてきになるのは、一般の線形空間の記述が少ない事。おそらく、日米でのカリキュラムの違いであろう。
- 講義について
- Slide を使い、例や計算の説明を黒板ですることを定着させた。しかし、「定義や定理は板書したほうが、理解しやすいし、記憶できると思います。」とのコメントをもらった。これはその通りである。時間の具合で、難しいのが、現状。それとあまりたくさん、英語を黒板に書くこともはばかれる。写すことにかなりのエネルギーを使うことになろう。
- もう少し応用に関する宿題を入れるとよいように思う。HW1 だけでなく、HW2 と 3 の間にもう一つ入れる事を検討したい。採点も、奇数番の問題は、チェックだけ、偶数番は採点など、効率よくできるようになったので、HW を増やしても可能だとおもわれる。
- 昨年度、HW4 の改善を書いているので、次は、改善したい。
- Screen Capture Video の利用者は多いわけではないが、いろいろな学習者のサポートとしてはよいように思う。自律的学習者のサポートは、さまざまな学習形態にあわせて、学生が勉強しているその場をサポートする事である。コースの資料は、これからも公開していこうと思う。
- 演習について
- TAが経験者であったこともあり、かなりの質の演習が出来たと思う。
- わたしは、もう少し、顔を出して、学生とも話さないと、学生の顔と名前jは一致しない。
- Quiz を2回以上実施することなどは、よい改善だったと思う。
- 水曜日の人数が極端に多くなってしまった。体育の時間や人数を確認し、来年度は、計画的にすべき。
- 最後の復習には、TAにずっと部屋にいてもらったにも関わらず二人しか質問がこなかった。必要ないのだろうか。
- 試験について
- 出張の関係で中間試験をしたが、とても良かったと思う。10週間確保できていれば、その余裕がある。
- 何人かに問題はあったが、一般的には、今までの経験から、非常によく出来ていた。
- 過去問などもあり、勉強がしやすかったのかも知れない。
- 今回は、試験週間の初日が試験日だったこともあり、試験の作成に十分な時間がとれず、最後に問題を簡単にした。そのいみで、作成がすこし、乱雑だったと思う。ある問題の配点は、もう少し高くすべきだったし、ある問いは意図的すぎて、自然でなかった。もっと余裕をもって作成することがひつよう。
- 成績について
- 宿題の採点基準、演習の評価基準は、改善が必要かも知れない。とくに、今回は、宿題の採点基準について考えさせられた。答えがある問題もあり、かつ、そのような問題を出すことは、自習のためには、有効であるが、細かい採点または、答えをチェックすることには向かない。ただ、どのように採点するかをあまり明らかにするのも問題があろう。期限内に提出した基本点と、問題をすべて渡航としたことと、ある程度難しい問題についての、細かい評価、いずれも必要であると思う。
- コンピュータの利用のためのサポートをどうするかは、今後の検討課題。実際に使う時はとても有効だが。
(2012年11月20日)
2013年度授業の反省点
- 教科書について:
- 内容に関しては2012年度のコメントを参照。
- International Edition に関する問題が発生した。一つめは、
米最高裁、海外制作著作物の権利消尽を認定 - "Kirtsaeng vs. Wiley"訴訟で被告勝訴で、これにより、出版社として、International Edition の扱いが難しくなっていると思われる。もう一つは、教科書を扱っている、桐原ピアソンという会社の変化。ピアソン、グローバル教育の取り組みの一環として桐原の所有権を譲渡である。このため、入荷時期、価格に関して、トラブルが発生した。また、新しい版においては、現在の International Edition が大幅変更となり、とても高額になってしまった。おそらく、このまま使い続けることはできないであろう。別の教科書にするか、電子版を利用するなど(これは学修にむくとはまだ思えないが)来年度に向けて、考え直さないといけない。
- かなりの割合の学生は、英語の教科書を、しっかり読み、後半には、大きな違和感が無くなっていった様だが、ある割合の学生にとっては、最後まで英語の教科書への抵抗感があったようである。この問題は、簡単には解決できないと思われる。2011年に英語の教科書を用いる理由を記したが、もっと学生とコミュニケーションを取るべきだったかも知れない。
- 講義について
- Slide を使い、例や計算の説明を黒板ですることを定着させた。学生の学修がどのようになされているかの調査も必要かも知れない。Moodle に、Screen Capture Video と、黒板を中心としたビデオを授業日の夕方までに、公開した。これは、すぐには見なくても、復習、確認に、有効だとは思うが、54人中、10人程度の利用である。この人たちの期末などの成績は良かった。復習、確認は重要だということを物語っている。しかし、見る側とすると、やはり、screen capture video と黒板を同時にみたいであろう。自動収録システムを使うだけの価値があるかどうかは、検討を必要とする。同時に、Moodle にすら、登録しない学生も、8人いた。主体的学修を支えるのに、このようなサポートは重要と思われるが、困難も見え隠れする。また、ビデオの撮影など、やはり作業も増えるので、毎回するのは、難しいように思われる。少なくとも他の先生に勧めるのは難しい。
