Last Update: December 28, 2023, Revised April 29, 2026

2023年読書記録


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  1. 「AIとオープンソースで真贋を見る目を養う Nourish our eyes of authenticity with AI and open source〜素人の発想力・玄人の技術力 Rich & fruitful ideas from amateurism and professional skills of genuine experts」武藤佳恭 Yoshiyasu TAKEFUJI 谷口敬太 Keita TANIGUCHI 春秋社(ISBN978-4-393-35002-7, 2022.10.20 初版第1刷発行)
    出版情報目次情報。AIについて知識を Update したいと思い借りたが、すばらしい内容、すっかり、武藤さんのファンになってしまった。慶應義塾大学の退任のときの講演をまとめたものだとある。まずは、本のタイトルが、本質を表していて、素晴らしい。おそらく、ご本人自身を、素人とも、ある場合は、玄人とも位置づけておられる。お父さんは、公務員で、その傍ら自動ドアの設計販売をしていたというが、三歳にして、マーブルチョコの入れ物で回転型のスイッチのついた懐中電灯を作成したとか。ものづくりの考えが、AI の世界でも遺憾なく発揮されていて、一つ一つの発明といってよいと思うが、AI を使って、問題解決を目指して、アイディアを結実させていく様子にワクワクさせられる。わたしには、そのようなことは出来ないが、データ・サイエンス教育においても、いろいろなヒントを頂いたように思う。「だれにもわかるデジタル回路」を含め、他の本も読んでみたいと思う。
    以下は備忘録: (2023.1.4)

  2. 「なぜ人に会うのはつらいのか〜メンタルをすり減らさない38のヒント」佐藤優、斎籐環、中公新書ラクレ750 中央公論新社(ISBN978-4-12-150750-1, 2020.1.10 発行)
    出版情報目次情報。人に会うのがつらいひとがわたしの周囲にも何人もいる。よく、知らない人と会うこと、わたしは、特に苦手ではないが、実は、一方的に話してしまうくせもあり、それは、防衛しているのかもしてないと感じていた。コロナ下で、人と会うことが制限されるなかで、この問いに、正面から向き合っているようなタイトルの本を、娘が読んでいて、わたしも借りて読んだ。「なぜ人に会うのはつらいのか」に正面から答えているようには思えないが、幾つもヒントがあったことは確か。佐藤優(まさる)の本もすこし読んでみたいと思うようになった。以下は
    以下は備忘録: (2023.1.7)

  3. 「流れのほとりの木のように〜大樹への出発〜」矢澤俊彦、荘内教会(2022.11.22 発行, 本文131頁)
    昨年末に送っていただいて、しばらく読めなかったが、やっと時間をみつけて読むことができた。80歳の牧師である。一度大学でお会いし、二度、教会を訪問し、何度もメールのやりとりをしているので、知人と言ってもよいと思う。書かれたものは、いままでもいくつも読ませていただいたが、今回のものは、よくまとまっていると思う。しかし、同時に、キリスト教信仰について、なにも知らない人に伝えるのは、ほんとうに難しいと、感じさせられた。ひとつは、世の中の変化と、価値観の多様化だろうか。一人一人にメッセージを届けること、または、違った世代の、さまざまな背景のひとと、対話をするのは、難しい。共通の土台を見つけることが困難だからだろうか。しかし、そのような対話に開かれたものでありたいと願う。このような冊子が、多くの人が読めるような形で、残ると良いのだが。第一章 天からの呼び声、第二章 牧師館での連想ゲーム、第三章 自己愛が破れる時、第四章 我がジグザグコース、第五章 地元民へのメッセージ〜荘内日報紙への寄稿から。
    (2023.1.15)

  4. 「ナージャの5つのがっこう」キリーロバ・ナージャ ぶん 市原淳 え、大日本図書(ISBN978-4-477-03130-9, 2018.9.15 第一刷発行)
    出版情報。キリーロバ・ナージャ:ソ連(当時)レニングラード生まれ。数学者の父と物理学者の母の転勤とともに、6カ国(ロシア、日本、イギリス、フランス、アメリカ、カナダ)の各国の地元校で教育を受けた。電通に入社後、様々な広告を企画、世界の広告賞を総ナメにし、2015年の世界のコピーライターランキング1位に。その背景にあった世界の多様でアクティブな教育のことを、コラムとして連載し、キッズデザイン賞を受賞。「アクティブラーニングこんなのどうだろう研究所」設立。好きなものはゾウと冒険。著者紹介にある。とある。この絵本では、順に、ロシアのサンクトベルク、イギリスのケンブリッジ、フランス、アメリカ、日本の学校の様子、持ち物、友達、先生を簡潔に描いている。日本のがっこうについて「このがっこうは へんだ・・・とっても へんだ・・・なんで? どうして? りゆうがわからなくて ふしぎなことで いっぱいだーーー。なんでがっこうは4がつにはじめるの? なふだって なに?うわばきって なに? なんで がっこうにぷーるがあるの?スクール水着って? キャップをかぶるの? ぼうさいずきんって なに? したじきって なに? なんでこんなに たくさんのーとがあるの? しゅうじどうぐって なに? ピアニカってなに? ぞうきんてなに? そうじとうばんって なに? きゅうしょくとうばんって なに? たいいくずわりって なに?さかあがりって なに? とびばこって なに? なんで きいろいぼうし? しゅうだんとうこうって なに? ラインひきって なに? くみたいそうって なに? はちまきって なに? ぱんくいきょうそうって なに?らじおたいそうって なに?なんで せんせいはいつもじゃーじなの?」ここでおわらずに、このあとに、「なんで がっこうも きょうしつも こんなに ちがうんだろう? もしかして、もっとほかにも いろんな きょうしつが あるのかな? たとえば・・・」もおもしろい。日本の学校のおかしさは、海外の学校をみると、すぐ疑問になるが、ここまで、列挙されるとさらに、考えたくなってくる。面白い。
    (2023.1.16)

  5. 「<共生>から考える〜倫理学集中講義〜」川本隆史著、岩波現代文庫/学術459、岩波書店(ISBN978-4-00-600459-0, 2022.12.15 第1刷発行)
    出版情報・目次。 仮想的な一週間7回の講義と一回の補講という形式で、さまざまな見方を紹介しながら、共生を中心において考える倫理学講義である。いくつか背景があるが、著者から献本していただいた。倫理学も哲学も学問として学んだことはなかったが、共生という、わたしも若い頃からいろいろと考えてきたことばでもあり、考えながら、読むことができた。特に、本文最後の「補講 人間の権利の再定義」の最後に「さて『それで終わり?』と聞いてくる想像上の塾生がいます。(中略)『哲学を本当にやっているの?』との詰問にはこう応じておきましょう。『お前は自分の頭で考えていない』といわれれば、そうだと認めるしかありません。その上で『哲学ではない』と指弾する人に対しては、自分の知識や経験、生活感覚を吟味にさらし、『今とは違ったやり方で考える』(ミシェル・フーコー『快楽の活用』序文)企てという意味での《愛知の業》になら、私は携わっているつもりなのだ、と。」(153)失礼ながら、わたしの生き方も、聖書との向き合い方も、行動や、思考もこのようなものだと考えているので、すこし嬉しかった。以前は、同じ大学に勤めていたときもあったわけだが、いまは、お会いしてお話しする機会もないだろうが、いろいろと伺いたいことが、首をもたげてきたことは、確かである。
    以下は備忘録: (2023.1.29)

  6. 「この時のためにこそ〜若きフローレンス・ブースの物語 FOR SUCH A TIME, The story of the young Florence Booth」ジェンティ・フェアバンク著 by Lt. Colonel Jenty Fairbank, 張田和子訳 救世軍本営(ISBN978-4-87685-032-7, 2022.11.10 初版 第1刷発行)
    出版情報。救世軍の方から出来たてのものを頂いたが、やっと読むことができた。医師の家に生まれ、早くに母を亡くし、父にもなかなか救世軍に入ることを支持されず、苦しんだことも書かれている。救世軍の初代の指導者ウイリアム・ブースの長男ブラムエルと結婚し、第二代の指導者夫妻となった、フローレンス・ソーパー・ブースの前半生を、日記などを資料として紡いでいる。特に、人身売買などで、苦しんでいた女性を助け、教育をする施設をはじめ、家庭団の創立をするなど、身を粉にして奉仕した女性である。ジョン・ウエスレーのメソジストの流れが色濃く現れ、霊的体験から献身、家族も全員が献身していく姿勢など、時代的なものも感じ、本人も辛さを各所で表現しているが、その生身の人間の奉仕のこころを痛いほど感じることができたことは確かである。
    以下は備忘録: (2023.2.6)

