Last Update: January 23, 2025
2025年読書記録
- 「源氏物語 全8巻+別冊付録 第二巻」上野榮子訳 日本経済新聞出版社(ISBN978-4-532-17086-8, 2008.10.30 第一刷)
出版社情報。昨年9月に第一巻を読んでから、第二巻を読み始めるまでにかなりの時間がかかってしまった。その間に、NHK 大河の「光る君へ」も終了。正直にいうと、第一巻を読んで、次々と読む魅力をあまり感じなかった。もしかすると、個人出版であり、注などが充実していないことも関係しているのかもしれないが、正直よくわからない。この第二巻は、読むのに時間もかかってしまった。紅葉賀(もみぢのが)・花宴(はなのえん)・葵(あおい)・賢木(さかき)・花散里(はなちるさと)・須磨(すま)・明石(あかし)。人の死や、最初に逢瀬をもったときや、大きな変化があるときなどの、場面の転換点の記述が非常に簡素で、その前後、とくに後の記述がさまざまに表現されている。当時の出家についての考え方もよくわからなかった。現代語訳とはいえ、馴染みのないことばで描かれている物語が、なかなかスッと入ってこないのは、わたしの側の問題なのかもしれない。また間があくことになるが、ゆっくり、第三巻へと進んでいこうと思う。
(2025.1.17)
- 「ゆとろぎ - イスラームのゆたかな時間」片倉もとこ著 岩波書店(ISBN978-4-00-025406-9, 2008.5.28 第1刷発行)
出版社情報・目次。ある方が、この本の紹介をしておられ、著者のイスラームへの愛が伝わってくるとあったので、読んでみた。著者は、自分は、イスラームではないと書いておられるが、たしかに、その中に入って行って、生活をともにする、感覚がとてもやさしく、違和感がない。目次は、リンクにあるが、最初の二つの章「ゆとろぎとの出会い」「ラーハの世界」を読むと、これは文化的には、乾燥地における遊牧民についてで、イスラームについてではないようなイメージをもった。しかし、他の章では、アルゼンチンや、中国や、インドネシアも、取り上げられており、興味深い感覚と接することができたことは確かである。このかたの、他の本「イスラームの日常生活」(岩波新書)なども読んでみたい。ただ、ひろくはあるが、やはり、薄い感じもした。長期間、ある地点で、生活をしているというかたではないのだろう。また、子どもについてのことと、詩についてのことは、十分理解できなかった。わたしは、結局、まだ何もわかっていないのかもしれない。以下は備忘録:「『ゆとろぎ』とは、『ゆとり』と『くつろぎ』を足して『りくつ』を引いたもの。イスラームの日常のなかで大事にされている『ゆとろぎ』、ラーハは、どのように日々実践されているのでしょうか。毎日の会話のなかで、子育てのなかで・・・。追われる毎日が変わる、人生の知恵。いままでのイスラーム観もかわります。」(表紙裏から)「クルアーン(コーラン)のなかには、『あなたが、東から上る太陽を西からのぼらせてみることできますか。それができるなら神をしんじなくていいでしょう』とあります。天体の動き、生態系の様相の中に、アッターの存在を認識するということです。アッラーとは、神のことをさす普通名詞のアラビア語です。アッラーという固有名詞をもった神様がおいでになるわけではありません。エジプトにもイラクにも中東地域のあちこちにあるキリスト教会には、『アッラーは愛なり』とあります。キリスト教会の玄関にアッラーと書いてあるのを、はじめてみたときは、驚くにあたらないのに、わたしも驚いしてしまいました。人間が生まれ、死んでいくという現象は、他の生物と同様、たいへん自然なこととみなされます。死は悲しむべきことではないというのです。もちろん近しい人などが死ぬと悲しいので、やっぱり泣いてしまいます。が、泣きじゃくりながらも、『泣いちゃあいけない。泣くべきではない。自然現象、神のご意志を受け止めねばならない。どんなことがあっても、「アッラーは偉大なり」』と、おごそかに、いましめあいます。墓をつくることもお墓参りも原則的には奨励されません。日本でも大流行りになった『千の風』の歌のような感じもあります。」(p.viii-ix)「イルム、なかでもイスラームに関する知識を豊富に持っている人のことを、イルムと同じ語源のウラマーといい、イスラームでは、もっとも敬意をもってみられます。(中略)『目に見えないもののほうが大事なんですよ。そのためにはヒクマ(叡智・知恵)をもたなくてはね。』(中略)『あの人はアーティフィー(感情的)な人だ』は『心やさしい』という意味で使われる。」(p.24-25)「『急ぐとシャイターン(悪魔)につけこまれる』『のどかさは神からあたえられたもの』」(p.155)「チャールズ皇太子:イスラーム文明を研究しなければ、西洋文明も滅びるであろう。」(p.159)「『資本主義かて、純粋なもんは、どこにもあらへん。福祉の考え方やその他もろもろ、社会主義、共産主義的な考え方も、のみこんださかい、資本主義の寿命はのびてはる。共産主義の中国は資本主義をのみこんだよって、えらい気勢をあげはる。』『ちがう文化にとにかく、ちかづいてみる。さわってみる。だいてみる、おもいきって、のみこんでしまう、と、案外おいしかったりする。』」(p.183)「イスラームの世界では『人生は学ぶこと、学んだら、それを周りの人にわけなさい。』『なににつけ淀まないのは、いい気持ち、さらさら流れる「ゆとろぎ」のせせらぎ』」(p.194)
(2025.1.23)