- もう少し応用に関する宿題を入れるとよいと考え、HW1 だけでなく、HW2 にも、応用を入れたが、それが良かったかは不明である。単に、問題を解かせるだけでは十分ではないのかも知れない。また、応用例も秀逸とは言えない。採点は、適切にしたつもりだが、やはり、フォーマットを統一しないと、いけないかも知れない。来年度の検討課題。
- コメントシートのレスポンスを Moodle にあげるのはとてもよい学修支援だと思うが、それも、十分利用されているとは言えなかった。主体的学修の促進は難しい。
- 一昨年度、HW4 の改善を書いているので、次は、改善したい。
- 演習について
- TAは殆どが新しい人であったが、みなていねいに対応してくれた。感謝。一部、わたしの講義をビデオで確認してくださっていたひともいた。
- どの程度、演習に顔を出すのが良いかは、難しいが、今回はまあまあ適切な割合だったのではないだろうか。しかし、学生の顔と名前は一致しない。
- Quiz を2回以上実施すること定着し、成績の付け方も、適切になっていると思う。
- 月曜日の演習が、全体で一回すくなかった。さらに、月曜、水曜とも一回ずつ、台風の影響で休講になってしまった。演習の回数が十分ないのは、問題である。計算力が十分でなかったのも、その影響が大きいように思われる。
- 最後の復習には、TAに二人ずつ二日間にわたっていてもらったが、質問者がどちらも多く、盛況だった。昨年は殆ど来なかった。違いは何なのだろう。ただ、一方は、保健体育の試験とぶつかってしまい、日程選択は適切だったとはいえない。
- 試験について
- 昨年と比較して基本的な問題でできていないものが多かったが、計算が難しく、それが難易度を上げてしまっていたようだ。試験作成は何年やっていても難しい。
- 過去問などもあり、勉強がしやすいと思っていたが、もしかすると、宿題を出し、演習で適切に発表している学生は、単位を落とすことはないと言ってしまったのが負の作用をしたのだろうか。むずかしい。
- TES を最後の授業日に実施するのを忘れてしまい、期末試験の日になってしまった。期末試験の難しさなどへのコメントが増えるだろうが、それをもとに、もう一度反省したい。
- 成績について
- 問題はあるが、少しずつ改善されているようにも思う。もう少し早めにていねいに説明した方が良いだろうか。あまりに、点数に執着して欲しくないが。
- コンピュータの利用のためのサポートはしたいが、今回は日程の具合でできなかった。冬学期の終わりなどに実施したい。
(2013年11月27日)
2014年度授業の反省点
- 教科書について:
- 2013年度の反省点に書いたが、International Edition に関する問題の影響で、教科書がなかなか確定しなかった。結局、昨年までの教科書の New International Ediciton とし、その価格も、最初に見積もりをお願いしたときの、20% 引き程度になったため、かろうじで受け入れられる範囲だと判断して、採用したが、やはり高いことは事実。International Edition が安価な教科書としては使えない、Global 化の難しさの一旦を引き受けざるをえない事になってしまった。今回、pdf 版を購入した学生もいたが、しばらくは、pdf 版を利用する学生は、少数であろう。一方、Free Open Textbook も少しずつ改善されているので、特に、pdf 版の利用が普及するか、または、簡易印刷のものを、適切に入手できるようになれば、状況が変わるかも知れない。教科書の問題は、世界経済の影響を直接被るので難しい。ある年月を経て、英語版に移行したことを考えると、日本語版の教科書に戻ることは、ICU 内に新たな、混乱を引き起こすことにもなりかねない。
- New International Edition には、Student Study Guide が含まれいた。それを利用していた学生は、問題を解くことも比較的簡単だったと思われる。昨年度からの大きな変化である。むろん、そのためには、かなりの時間が必要であることも確かである。ELA を履修している学生のことを考えると、これ以上、課題を増やしたり、難易度をあげたりするのは、適切ではないだろう。Later Specialization は、ゆっくりじっくり学ぶ事も含んでいると思われる。今回は、古い教科書を持っている学生もおり、教科書のページの指定が難しかった。最初、ページを削除したが、含めることを求められ、かつ、両方のページ数を適切に入れる事ができず、混乱を引き起こしてしまった。