  7. 「6カ国転校生ーナージャの発見 The Discoveries of Nadya」キリーロバ・ナージャ著 by Nadya Kirillova 集英社インターナショナル(ISBN978-4-7976-7413-2, 2022.7.10 第1刷発行)
    出版情報・概要・もくじより・著者略歴。ロシア(サンクトベッテルブルグ/ロシア語)小1(6歳)、日本(京都/日本語)年長(7歳)、イギリス(ケンブリッジ/英語)小3/前半(8歳)、フランス(パリ/フランス語)小3/後半(9歳)、日本(東京/日本語)小4(10歳)、アメリカ(ウィスコンシン州マディソン/英語)小5(11歳)、日本(東京/日本語)小6(12歳)、カナダ(モントリオール/英語・フランス語)中1・中2(13・14歳)、日本(札幌/日本語)中3(15歳)。これがナージャの6カ国転校ヒストリーとある。お父さんが、数学者、お母さんが、天文学者とあるので、わたしの知り合いでそれぞれの場所でしっているひともいるかもしれない。現在、児童養護施設に関わっており、特に、小学生、中学生を見ていることもあり、興味をもって読んだ。違いとその背景にある意味と、考え方を解き明かしているが、同時に、このなかで、ことばも、不自由な中、さまざまに学んでいく過程を想像してしまった。「電通アクティブラーニングこんなのどうだろう研究所」のメンバーで、コピーライターとして、世界的にもさまざまな賞を取っておられるが、その背景を描いているとも言える。「おわりに」を引用してみよう。どこの国がいちばんよかったですか?わたしにとっていちばんよく聞かれて、いちばん答えに困る質問が実はこれ。なぜなら、正解がないと思っているから。あるいは、かぞえきれないほどの正解があると言ってもいいかもしれない。筆記用具として、えんぴつがベストか?ペンがベストか?ということに絶対的な正解がないように、「親と一緒に登校する。ひとりで登校する。」「自己主張する、調和を大事にする」「7に横棒をつける、7に横棒をつけない」「計算機を使う、暗算をする」「カタチからはいる、目的からはいる」「自由にやる、ルールに沿ってやる」「個人プレーで戦う、チームプレーで戦う」・・・どちらが「正解」というわけではない。国によって先生の言うことも180度違うことを、何度も経験してきた。ずっと「正解」が変わり続ける環境の中で、「誰かの正解」は、必ずしも「自分の正解」ではないことにも気づいた。講演などで大人の統計を取れば、だいたい自由に見えるアメリカの学校が一番人気で、グループで学ぶイギリスの学校が2番手になる。でも、低学年のこどもに、なんと大人が選ばない日本の学校が一番人気!高学年になれば人気の学校はまた変わる。いつなぜこの違いがうまれるのかはまだ発見できていないけれど、一番人気が変わるのは考えてみれば当たり前。人見知りにとって、とにかく自己主張を求められる環境はつらいし、逆に自己主張が得意な子どもは、自分の意見を殺さないといけない環境につらさを感じるに違いない。褒められて伸びるタイプもいれば、プレッシャーがないと力を発揮できないタイプもいる。チームワークによって、飛躍的に活躍する子どもも、個人の方が能力を伸びるこどももいる。同じ家族でも、親にとってのベストと子どもにとってのベストは違うし、兄弟でもベストは異なる。同じ国の学校でも、今と30年前とでは違うところが必ずある。かつてのイギリスの教室が、今のアメリカの教室に、フランスの教室が今の日本の教室になっていたりする。読み書きができることが当たり前になれば、次に社会が必要とする能力を身につけられるように学び方がシフトする。だから、「絶対的な正解」をみんなでさがすのではなく、一人一人の「正解」をみんなでみつけていくしかないのだ。それが、6カ国転校生ナージャのいちばんの発見なのかもしれない。子どもが変われば、ベストは変わる。時代が変われば、ベストは変わる。目的が変われば、ベストは変わる。正解はない。違いがあるだけ。あなたにとってもベストはなんですか? *本書の第1章は電通総研「電通アクティブラーニングこんなのどうだろう研究所」掲載「ナージャの6カ国教育比較コラム」(2015.11.27〜2016.07.28)、第2章は、日経xwoman掲載「世界6カ国育ち&日本で働くナージャが教えるグローバルスキル」(2020.04.09〜10.06)を大幅に加筆修正し、構成し直したものです。以下追記:第2章大人になったナージャの5つの発見 ①「ふつう」が最大の個性だった!?「ふつう」を「個性」として考えるためのヒント 1. 意識して、違う「ふつう」の環境に身を置いてみる。2. 自分の「ふつう」に他の「ふつう」を少し混ぜてみる。3. どちらにとってもあたらしい「ふつう」が生まれる。4. みんながそれを「個性」として重宝するようになる。②苦手なことは克服しなくてもいい! わたしが見つけた「苦手」を克服しないで活躍する法則 1. 自分の「苦手」をしっかり把握する。2. 目の前にあるルールの抜け道を探す。3. 自分がこれならできるやりかたに変えてみる。4. 実行してみる。③人見知りでも大丈夫!しゃべらなくても大丈夫! 1. 客観的に人や状況を観察する。2. しゃべる前にしゃべる内容としゃべりかたを考える。3. こう言ったらどんな反応があるかとなあと予想もする。4. 返ってきた言葉を振り返って、次の発言を考える。④どんな場所にも必ずいいところがある! ⑤6カ国の先生からもらったステキなヒントたち。1. 「すべてに理由、そして面白さがある」ロシアの先生、2. 「分からないことがあるから、仲間がいる」イギリスの先生、3.「人生に完璧はなかなかない」フランスの先生、4.「わたしも、答えを知らない」アメリカの先生、5. 「目標を立てるのも、達成するのも自分だ」カナダの先生、6. 「前例を覆すからこそ、進化がある」日本の先生。
    (2023.3.24)(2回目:2023.3.28)

  8. 「ヒミツのひだりききクラブ レアキッズのための絵本 (レアキッズのための絵本) 」キリーロバ・ナージャ著、古谷萌・五十嵐淳子 (絵)、文響社(ISBN9784866514086, 2021.10.7 第1刷発行)
    出版情報・著者紹介。図書館で読んだ。世界の歴史上の左利きや、仲間がたくさんいることなどを紹介した後で、ここで知ったことは、ヒミツと書いている。正しさで人を変えていくのではなく、すばらしい仲間がたくさんいることと共に、自分の個性として、生きることだろうか。アプローチとしても、素晴らしいと思う。
    (2023.3.29)

  9. 「じゃがいもへんなの レアキッズのための絵本」キリーロバ・ナージャ著、古谷萌・五十嵐淳子 (絵)、文響社(ISBN9784866515496, 2022.12.8 第1刷発行)
    出版情報・著者紹介。「みぎききにはぜったいないしょ。」「右利きのみなさんは、この絵本を読む時、左利きになってみてください。鈴木福」図書館で読んだ。じゃがいもが南米からまずヨーロッパにもたらされた時、かなり嫌われたが、牢屋に入っていた博士と会い、世界中に広まっていたことを書いている。じゃがいも三兄弟のはなしとして、へんといわれて、嫌われてから、レアさで人気者になることが書かれている。「へん」が、すこし誇らしくなるかな。なかなかたいへんだなとも感じた。わがやのこどもたちは、みな同じ大学に入ったが、気に入った理由が「へんでいい大学」「へんなひとがたくさん」とのこと。実は、そんな大学が日本では、とてもレアなのだとちょっと寂しくなった。
    (2023.3.29)

  10. 「からあげビーチ レアキッズのための絵本」キリーロバ・ナージャ著、古谷萌・五十嵐淳子 (絵)、文響社(ISBN9784866513652, 2021.5.13 第1刷発行)
    出版情報・著者紹介。「みんな違ってあたりまえ、自分らしく生きよう。アレルギー、菜食主義? 親子で食の多様性を学べる本」とある。近くの図書館にもあるはずだったが見つけられず、少し離れた図書館で読んだ。からあげクンがビーチに行き、衣を脱ぐと、近くにさまざまなからあげが現れ、12歳でベジタリアンになったという、ナージャでも、食べられそうなからあげや、アレルギーなどさまざまな理由で、食べられない多種多様なからあげが、ころもの違いも含めて登場する。宗教、信条、体調などの多様さを包摂するメッセージが込められている。ただ、ヤム芋や、キャッサバしか食べられない人たちのことを思うと、ちょっと贅沢かなとも思ってしまった。多様さを包摂することは、豊かさと関連はあっても、ベクトルの方向はちがうことも確かだが。「レアキッズのための絵本」三冊を比較すると、難しいこともあるなと思わされた。 (2023.3.30)

  11. 「イノベーションするAI」武藤佳恭・宇田川誠著、春秋社(ISBN9784393350010, 2019.11.20 第1刷発行)
    出版情報。PowerShell: Enable-WindowsOptionalFeature -Online -FeatureName Microsoft-Windows-Subsystem-Linux で、Linux が使えるようになっていることも初めて知った。目次情報:序 科学とは脆弱で暫定的なもの 第1章 ブレークスルー、第2章 人工知能、第3章 セキュリティ、第4章 奇想天外な発想と常識のウソ、ホント、特別付録 スパコンをつくってみよう! 人工知能社会のこれからーあとがきに代えて。第1章3.GPU が壁を超えるが、内容的にも、話としてもよく書けていて興味を持った。"GPU parallel computing for machine learning in Python" を書いておられるので、ことばも筋もわかりやすいと感じた。 (2023.3.30)

  12. 「ニッポン未完の民主主義〜世界が驚く、日本の知られざる無意識と弱点」池上彰・佐藤優共著、中公新書ラクレ725 (ISBN978−4−12−150725−9、2021.04.10 初版 )
    出版情報 (2023.4.3)

  13. 「オープンダイアローグとは何か」斎藤環著+訳、医学書院(ISBN978-4-260-02403-7, 2015.7.1 第一版第一刷、2015.8.15 第3刷)
    出版情報・序文・目次・書評。以前から読みたいと願っていた本。背景には、人間の尊厳を大切にした、平板なダイアローグ(対話)を通した、相互理解があり、わたしが、テーマとしている、互いに愛し合うことの実践例とも取れる。それに、学問的な系譜もついているが、方法論としてのみ、受け入れるのであれば、おそらく、あまり効果は期待できないだろうとも思った。一人一人、尊厳を持った、存在として、対話を通して、信頼関係を築き、互いに愛し合うことを大切なものとして受け取る、その中で癒しが起こる。Iaomai からtherapeuoo。少しでも、進んでいけばと願う。セイックラ(J. Seikkula)氏の3本の論文([Open Dialogue Approach to Acute Psychosis: Its Poetics and Micropolitics],[Open Dialogue with Good and Poor Outcomes for Psychotic Crises: Examples from Families with Violence],[Healing Elements of Therapeutic Conversation: Dialogue as an Embodiment of Love])の訳を含み、最後に用語集も付いている。
    以下は備忘録: (2023.4.6)

  14. 「古代大和朝廷」宮崎市定著、筑摩叢書 327、筑摩書房(ISBN4-480-01327-X, 1988.09.22 初版第一刷発行)
    出版情報・目次。漢文などが難しく、完全には読み込めなかったが、良い本に出会ったと思う。日本古代史の問題を、東アジア史の研究者が、東洋史の観点から論じている。日本の歴史はあまりに、世界と切り離されていると感じていたが、せめて、中国や、朝鮮の歴史と関連づけたものが読みたいと思っていたので、適切だった。日本の中で受け入れられるのは、難しいのかもしれないが。
    以下は備忘録: (2023.4.12)

  15. 「真説 日本左翼史〜戦後左派の源流 1945-1960」池上彰・佐藤優共著、講談社現代新書2620、講談社(ISBN978-4-06-523534-8, 2021.06.20 初版第一刷発行, 2021年8月11日第4刷発行)
    出版情報・目次。自分の原点のようなものを考えた時、1969年10月13日に起こった高校での学園紛争(バリケード封鎖で授業がしばらくできなくなった)を外しては考えられない。とはいうものの、その背景や、左翼思想や源流などを、十分理解しているわけではない。この機会に、理解しておきたいと思い手に取った。この二人以外の見方もさまざまにあるように思うが、深さとさまざまな人々の絡み、歴史的な事件との関係に関しては、この二人によって語られる内容は十分に豊富だと感じた。わたしの知る限り三部作であるので、少しずつ、読み進めていきたい。ただし、あとがきに佐藤氏が書いている、今後の世の中の展望については、わたしの予想とは食い違う面が大きいとも感じた。もう少し、自分でも考え、言語化もしてみたいと思う。
    以下は備忘録: (2023.4.19)

  16. 「日本神話の世界」中西進著、ちくま学芸文庫、筑摩書房(ISBN978-4-480-09509-1, 2013.01.10 第一刷発行)
    出版情報・目次。)古事記についてほとんど知らないので、手に取ってみたが、最初に読む本ではないかもしれない。著者の博学はすばらしいが、あまりにさまざまな読み方があることしか理解できなかった。神話とはそのようなものなのかもしれない。かえってひとつの解釈に落ち着く方が危険なのかもしれない。
    以下は備忘録: (2023.4.21)

  17. 「絵で見るたのしい古典① 古事記・風土記」萩原昌好・野村昇司指導(ISBN4-05-104231-6, 1990.03.29 第1刷発行, 1993.05.12 第6刷発行)
    出版情報。)学研のサイトには、小1〜小6とある。まず、基本情報を得るには、ジュニア向けのものからはいるのがよいと思っているので、手に取った。もう少し、上のレベルが良いかもしれないが、それでも、知らないことがいくつも書かれてあった。小学生向けのものは、情報を限定して、バランスも取っているので、有用だと思う。本来は、目次情報があると良いと思い、紀伊國屋のサイトも見たが「絵で見てわかるはじめての古典 古事記・風土記・万葉集 (増補改訂版)」もあると書いてあったが、目次情報はなかった。備忘録の意味でも、目次情報を記する。 (2023.4.26)

  18. 「激動 日本左翼史〜学生運動と過激派 1960-1972」池上彰・佐藤優共著、講談社現代新書2643、講談社(ISBN978-4-06-526569-7, 2021.12.20 初版第一刷発行)
    出版情報・目次。三巻本の第二巻。わたしがまさに生きていた、そして、少し経験し、考えるきっかけとなった学園紛争の時代を描いている。佐藤優は1960年生まれで少しあとだが、池上彰は1950年生まれ、まさに東京大学と東京教育大学の入試がなかった年に、慶應義塾大学に入学している。学生運動に関わった若者が、本質的な問いと向き合っていたことと同時に、経験がない中で、実現性も持続性もなく、大衆から分離して過激化していく様子が vivid に描かれている。第三巻や、他の本に書かれているのかもしれないが、このときを踏まえた将来に向けての反省と展望そして激励が、次の世代になされないといけないと強く感じた。個人的には、知識が整理され、いま求めつつ歩んでいる道を歩み続けたいとは思ったが、余韻というより、すこし消化不良の面も感じた。著者二人の視点と語り口は、貴重であるが、もっといろいろな知識人の間で語られなければいけない話題だとも感じた。
    以下は備忘録: (2023.4.29)

  19. 「絵で読む日本の古典1 竹取物語」監修 田近洵一、ポプラ社(ISBN978-4-591-12805-3, 2012.03 第1刷発行, 2018.2 第6刷発行)
    出版情報目次情報。子供用の本で、日本の古典のさわりを知りたいと思い、「絵で見るたのしい古典」シリーズをまず手に取ったが、図書館で見て「絵で読む日本の古典」を手に取った。古文も少しだけ書かれていて、時代的なことの説明もあり、興味深い。監修が、小・中・高で教鞭の経験があると書かれている。それが、わかりやすさに反映しているようにも思う。ただ、この内容、レベルは楽しめるこどもは、あまり多くないように思う。個人的には、興味を持てる編集だったので、他の本も読んでみたい。常識としても知っておきたい内容である。
    (2023.5.5)

  20. 「漂流 日本左翼史〜理想なき左派の混迷 1972-2022」池上彰・佐藤優共著、講談社現代新書2667、講談社(ISBN978-4-06-529012-5, 2022.7.20 初版第一刷発行)
    出版情報・目次。三巻本の第三巻。左派が衰退していった過程を追っている。最初の二巻に比較すると期間が長い。私は同時代を生きてきたわけだが、背後にあることを理解するのは難しかった。評価も難しいのだろう。いずれにしても、冷戦の終結、ソビエト連邦崩壊は、日本の左派にとって、スターリン批判をどう扱うか以上に決定的であることは理解できた。しかし、その背後で、社会の構造が変化していることも事実で、この本で全体を捉えることは無理だろうとも思った。マル系経済学についても学んでみたい。経済学は、科学にはなっていないのだろうか。それとも、欧米の発展と経緯を日本に適用しようとしたところに無理があったのか。中国については、十分に述べられていない。日本の左翼を考える意味で、中国、北朝鮮、ベトナムなどについても、理解すべきだと感じた。
    以下は備忘録: (2023.5.5)

  21. 「絵で読む日本の古典2 源氏物語」監修 田近洵一、ポプラ社(ISBN978-4-591-12806-0, 2012.03 第1刷発行, 2014.7 第3刷発行)
    出版情報目次情報箱入りの全巻・現代語訳をいただいているので、いずれは読みたいと思っているが、あまりに知識がないので、まずは、子供用の本で、日本の古典のさわりを知りたいと思い「絵で読む日本の古典」で読んだ。人間関係も複雑で、なかなか名前も覚えられないので、まずは、ざっと読むことができたのは、よかった。表現の美しさなども、多少修正された原文もはいっているので、雰囲気を味わえたのではないかと思う。近いうちに、上記、現代語訳を読んでみたい。
    (2023.5.10)