- 講義について
- Slide を使い、例や計算の説明を黒板ですることは定着したように思われる。しかし、学生の学修がどのようになされているかの調査も必要かも知れない。Moodle に、Screen Capture Video を授業日の夕方までに、公開した。昨年は、これ以外に、黒板を固定で撮影したビデオも載せたが、あまり利用されていないこともあり、自動収録が可能になるまで、画面収録のみとした。ビデオなど資料は、試験前になってから、見る学生が多かった様である。授業の核となる部分を別撮りで画面収録ビデオとして作成することも考えたが、十分アイディアが練れず、今回は断念した。Camstasia なども利用して、いずれ挑戦してみたい。ただ、要点のビデオはそれだけに頼る学生がでると、逆効果であり、学修成果を正確に把握できる方法も確立しないと難しい。
- HW のフォーマットも、考えた方がよいかも知れない。授業を作るのは、本当に難しい。
- コメントシートのレスポンスを Moodle にあげるのはとてもよい学修支援だと思うが、それも、十分利用されているとは言えなかった。主体的学修の促進は難しい。
- 演習について
- 授業の関係もあり、水曜日の人数が極端に少なく、異なった質の演習になってしまった。殆ど TA/CS に任せることになったが、それは、安心して任せられる状況があったからとも言える。ただ、演習自体の運営も簡単ではなく、どのように関わっていったらよいか正直よく分からない。
- 小テストの点数に差が出た。点数の補正をしたが、どのように、していくか、今後の課題。
- 試験について
- 昨年と比較して計算が簡単な問題にしたため、正答率が非常に高くなった。このコースは、理解して、使えるようになることが主であるが、その背景には計算があり、計算力の改善は、間違いを発見するよい訓練でもあり、無視できないが、自力の差も大きく、どのようにしていくか難しい。
- コンピュータの利用のためのサポートはしたいが、今回は日程の具合でできなかった。冬学期の終わりなどに実施したい。
(2014年11月26日)
2015年度授業の反省点
- 教科書について:
- 2013年度、2014年度と教科書の混乱が続き、今年度 fifth edition となった。名前も、Iternational Edition, New International Edition から、Global Edition と変わり、New International Edition では、Student's Study Guide が含まれていたが、今回のものには、含まれておらず、その影響もあると思われるが、殆どすべての Exercises が改訂となった。多少、理論的な問題が増えた事は評価できるが、基本的に、北米では販売していない、安価な International Edition をどうするかという問題のために、価格も大きく変動し、内容も毎年変化することには、正直不満である。
- 私の任期もあと3年なのでもう不可能だと思うが、pdf 版または、簡易印刷版の Free Textbook に移行する時期が近づいているのだと思う。教科書産業の問題も、Global 化の波の中で翻弄されている。
- 講義について
- Slide がさらに増えた。内容的には、丁寧に説明できるが、ビデオに助けられている面もあり、本当に、黒板を減らしても、学生の理解が充分になされているのかは不安な所である。いずれにしても、講義は、Passive な面が強いので、演習や、時間外で、学生が自分で学ぶ主体的学習との兼ね合いが大切である。本当に難しい課題である。
- HW のフォーマットは、昨年度から多少変えたが、今の形式であるなら、HW1 や HW2 の前半は、Linear Algebra Toolkit や、SageMath, Octave, R などを、ある程度時間をかけて紹介し、それを使ってもらった方がよいように思われる。学生の学びを考えると、SageMath か、R が適切であろうが、HW1 は、Linear Algebra Toolkit であろうか。コンピュータを使うことは、有効であるが、学生にとって、余分なエネルギーも必要となり、どの程度まで習熟度を求めるかは、難しい問題である。
- コメントシートのレスポンスを Moodle にあげるのはとてもよい学修支援だと思うが、それも、十分利用されているとは言えなかった。主体的学修の促進は難しい。
- 演習および復習について
- 授業の関係だろうか、今年は水曜日の人数がとても多かった。全体的な受講生も多く、演習が難しかったと思うが、TA の人たちが慣れており、適切に対応してくれていた。
- 最後の復習会で熱心に学んでいた学生と、そうでない学生とで、期末試験にかなりの差が出たように思われる。学生個人の学び方は異なるので、難しい。
- 試験についてなど