  22. 「日本人は知らなすぎる 聖書の常識」山本七平著、講談社(1980.10.01 第一刷発行)
    出版社情報。父が読んでいた本を書棚から取り出して読んでみることにした。著者の山本七平は父の2歳年下。ほぼ同じ時代を生きたのだろう。ユダヤ教について詳しく、聖書についての本としては、学者・研究者が書いたものとは異なり、一つ一つに根拠をつけることはしていないが、全体として十分な質の本に出来上がっていると思う。基本的な理解については、わたしの理解とあまり変わらないが、わたしが知らなかった、または、考えていなかった視点も多く含まれる。新約聖書について、イエス、パウロ、ヨハネと書きながら、ヨハネについての記述は非常に短く、十分な考察がされているとは言えない。たくさん父が引いたと思われる線を眺めながら、このようなトピックについて突っ込んだ話がしたかったと思った。
    以下は備忘録: (2023.5.15)

  23. 「絵で読む日本の古典3 枕草子・徒然草」監修 田近洵一、ポプラ社(ISBN978-4-591-12807-7, 2012.03 第1刷発行, 2017.2 第4刷発行)
    出版情報目次情報。シリーズ第3冊目である。古文も少しだけ書かれていて、入門としてはとても良い。小学校の頃(中学でも良いが)このぐらいに親しんでおけば、わたしには、苦痛でしかなかった高校の古典も楽しかったかもしれない。随筆の種類だろうか、有名な二書が収められている。枕草子は、いくつかの本で読んでいたので、良かったが、明らかに、徒然草は読みやすい。おそらく教育課程でもそうしているように、徒然草あたりから読んでいくのが良いのかもしれない。機会があれば、次のレベルのものを読んでみたい。当時の人の考え方、心も伝わってきて、簡単さも手伝って余裕があったせいか、繰り返し味わうこともでき、絵にも助けられ、とても良かった。適切なレベルから、順に学んでいくことは大切であると感じた。
    (2023.5.16)

  24. 「絵で読む日本の古典4 平家物語」監修 田近洵一、ポプラ社(ISBN978-4-591-12808-4, 2012.03 第1刷発行, 2018.5 第4刷発行)
    出版情報目次情報。シリーズ第4冊目の、軍記物語である。小学生の頃、源義経が好きだった時もあるが、その背景には、平家物語の記述などがあるのだろう。琵琶法師が語っていたからもあるだろうが、いくつも異なる写本があり、著者も明確にはわからないとのこと。それだけ庶民に浸透していった物語なのかもしれない。他の文書で歴史を振り返るほどの興味はないが、文体もきびきびしていて、擬態語も多く、読んでいても、聞いていたもリズムがよいものだったのだろう。それも、受け継がれてきた理由だと感じた。
    (2023.5.22)

  25. 「サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福」ユヴァル・ノア・ハラリ(Yuval Noah Harari)著、柴田裕之訳、河出書房新社(ISBN978-4-309-22671-2, 2016.9.30 初版発行, 2018.9.8 57刷発行)
    出版情報・目次。以前から読みたかったが、後回しになっていた。知人が感動していたので、急いで手に取ることにした。先史時代と言われるときから、歴史をどう見るか、その基本的な考え方を問うた書で、おそらく、あまり類を見ないのだろう。鋭い切り口で、よくまとまっている。ただ、個人的には、高校生の頃から、普遍性を求め、誰でも受け入れられるものをもとめて学んできたこともあり、個々の歴史的事実で私が知らなかったり、ハラリのようには、見ていなかったことは多いが、とくに驚きはなかった。普遍性が備わっているものは、ほとんどない。それを、ハラリは虚構ということばで説明しようとしているが。共同主観現実をどう捉えるかはわたしもよく理解できていなかったので、思考の助けにはなったと思う。知的に高い人は、複雑なものを極度に単純化することなく、ひとよりは多くの尺度で見ることができるということのように思う。むろん、そうであっても、全体の一部の視点でしかなく、ひとりのひとには見えないものばかりであると思うが。下巻を楽しみにしている。
    以下は備忘録: (2023.5.22)

  26. 「絵で読む日本の古典5 おくのほそ道」監修 田近洵一、ポプラ社(ISBN978-4-591-12809-1, 2012.03 第1刷発行, 2018.2 第4刷発行)
    出版情報目次情報。シリーズ第5冊目の、紀行文である。子供の頃東北地方で育ったこともあり、みにのくには愛着を感じている。東北地方のどこに行っても、松尾芭蕉(本名宗房)の碑があると思っていたが、旅路を見ると、岩手県、秋田県には、ほんの少ししか入らず、北陸路を折り返していたことを知り、ちょっと驚いた。同行した、弟子の河合曽良の日記も残っているとか。最後に、与謝蕪村、小林一茶の句も並べてあり、時代的な関係も知らなかったので、復習になった。ただ、一定度以上は、なかなか俳句の美しさは、受け取れなかった。五七五の中に、季語や、技巧的なものも盛り込むところに、やはり無理があるように思う。
    (2023.5.28)

  27. 「サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福」ユヴァル・ノア・ハラリ(Yuval Noah Harari)著、柴田裕之訳、河出書房新社(ISBN978-4-309-22672-9, 2016.9.30 初版発行, 2017.2.4 16刷発行)
    出版情報・目次。いくつかコメントはあるが、基本的に、上は、整理できていると思うことはあったが、そこまでの刺激は受けなかったが、下は、考えさせられることが多かった。将来に関わることが多いからだろう。根本的に、わたしがハラリと異なるのは、これだけの思考力があっても、人の知りうる範囲は、ほんとうに限られた部分だけだということ。さらに、古代の人も含めて、過去のひとたちや、世界の様々な人とも、語り合うこと、互いに慈しみ合い、共に生きていることを実感し、大切にしていきたいと願う強さだろうか。最後に「ひよっとすると、私たちが直面している真の疑問は、『私たちは何になりたいのか?』ではなく、『私たちは何を望みたいのか』かもしれない。この疑問に思わず頭を抱えない人は、おそらくまだ、それについて十分考えていないのだろう。」(p.263)とあるが、まさに、このことをわたしはずっと考えてきた。ひとの幸せがなにであるかは、わからないが。このあとの「ホモ・デウス」も近いうちに読んでみたい。
    以下は備忘録: (2023.5.30)

  28. 「ユダヤ教の歴史」アンドレ・シュラキ、増田治子訳、白水社(ISBN4-560-05745-1, 1993.08.10 印刷, 1993.8.20 発行)
    出版情報 Abdre Chouraqui, Histoire du judaisme, Que sais-je? の訳である。文庫クセジュから出版されている、『イスラエル』、『ユダヤ思想』と合わせた三部作になっているとのことである。正直、これだけ読んだだけではよくわからない。少し、古いこともあるだろうが、書き方もあるように思う。また、歴史の評価をしないことも、実際に起こったことがどのようなことかを判断しにくい理由なのかなと思う。父の本棚にあった一冊で、たくさん線が引いてあった。このように、父の本棚の本を読んでから、語ることができるとよかったのだが。シュラキは、アルジェリアで生まれ、フランスで教育を受け、エルサレムに居を定めたユダヤ人で、キリスト教、イスラム教との融和も目指している。
    以下は備忘録: (2023.6.7)

  29. 「世界の歴史5 ローマ帝国とキリスト教」弓削達著、河出書房新社(ISBN4-309-47164-1, 1999.07.25 初版印刷, 1999.8.04 初版発行)
    出版情報目次情報初期のキリスト教とローマ帝国との関係と背景が丁寧に書かれている。ローマ帝国の歴史としても、キリト教とどう向き合うかが成熟のためにも、重要な課題であったことがわかる。キリスト教側でも、護教論などが整備されるなど、どのように迫害に対するかを通して、神学が整備されていったこともある。ある程度の必然があるとともに、どちらにとっても、新たな問題を抱えたことも確かであるように思われる。これも父の書棚にあった本だが、特徴がある本だけに、論理のバランスが取れているか少し気になるが、ローマの歴史も含め、基本的なことは、十分に書かれているので、ひとつの良い入門書だと思われる。
    以下は備忘録: (2023.6.21)

  30. 「預言者」カリール・ジブラン著、佐久間彪訳、至光社(1990年4月23日第一刷)
    出版情報。内容紹介には「レバノンの詩人・哲学者・画家である著者が人間の普遍的テーマ…愛、労働、喜びと悲しみ、友情など26項目について深く語りかけている。小型携帯版」とある。瞑想本だろうか。熱心なカトリック信者の方から頂いた本の中にあり、手にとって読んだ。扉には、訳者の署名もある。表紙裏には、曽野綾子の紹介文が付されている。「この本は 神様とのあいだに ひそかなる 自分の道をつくることを気づかせてくれる。」カリール・ジブラン(Kahlil Gibran)は、1883年レバノンの山間部、Bcharre村に生まれる。ボストン、レバノン、パリで活動し、1931年、ニューヨークで死去。基本的には、アルムスタファが語る形式で、後半は、アルムスタファに問い、答える形式になっている。抜粋してみる。
    以下は備忘録: (2023.7.1)

  31. 「あかちゃんはこうしてできる」えとぶん P.H. クヌートセン、やく きたざわきょうこ、だれもおしえなかったえほんしりーず、アーニ出版(ISBN4-87001-011-9, 1992.5 初版発行, 1992年7月15日第17刷)
    国立国会図書館。我が家にあったものを、6歳の孫(女の子)が持ってきたので、2回読んで聞かせた。ちょっとニヤッとしたが、しっかり、聞いていた。最後は「こうして、あかちゃんは、うまれるんだ。もし、なにかわからないことがあったら、おとうさんおかあさんに、きいてごらん。ほかにだれか、すきなおとながいたら、そのひとに、きいてもいいんだよ。」と閉じられている。セックスがそのまま描写されているが、このようなものを教えない、教えられない性教育には、問題を感じる。ここにとどまっていてはいけないが。しっかりと議論ができる、基盤を築くのは急務であると同時に、日本では難しいのかもしれないと再確認した。
    (2023.7.2)

  32. 「動物農園 Animal Farm」ジョージ・オーウェル(George Orwell)著、吉田健一訳、ヒグチユウコ画、中央公論新社(ISBN978-4-12-005566-9, 2022.9.25 初版発行)
    出版社情報紀伊国屋書店サイト。知人からこの内容について書いた記事を送っていただき、返信のためにも、読まなければと思い、最も、最近出版されたものを図書館で借りた。出版社のページに「非人間的な政治圧力を寓話的に批判したジョージ・オーウェルの世紀を超えた衝撃作。発掘された名訳を、描き下ろし装画とともに。」とある。訳者は、吉田茂元首相の長男で、1966年が邦訳の初出のようである。オーウェル,ジョージについては「本名エリック・アーサー・ブレア。1903年インドに生まれ、イギリスで育つ。イートン校を卒業後、警察官としてビルマで勤務。33年からルポルタージュ『パリ・ロンドン放浪記』。小説『ビルマの日々』を発表。36年にはスペイン内乱の国際義勇軍に参加し、38年『カタロニア讃歌』を出版。第二次世界大戦中はBBC放送に勤務、『トリビューン』紙の編集主任を務めた。45年に小説『動物農園』がベストセラーとなる。46年に移り住んだスコットランドのジュラ島で未来小説『一九八四』を書き上げ、50年に肺結核のため死去」とある。スターリンによる支配を描いたともされ、アメリカで反共宣伝に使われたようだが、読んでみると、特定の国の状態を想定するのは、読み方が狭いと感じた。まさに、寓話で、いろいろな読み方があるのだろうが、個人的には、ひとは、知識も乏しいのに、知識があるように思い込んだり、判断力も十分にないのに、それで良いことにしたりする。脳の省エネ活動と戦わなければ、いけないと感じるとともに、どうすればよいかは、深い謎だと感じた。
    (2023.7.2)

  33. 「絶望名人カフカの人生論」フランツ・カフカ Franz Kafka、頭木弘樹編訳、飛鳥新社(ISBN978-4-86410-115-8, 2011.11.3 第1刷発行)
    出版社情報新潮社文庫としてでています。天声人語に載っていたのと、ちょうど、カフカが好きだという学生の推薦状を書いたり、その学生をドイツに住んでおられる、以前、わたしと同じ大学でカフカについて教えておられた先生を紹介して、お会いできたとメッセージをもらったことも、思い出して、手に取った。「変身」は読んだことはあったが、感激もしなかった。20世紀最大の文豪というひともいるようなので、再挑戦である。扉裏には「すべてお終いのように見えるときでも、まだまだ新しい力が湧き出てくる。それこそ、おまえが生きている証なのだ。」第1章の初めには「将来に向かって歩くことは、ぼくにはできません。将来に向かってつまずくこと、これはできます。いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです。ーフェリーツェへの手紙ー」これが、天声人語で引用していたものだと思うが、恋人へのラブレターからの引用だというかおどろかされる。この女性とは二度婚約するが、結局、二度とも、カフカから婚約破棄、二度目は、結核を患っていたときで、女性は、その看護もするというが結局、結婚できずに別れる。表題の絶望名人ということばは、よく表現していると思う。「ぼくはいつだって、決してなまけ者ではなかったと思うのですが、何かしようにも、これまではやることがなかったのです。そして、生きがいを感じたことでは、非難され、けなされ、叩きのめされました。どこかに逃げようにも、それはぼくにとって、全力を尽くしても、とうてい達成できないことでした。ー父への手紙ー」父への長大な手紙(タイプ原稿で45ページ)の一部だそうである。「たとえば、ここにAとBの二人がいて、Aは階段を一気に五段上がっていくのに、B は一段しか上がれません。しかし、B にとってのその一段は、A の五段に相当するのです。A はその五段だけでなく、さらに、100段、1000段と着実に上がっていくでしょう。その間に、通過した階段の一段一段は、彼にとってはたいしたことではありません。しかし、B にとって、その一段は、人生で最初の、絶壁のような、全力を尽くしても登り切ることができない階段です。乗り越えられないものはもちろん、そもそもとりつくことさえ不可能なのです。ー父への手紙ー」「人間の根本的な弱さは、勝利を手にできないことではなく、せっかく手にした勝利を、活用できないことである。ー断片ー」「ずいぶん遠くまで歩きました。5時間ほど、ひとりで。それでも孤独さがたりない。まったく人通りのない谷間なのですが、それでも寂しさが足りない。ーフェリーツェへの手紙ー」「死にたいという願望がある。そういうとき、この人生は耐え難く、別の人生は手が届かないように見える。いやでたまらない古い独房から、いずれイヤになるに決まっている新しい独房へ、なんとか移してほしいと懇願する。ー罪、苦悩、希望、真実の道についての考察ー」最初の12の中から選んだ。まだまだ引用したいがこのぐらいにしておく。頭木氏がひとことずつコメントしているが、そのいくつかは、こころに響くものだった。カフカをよく知っているものだけが、鑑賞できるのかもしれない。最後に「まるで二人の子供がふざけ合っているようです。一人が友達の手をきつく握りながら、『さあ行けよ。なぜ行かないんだ?』とからかっているのに似ています。もちろん、ぼくとおとうさんの場合には、あなたの『行けよ』という命令は、真剣なものですし、本心です。でも、あなたは、以前から、ご自分では、それと知らずに、ぼくを引き留め、押さえつけてこられたのです。父親という存在の重みによって。ー父への手紙ー」「ぼくは同級生の間では馬鹿でとおっていた。何人かの教師からは、劣等生と決めつけられ、両親とぼくは何度も面と向かってその判定をくだされた。極端な判定を下すことで、人を支配したような気になる連中なのだ。馬鹿だという評判は、みんなからそいう信じられ、証拠まで取り揃えられていた。これには、腹が立ち、泣きもした。自信を失い、将来にも絶望した。そのときのぼくは、舞台の上で立ちすくんでしまった俳優のようだった。ー断片ー」頭木さんの結びのことば「生きることが苦しくて仕方がない時、気持ちが落ち込んで仕方がない時、ポジティブになんてとてもなれないとき、死にたいとおもったとき、ぜひこの本を開いてみていただければと思います。カフカのネガティブな言葉たちは、意外にもあなたに力を与えてくれるはずです。」本当にそう思う。最後にとして「ぼくの本があなたの親愛なる手にあることは、ぼくにとって、とても幸福なことです。ーカフカー」とある。良い本に出会うことができたと思う。
    (2023.7.19)