- すこし単純すぎたかもしれない。数学的帰納法は、殆どの学生が学んでいるのだから、避けて通らず、それを明確に使うことも重要に感じた。そうでないと、問題が非常に技巧的に成り、かつ、意図したものではない解き方が頻発してしまう。
- 今年は、9月生や、高校まで英語で学んできた受講生が多かったように思われる。TA, CS が英語で対応してくれたのは助かったが、もう少しそのことを意識した対応をした方が良いかも知れない。
(2015年11月21日)
2017年度授業の反省点
- 教科書について:
- 旧版を持っている学生がいたが、以前と比較して混乱は減っている。来年度も同じ教科書が使えることを望む。
- Calculus と比較して、アメリカの Linear Algebra の教科書は層も薄く、正直に言うと不満も多い。問題の質と、理論の提示の仕方だろうか。しかし、読んで分かるように書かれている点は、優れている。
- 応用と計算問題についても、研究して、来年度退職したら、アメリカ型の教科書の良い点を失わないように、しかし日本型の教科書の良さも取り入れて、Free の教科書を書いてみたい。ビデオも入れた、デジタル教科書がよいかな。
- 講義について
- Slide がさらに増えた。その分、説明に費やす時間が増えたので、マイナスはないように思うが、どうだろうか。黒板の良さとの Trade Off であることは否めない。
- Moolde に、Lecture Note, Slides, Screen Capture Video, Responses to Comment Sheets を毎回 UP することができた。何が、Moodle にあるかが、学生にも分かるので、学生にとっても、よいように思われる。むろん、ほとんど最後まで、Moodle を利用しない学生も居たようだが。
- 数は、記録していないが、Video を見る学生が増えたように思われる。Video を見ているという声を良く聞く。正直、説明を二度目に聞くことができれば、理解度は上がることは確実だと思う。黒板の撮影もできると良いが、それを加えるとまだかなり手間がかかる。来年度は、定年前の最終年なので、なにか考えてみたい。
- Inverse Matrix Theorem は、教科書に書いてあるとおりにしていたが、少し整備した方がよいことは確かである。説明の仕方は改善できたと思う。
- 今年は、木曜日からスタートしたため、一時限目は講義だったので、スムーズだった。演習から始まる年が多いため、ベクトルについてのことを含めてある。今年は三週目だったので、TAの方々にお願いした。勉強になったと思う。基本的な部分は、木曜日の授業内でカバーするので。
- 最後の時間に Fisher の不等式の話をしたが、次回はもう少し改善してみたい。もう一つのトピックとして、Reduced Row Echelon Form の一意性の召命は、良い復習にもなり、適切かもしれない。
- Determinant の理論的な部分の説明は、もう少しどうにかしたい。来年、改善できるだろうか。
- 大学の会議の関係で、一回休講とし、補講期間に復習をすることとなった。避けたいが、最終年度もその可能性が高い。
- 宿題について
- 宿題は4回、それぞれ目的を少しずつ変えている。1回目は、教科書と英語になれることと、簡単な応用を知ること、コンピュータを使うことが必要な場合もあることを伝えること。二回目は、一回目と同じ理由とともに、少しだけ、理論的なものも含め、三回目は、計算と理論から、問題をしっかりととらえることを目的とし、四回目は、復習にあてている。3章のDeterminantに関する宿題を入れた方がよいと思うが、採点してすぐ返却することを考えると、簡単ではない。しかし、少し、スライドなどの準備ができたので、来年は五回にすることを、少し考えても良い。
- 基本的に、細かい採点はせず、問題を解いているかを見て、問題ありというものを減点した。しかし、6問ずつで、2問以内に問題がある場合は満点となる採点方法であったこともあり、殆ど、満点となってしまった。宿題の大切さは、ペースを合わせて、ついてきてもらうことでもあるため、これでよいとも言えるが、改善の余地もある。特に、奇数番で答えが教科書にあるもので、答えのみで、途中経過を書いていないものは、減点することを、最初から伝えておくべきだと思う。
- 演習および復習について
- 演習は難しい。どうしても、セクションにより差が出る。どのくらい、出て説明したら良いかは分からない。
- 演習に出ることで、名前を覚えることは確かである。学生の名前を覚えることは、ぜひしたい。
- 試験についてなど
- あまりに、パターン化してしまっている傾向がある。ただ、大幅に変えることの危険性もあり、変えられない。この程度で良いのかもしれない。
- 今年は、全体で49人と少なかっただけでなく、9月生が少なかった。冬学期に英語でも開講しているので、それで良いのかもしれない。しかし、他の英語での授業を履修する抵抗感を減らすためにも、英語の教科書、英語のスライドなどは、大切だと思われる。英語への違和感の表明が少し減ったように思われる。できるだけのサポートはして行きたいが、英語や数学を学ぶことで、世界が広がることは確か。教育は難しい。学生の学修を促すことはさらに難しい。