  34. 「阿Q正伝・故郷」魯迅作、小田嶽夫訳、偕成社文庫4067(ISBN4-03-850670-3,1990.6 初版第1刷発行)
    紀伊國屋書店による書誌情報「思うに、希望というものは、もともとあるというものでもないが、ないというものでもない。ちょうど地上の道のようなものだ。じっさい地上にはもともと道はないのだが、歩く人がおおくなれば、しぜんに道になるのだ(「故郷」より)。」(表紙裏)中国人の知人の話の中に出てきた。しっかりと読んだ記憶になかったので、近くの図書館にあったものをすぐ借りて読むことにした。阿Q正伝・小さなできごと・祝福・藤野先生・阿長と『山海経』・故郷、訳注・解説・年譜と収録されている。最初は、すこし苦痛ですらあったが、少しずつ背景を理解すると、訴えてくるものの鋭さに驚かされるようになった。いままでに、ほとんど読んだことがない種類の本だった。その意味でも、解説が秀逸である。魯迅は仙台の医学専門学校(現在の東北大学医学部)に留学中(解剖学の藤野先生にもここで会っているようだ)の回想が書かれている。「ある日のこと、画面にとつぜんひとりの彼の同胞の姿がうつり出てきた。その同胞は日本軍にひったてられ、いましも銃殺されるところであった。ロシアのスパイになっていたのがわかって、捕まったものらしかった。ところが、そのほかにもたくさんの同胞の姿があった。彼らはその銃殺の見物人であった。受刑者も見物人もみなりっぱな体格をしていた。銃殺は、いままさに行われようとしている。で、生徒たちは拍手し、歓呼した。が、彼だけはひとり無限の苦痛をおぼえた。同胞が銃殺されるためだけでなく、見物の同胞が、嬉々として楽しんでいるさまが、たまらなく悲しかったのである。この瞬間をさかいにして、魯迅の、医学を勉強しようという気持ちは、急激に衰えてきた。彼は、祖国の同胞に対し、新しい医学でいかにその身体を強壮にし、寿命を長くしても、彼らの精神がいまのままでいるならば、中国はちっともよくならない、ということを深く考えた。彼らの精神を改革することこそが、急務だと考えられた。それではその精神を改革するには?それには、文学の力にたよるしかないーというのが彼の結論であった。彼は東京へもどって文学運動を起こすことを決意した。」(p.210)風刺的とともに、象徴的な描き方。おそらく、日本にも、同様の文学があるのだろう。ここまで痛烈かどうかは不明だが。
    (2023.7.23)

  35. 「源氏物語の楽しみ方」林望、祥伝社新書618(ISBN978-4-396-11618-7, 2020.12.10 初版第1刷発行)
    出版社情報紀伊國屋書店による書誌情報。いずれは、源氏物語の現代訳を読みたいと思っているので、準備として、まずは、「絵で読む日本の古典2 源氏物語」を読み、次に、「謹訳 源氏物語」の著者である、林望氏の本を手に取った。リンクをつけた書誌情報からも窺い知ることができるが、トピックごとに、源氏物語の面白さ、深さ、女性視点、男性視点などについても、語られ、引き込まれて読んだ。まだ、原文を味わう力はないが、なぜ、源氏物語が素晴らしいとされるかの一端は、受け取ることができたと思う。それは、何よりも、自分が、多くの経験をして、いわゆる、おとなになってきたからだろう。単に、林望さんが源氏物語に魅せられているということだけでなく、その魅力が十分に伝わるように書かれている。特に、紫上を中心に置いた全体解釈は、優れていると思う。少し準備ができたと思うので、次には、いただいた、現代訳を読み、できればそのあとに、「謹訳 源氏物語」も読んでみたい。おそらく、女性視点、男性視点の微妙な違いも訳に現れるのではないかと思う。著者も書いているが、高校生のころは、技術的な解説でなかなか楽しめなかったり、大学時代は、すばらしい講義であっても、後になって、理解できたことが多かったことなども書かれていた。わたしは、古典は、まったく理解できなかったが、日本古典の世界に、大人になって、ほんのすこし、近づくことができたと感じるとともに、高校の教科書に含まれていて、強制的に、読まされることには、今も、違和感を感じる。高校の教科書の数学も同様にことが非常い多いと思うが。
    (2023.8.4)

  36. 「君たちはどう生きるか」吉野源三郎著、岩波文庫 青158-1(ISBN4-00-331581-2, 1982.11.16 初版第1刷発行, 2011.11.15 第66刷発行)
    出版社情報紀伊國屋書店による書誌情報・目次。以前から少し気になっており、最近、宮崎駿監督のジブリのアニメも公開されたと聞いて、家にあったこともあり読んでみた。丸山眞男による「『君たちはどう生きるか』をめぐる回想」が付いている。ほぼ読み終わる頃、アニメ映画も見る機会があった。途中に、この本が登場するが、内容的には、関連しているわけではない。しかし、ある種の、オマージュ(hommage:芸術や文学において、尊敬する作家や作品に影響を受け、似た作品を創作すること、またその創作物)だろうか。本書では、倫理的な点を社会科学的背景のもとでおじさんが、中一の少年に語る形式が取られているが、アニメでは、それらを一切廃して、危害を加えようとした相手とも、最後は友となることだけを、表現していた。岩波文庫版は、1939年に書かれた初版に基づいており、時代的に、戦中を背景としているため(新版では、設定が変えられているとのこと)このような形になったのかもしれないと思うが、少し、違和感を感じる面はあった。物語仕立てと、おじさんノートで、倫理的な面を語るという、形式としては、よくできていると思う。
    以下は備忘録: (2023.8.14)

  37. 「また会う日まで」池澤夏樹著、朝日新聞出版(ISBN978-4-02-2518972, 2023.3.30 第1刷発行)
    出版社情報紀伊國屋書店による書誌情報・目次。内容紹介:海軍軍人、天文学者、クリスチャンとして、戦前、戦中、戦後を生きた秋吉利雄。この3つの資質はどのように混じり合い、たたかったのか。史実を融合した歴史小説。朝日新聞連載を加筆修正し単行本化。(728ページ) 新聞連載のかなり初期のころから、毎日楽しみに読んでいたが、単行本にするにあたり、歴史的な資料も多く含まれ、改訂がなされているようだ。たんたんと進む日常ではあるが、キリスト者、科学者、軍人として生きる、主人公の葛藤と誠実さが丁寧に描かれている。むろん、批判をすることも可能だが、自分がそこに生きていたらと思うと、考えさせられることが多かった。小説ではなく、実際のひとりのひとの生き様が描かれているが、一級の歴史資料であると思う。M 氏が生きていたら、と感じる。それを、M 氏だけに頼ったところに、日本の脆弱性があるとも言える。
    以下は、備忘録。 (2023.8.20)

  38. 「漫画 君たちはどう生きるか」吉野源三郎(原作)/羽賀翔一(漫画)、マガジンハウス(ISBN978-4-8387-29470, 2017.8.24 第1刷発行)
    出版社情報紀伊國屋書店による書誌情報。「君たちはどう生きるか」の漫画版ではあるが、わたしが読んだ初版を基盤としている岩波文庫とはかなり異なっている。おなじマガジンハウスから「君たちはどう生きるか」も出版されているので、そちらとは合っているのかもしれない。漫画がわかりやすく挿入されているが、同時に、おじさんノートなどは、そのままコラムのような形で、挿入されている。いくつかの場面が、削除されるなど、整理されている。順番も入れ変わっている部分もあるが、善悪はなんとも言えない。これで読む人が増えることは良いことなのだろう。かならずしも、同意できない部分は多く、特に、自由意志に強く依存する部分は疑問を感じるが、時代的なものもあるのだろう。わたしも同じように「君たちはどう生きるか」と問う物語を書くことを求められているのかもしれない。
    (2023.8.20)

  39. 「(Mary)マリア キリストにおける恵みと希望」聖公会ーローマ・カトリック教会国際委員会(ARCIC)、聖公会ーローマ・カトリック合同委員会訳、教文館(ISBN978-4-7642-6426-7, 2007.12.4 初版発行)
    出版社情報。マリアについて、特に「無原罪の御宿り・被昇天」については、ことばを聞いたことがあるだけで、真剣に考えてみることがなかった。公式に教理として持つカトリックと、教義としてはもたない、聖公会が、第二バチカン公会議のあとの二教派間対話の一貫として、対話をすすめた成果物である。教義の背景も理解でき、支持はしなくても、やはりこのような対話の営みが大切であると思った。中心部分としてシアトル声明としてまとめられている。序論のあとは、以下の構造になっている。A. 聖書の中のマリア、B. キリスト教の伝統におけるマリア、C. 恵みと希望の構図におけるマリア、D. 教会生活におけるマリア。そして、結論。プロテスタントは、積極的ではないが、次のようにも書かれていた。「2005年3月21日付の週刊誌『タイム』はマリアの特集を組んでいた。『キリスト教のすべての教派がイエスの母を崇敬する根拠を見出しつつある』とその見出しは述べている。マリアはイエスの母であるのにプロテスタント教会ではこれまで説教で取り上げられず、信者に意識されなかったが、特にバプテスト系やペンテコステ系の牧師たちはイエスの母マリアのキリスト教信仰にとっての重要性を発見し、教会堂の中にマリア像を置く者も出てきたことをこの特集で書いた記者はのべていた。ルター(1483-1546年)、カルヴァン(1509-60)、英国の宗教改革者たちは、キリスト教伝統を背景にし、生きていたから、マリアに対する過度の信心は排斥したが、マリアに対する崇敬の念をもっていたことはよく知られている。しかし、時代が経っていくにしたがって、イエスの母マリアはプロテスタント信者の意識に上らないようになっていった。(高柳俊一)」AIRCICの「教会における権威II」30 の合意事項。1. マリアの役割に関するいかなる解釈も、キリストが唯一の仲介者であることを不明瞭にしてはならない。2. マリアについてのいかなる考察も、キリストと教会に関する教理と結ばれていなければならない。3. われわれは祝福されたおとめマリアを「テオトコス」、受肉した神の母と認め、マリアの祝日を守り、諸聖人の中でマリアに栄誉を記する。4. マリアは恵によって、われわれの贖い主の母となるために準備された。マリア自身、この贖い主によって贖われ、栄光に迎え入れられた。5. マリアは教会を表す預言者的な姿であるとみなしうる。
    (2023.8.23)

  40. 「ひきこもり文化論」斉藤環著、ちくま学芸文庫(ISBN978-4-480-09683-8, 2016.4.10 第一刷発行)
    出版社情報。ひきこもりについていつか勉強してみたいと思ったので、手に取った。この前に書かれた「社会的ひきこもり」を先に読んだ方が良かったかもしれない。「ひきこもり:病気以外の理由で、半年間、所属や対人関係をもてなかったらひきこもり」の両義性(病気ではない・治療の必要性)は理解できる。ラカン研究者ということもあり、理論的な解説も深いが、正直、当を得ているかどうかは不明である。不登校や、ひきこもりは、現象であり、すべて異なるというのは、拙速であったとしても、心理学的な、分析が、どの程度正確なのかは、わからない。著者は、患者と向き合いながら、ある意味では、走りながら考えていることも自認しているので、批判はしないが。個人的には、もっとゆっくり考えたいと思わされた。
    以下は備忘録: (2023.8.29)

  41. 「世界から戦争がなくならない本当の理由」池上彰、祥伝社新書578(ISBN978-4-396-11578-4, 2019.8.10 初版第1刷発行)
    紀伊國屋書店による書誌情報。様々な番組で、非常に分かりやすく、ニュースなどについて語る著者が、この問題についてどのように語るか興味をもって手に取った。後半、少し、様々な複雑な要素があることは、語っているが、ほとんど、外交史の観点から表題について振り返っている。テレビなどでは、かなり抑制的に話しているが、この本の中では、あまり、抑制的ではなく、かなり断定的に書かれていることもあり、読者は、この著者がこのように書いているということで、単純化バイアスに陥りはしないかと心配になった。著者は、わたしより、三歳年上であるが、ほぼ同時代を生きてきたこともあり、書かれている内容については、90% 以上知識としては、わたしも持っている基本的な事項であるように感じた。むろん、要約の仕方は、秀逸。著者が伝えたいのは、「主体的に考えなさい」ということのようだ。「日本に主体性がなかったから、いろいろなことがギクシャクしているのです。」(p.72)「一番問題なのは、そうやって、アメリカに振り回されているうちに、日本がますます物事を主体的に決められなくなっていることではないでしょうか。」(p.85)それは、戦後の当初は、占領されており、当時は、世界のGDPの50% がアメリカを占めるような時代、そのあとも、日本を加えれば、50% という時代が続いた中では、政治家も国民も、主体的には考えず、怠慢になったことは、仕方がなかったなと個人的には、考えている。現在は、世界の状況は変化しており、まさに、いま、主体的に取り組まなければいけない時期に来ていることも確かだが。そのような教育をしてこなかったつけがあるということだろう。
    以下は備忘録: (2023.9.3)

  42. 「経済学・哲学草稿」マルクス Karl Marx 著、長谷川宏 訳 、光文社古典新訳文庫(ISBN978-4-334-75206-4, 2010.6.20 初版第1刷発行)
    出版社情報紀伊國屋書店による書誌情報。共産主義の考え方、歴史を学びたいと思い、どこから読むか迷っているときに、手にした。マルクスにしても、歴史的にどのような位置にいたのかも知らなかったので、その意味では良かったが、訳者が「初期マルクスの著作は、完成稿・未定稿を問わず、一様に、『心あまりて、ことばたらず』といったところがあるのだ。」(p.294)と書くのが当たっているのだろう。正直、論理が先に進まず、明確に伝えようとする意思も感じられず、読みにくかった。ただ、三つの草稿を中心としているが、ほとんど、アダム・スミス、セイ、リカード、ジェームス・ミル、シュルツなど、産業革命後の資本主義社会を分析する「国民経済学」の論客からの批判的引用がすべてであることをみても、それらを背景に、少しずつ、賃金、資本の利潤、地代、疎外された労働、そして、私有財産と労働の関係に向かっていったことはある程度理解できた。使用されている用語の「疎外」「外化」がなかなかしっくりと理解できないでいたが、訳者の解説で丁寧に説明されており、ある程度理解できた。こちらを先に読んでおいたほうが良かった。後半には、社会との関係や、文学からの示唆などもあり、興味深いが、どの程度、これらが「資本論」に結実していったのかは、かなり学ばないとわからないだろう。単に、印象だが、本質を理解してその矛盾をつく語り口は、60年代、70年代の日本の論客、そして、それ以後の、社会学に通じるものも感じる。単純化バイアスを感じるが、時代性もあるように思った。マルクスの生きた時代性、ドイツという地の背景もあるのだろう。
    以下は備忘録: (2023.9.14)

  43. 「聖トマス・アクィナス」G.K.チェスタトン著, 生地竹郎 訳、ちくま学芸文庫文庫(ISBN978-4-480-51202-4, 2023.8.10 第1刷発行)
    出版社情報無類のトマス入門:生地竹郎訳『聖トマス・アクィナス』より。トマス・アクィナスのような、スコラ哲学、スコラ神学者の限界や、そこからの反動としての、宗教改革の流れの中で生きてきたので、まずは、トマス・アクィナスについて、基本的なことを理解したいと思い、「これまで聖トマスについて書かれた最善の書物」(p.251)などの宣伝文句に引かれて手に取った。正直に言うと、わたしにとっては、最善な書物ではなかったと思う。カトリックの背景で、「神学大全」についての、親近感がまずはないと、理解できないと思った。記述が具体性にかけている。それこそが本書の特徴で、全体を十分理解できているひとにとっては、ピンとくるものが多いのだろうが。どうだろうか。いつか、また、ここに戻ってくることができるのだろうか。
    以下は備忘録: (2023.9.24)

  44. 「不登校・ひきこもり急増ーコロナショックの支援の現場から」杉浦孝宣✕NPO法人高卒支援会共著、光文社新書 1170(ISBN978-4-334-045777-7, 2021.11.20 第1刷発行)
    出版社情報・目次。不登校・引きこもり急増とあるが、不登校を引きこもり現象の一部とする捉え方もあるものの、基本的に、本書で扱っているのは、不登校についてである。杉浦氏以外に、現在、NPO法人高校支援会の理事長の、竹村聡志などが語る具体事例が多い。巻末には、高卒支援会のアウトリーチ支援実例(2017年度以降)ひきこもりのステージの状況による分類と、2017年度から2021年度にかけての支援事例をケースごとに番号を振り、相談開始年月日、学年/年齢、ステージ、支援期間、結果、進路の表が含まれている。2017年度、成功8、失敗1、2018年度、成功6,失敗1,2019年度、成功14、失敗2、2020年度、成功5、失敗2、2021年度、成功2 の事例が書かれている。期間は長くても1年。コロナ禍における、欠席がカウントされなくなったり、休校だったりが、児童・生徒に及ぼす影響、これによって、不登校が見えにくくなっている状況についても説明されている。周囲にも、何人も、不登校の人達がいることを知っているが、不登校と成人のひきこもりを、ある程度分けて考えることもたいせつだと感じている。しかし、不登校が、成人のひきこもりへなる事例も、斎藤環の本では、およそ30%と書かれており、不登校時点での支援がたいせつであることは、確かである。この方たちがしていることは、非常に合理的で、同年代のインターンや、こどもたちの興味に寄り添う姿勢や、eスポーツなど、ゲーム、プログラミング教育を積極的に使い、規則的な日常生活ができるように支援していくことなど、基本的な部分は、素晴らしい。また、スタッフミーティングで、何人もで、情報を共有して、診断、対応を決めていくことも、たいせつである。同時に、人生全体を考えると、学校の問題は、深く、難しい。どの年代にも、ひきこもりや、極度の鬱になるような状況は存在するので。基本的に、通信制高校などを積極的に利用して、高校卒業資格を取ることを中心においていることは、理解はできるが、問題は残したままでもあり、緊急支援を専門にしているということか。現実にしっかり対応している素晴らしさと、これでは、不十分という感覚と両方を感じた。ひきこもりのステージを備忘録と、より具体的な表現を理解するために記する。ステージ1:不登校状態だが、親子間のコミュニケーションはとれている。生活リズムもなんとか維持できている。食事は3食とっている。ステージ2:不登校状態だが、親子間のコミュニケーションはなんとかとれている。生活リズムは不規則。食事は3食とれているかあやしい。ステージ3:不登校状態で、親子間のコミュニケーションはとれない(特に進路について)。生活リズムは不規則。食事は3食とれているかあやしい。ステージ4:ステージ3が1ヶ月以上続き、自室に閉じこもっている。子どもの引きこもり状態を親は普通の社会生活に戻そうとしているが、両親の考えが揃っていない。もしくは疲弊している。ステージ5:子どもがすでに20歳を過ぎ、親子にとってひきこもり生活が年単位で常態化している。普通の社会生活に戻すのは極めて困難。ステージ5はひきこもり状態であるので、ひきこもりの前に支援するということなのだろう。文部科学省:児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査e-Stat データ児童生徒の自殺対策についてコロナ禍における児童生徒の自殺等対策についてコロナ禍における児童生徒の自殺等に関する現状についてコロナで不規則生活、引きこもり増の懸念 「高卒支援会」杉浦孝宣代表不登校・高校中退の救済!迅速に教育相談ができる環境をつくりたい!
    (2023.9.30)