(2017年11月23日)
2018年度授業の反省点
- 教科書について:
- 昨年度と同じ教科書を利用することができて良かった。
- Calculus と比較して、アメリカの Linear Algebra の教科書は層も薄く、正直に言うと不満も多い。問題の質と、理論の提示の仕方だろうか。しかし、簡単な演習問題が多く、特に数学が得意とは言えない学生の学習を考えると優れている、また、広い分野に関係した応用例が含まれており、これは、一人では書くことができず、アメリカのように、出版社で制作しないと不可能である。さらに、時間をかければ、読んで分かるように書かれている点や、美しい図が多い点も、日本の教科書と比較して圧倒的に優れている。
- 応用と計算問題についても、研究して、3月に退職したら、アメリカ型の教科書の良い点を失わないように、しかし日本型の教科書の良さも取り入れて、Free の教科書を書いてみたい。ビデオも入れた、デジタル教科書がよいかな。
- 講義について
- 今回は、DMSC に撮影に来てもらい、OCW 用に、ビデオ撮影をしたので、Slide だけに頼らず、黒板を利用した。しかし、書くのに時間がかかるため、朝、早く来て、黒板に書いておいた。これは、時間をとればとるほど、よくなるが、どこまで、時間をかけるかは、難しい。木曜日の朝は、常に緊張していた。
- Moolde に、Lecture Note, Slides, Screen Capture Video, Responses to Comment Sheets を毎回 UP することができた。何が、Moodle にあるかが、学生にも分かるので、学生にとっても、よいように思われる。むろん、ほとんど最後まで、Moodle を利用しない学生も居たようだが。
- 数は、記録していないが、Video を見る学生が増えたように思われる。Video を見ているという声を良く聞く。正直、説明を二度目に聞くことができれば、理解度は上がることは確実だと思う。黒板の撮影もできると良いが、それを加えるとまだかなり手間がかかる。来年度は、定年前の最終年なので、なにか考えてみたい。
- Inverse Matrix Theorem は、教科書に書いてあるとおりにしていたが、少し整備した方がよいことは確かである。説明の仕方は改善できたと思う。
- 今年は、木曜日からスタートしたため、一時限目は講義だったので、スムーズだった。ベクトル積は、行列式の応用として話したので、理解できた学生が多かったようであるが、やはり、教科書に書いていないので、問題も少なく、不十分だったかもしれない。
- Determinant の理論的な部分の説明は、少し、改善しようとしたが、中途半端だったように思われる。やはり、教科書にかいてないと、学生が復習ができないので、簡単ではない。
- 大学の会議の関係で、一回授業ができない日があったが、ビデオレクチャーにした。しわ寄せもあったが、他の方法よりはよかったように思われる。会議で授業を変更しなければならないのは、いくら重要な会議といえども、残念である。
- 宿題について
- 宿題は4回、それぞれ目的を少しずつ変えている。1回目は、教科書と英語になれることと、簡単な応用を知ること、コンピュータを使うことが必要な場合もあることを伝えること。二回目は、一回目と同じ理由とともに、少しだけ、理論的なものも含め、三回目は、計算と理論から、問題をしっかりととらえることを目的とし、四回目は、復習にあてている。
- 今回は、丁寧に、採点をした。昨年とは、Re- Late- Submission Policy も変更したが、結局、提出しない学生が何人かいた。
- 演習および復習について
- 演習は難しい。今年は特に、演習に出席しない学生が多くいた。なぜなのだろう。演習は、有効だとのコメントも多かったが、そのカルチャーが学びに有効だとは、思えないのかもしれない。たしかに、有効に時間を使うのは簡単ではない。
- 演習に出ることで、名前を覚えることは確かである。学生の名前を覚えることは、ぜひしたい。
- 試験についてなど
- あまりに、パターン化してしまっている傾向がある。ただ、大幅に変えることの危険性もあり、変えられない。この程度で良いのかもしれない。
- 今年は、全体で49人と少なかっただけでなく、9月生も多くなかった。冬学期に英語でも開講しているので、それで良いのかもしれない。しかし、他の英語での授業を履修する抵抗感を減らすためにも、英語の教科書、英語のスライドなどは、大切だと思われる。英語への違和感の表明が少し減ったように思われる。できるだけのサポートはして行きたいが、英語や数学を学ぶことで、世界が広がることは確か。教育は難しい。学生の学修を促すことはさらに難しい。
(2018年11月18日)