  45. 「トッド人類史入門ー西洋の没落」エマニュエル・トッド、片山杜秀、佐藤優、文藝春秋、文春新書1399(ISBN978-4-16-661399-1, 2023.3.20 第1刷発行)
    出版社情報・目次。トッドの本を読みたくて、大分前に図書館で予約、やっと読むことができた。これからも、何冊か、読んでみたいと思った。家族類型と人口学の知見をもとに、単に学問としてではなく、まさに、いま起こっていることを読み解き、将来を予見する。すべてが正しいかと考えると、頷くことはできないが、トッドの枠組みでの読み解きからは、多くの刺激を受ける。複雑系である世の中を読み解くには、いくつかの重要な要素の組に目を留めることが重要なのだろう。基礎となる「トッドの家族類型(親子関係、兄弟関係、内婚性 or 外婚制で分類)」を参考として上げておく。絶対核家族:子どもは成人後、親元を離れ、結婚後、独立した世帯を持つ。遺産相続は親の遺言で決定。親子関係は自由で、兄弟間の平等に無関心。英米など。平等主義核家族:英米型と同様に、子供は結婚後、独立した世帯を持つが、相続は子供たちの間で平等に男女差別なく分け合う。フランス北部、パリ盆地、スペイン、イタリア南部など。直系家族:通常は男子長子が結婚後も親と同居し、すべてを相続。兄弟間は不平等。日本、ドイツ、フランス南西部、スウェーデン、ノルウェー、韓国など。共同体家族:男子が全員、結婚後も親と同居し、家族が一つの巨大な『共同体』となる。相続は兄弟間で平等で、親子関係は権威主義的。外婚制共同体家族:イトコ婚を認めない共同体家族。中国、ロシア、北インド、フィンランド、ブルガリア、イタリア中部のトスカーナ地方など。内婚的共同体家族:イトコ婚を奨励する共同体家族。アラブ地域、トルコ、イランなど。*歴史的に最も新しいのは『共同体家族』で、最も原始的なのが『核家族』。参考:【コラム】エマニュエル・トッドの家族システム分類
    以下は備忘録: (2023.10.22)

  46. 「第三次世界大戦はもう始まっている」エマニュエル・トッド、大野舞訳、文藝春秋、文春新書1367(ISBN978-4-16-661367-0, 2022.6.20 第1刷発行)
    出版社情報紀伊国屋による書誌情報・目次。ちょうど、パレスチナガザ地区とイスラエルの問題が起こったこともあり、手によって読むこととした。トッドの本は、少し、過激である。そのとおりとは言えない部分もあるが、データも示しており、わたしになかった視点を提供してくれることもあり、もう少し続けて読みたいと思う。特に、この書では、Why the Ukraine Crisis Is the West’s Fault, by John J. Mearsheimer. Linkや、THE GRAND CHESSBOARD American Primacy and Its Geostrategic Imperatives, ZBIGNIEW BRZEZINSKI, Link を根拠としてあげ、さらに、自身の、米国人の対露感情の変遷(1990-2021)ギャラップ社世論調査、米国とロシアの乳幼児死亡率(1960-2019)世界銀行、米国の平均寿命(1970-2020)米国疾病対策予防センター、米国とロシアの死亡率(1980-2019)OECD、地図1 ロシアによるウクライナ侵攻に対する各国の反応(2022年3月7日時点)Groupe d'études géopolitiques、地図2 家族構造における父権制の強度 ネイサン・ナン作成の地図を著者が一部修正、ロシアの小麦生産量(1985-2021)IndexMundi、米国の小麦生産量(1960-2021)IndexMundi、ルーブルの対ドル為替レート(2021.6-2022.5.13)TradingView.Inc.、ルーブルの対ユーロ為替レート(2021.6-2022.5.13)TradingView.Inc.、ルーブルの対英国ポンド為替レート(2021.6-2022.5.13)TradingView.Inc.、ルーブルの対円為替レート(2021.6-2022.5.13)TradingView.Inc.、米国のインフレ率(前年同期比 2017.7-2022.3.28)Traiding View Inc.、英国のインフレ率(前年同期比 2017.7-2022.3.28)Traiding View Inc.、ドイツのインフレ率(前年同期比 2017.7-2022.3.28)Traiding View Inc.、フランスのインフレ率(前年同期比 2017.7-2022.3.28)Traiding View Inc.、日本のインフレ率(前年同期比 2017.7-2022.3.28)Traiding View Inc.、ロシアのインフレ率(前年同期比 2017.7-2022.3.28)Traiding View Inc. のグラフが含まれているのも、興味深い。これからも、データとともに、考えていきたい。
    以下は備忘録: (2023.11.2)

  47. 「我々はどこから来て、今どこにいるのか?アングロサクソンがなぜ派遣を握ったか」エマニュエル・トッド著、堀茂樹訳、文藝春秋(ISBN978-4-16-391611-8, 2022.10.30 第1刷発行)
    出版社情報紀伊国屋による書誌情報・目次。一般書の中では、トッドの体表的な本だと思うので手に取った。「米国人は明らかに先に行っている。そのくせ、およそまったくと言ってよいほど洗練されていない」との問いに答えることを中心に置いているように見える。データや、考察が書かれていることから、示唆を受けることは多いが、論理的に、緻密とは言えない部分が多いように思う。トッドの本は、これからも読んでいきたいが、主張されていることを受け取るには、注意が必要であるように思う。
    以下は備忘録: (2023.11.19)

  48. 「許される悪はあるのか? テロの時代の政治と倫理」The Lesser Evil - Political Ethics in an Age of Terror, by Michael Ignatieff, マイケル・イグナティエフ著、添谷育志・金田耕一訳、風行社(ISBN978-4-938662-83-7 2011.12.26 初版第1刷発行)
    出版社情報紀伊国屋による書誌情報。高校時代に学園紛争を経験し、そのときから、考えている、「どのような状況下で、法を犯し、悪に訴えることが許容されるのか。」という問いがあるが、実際には、これまであまり深めることができなかった。2003年1月にエディンバラ大学のプレイフェア・ライブラリーで開催された約5時間の「ギフォード講義(Gifford Lectures)」を基にしているとのこと。第1章 デモクラシーとより小さな悪、第2章 緊急事態の倫理、第3章 強者の弱さ、第4章 弱者の強さ、第5章 ニヒリズムの誘惑、第6章 自由とハルマゲドン、という構成になっている。わたしがぼんやり考えたいと思っていたことが、項目として挙げられている。楽観的に感じられる面もあり、かならずしも、議論が十分できているとは言えないが、わたし一人ではどうにもならなかった問いについて、たくさんの考え方が提供されており、十分満足できた。英語版で、もう一度読んでみたい。英文タイトルの、The Lesser Evil で検索すると、このタイトルの、論文や、本なども、いくつも出版されている。時間をみつけて、読み、考えてみたい。非常に重要な問いであると感じる。Peace of Westphalia または、合意書についても、調べてみたいと感じた。
    以下は備忘録: (2023.12.1)

  49. 「非暴力による平和創造ーウクライナ侵攻と日本国憲法」木村公一著、カイロスブックス8、いのちのことば社(ISBN978-4-264-04442-0 2023.8.31発行)
    出版社情報・目次紀伊国屋による書誌情報。気になって手に取った。著者が、インドネシアでの宣教師であったことは、知っていたが、他にも、さまざまな活動をしていることは知らなかった。ウクライナの歴史的背景に関して、正教会がこの地域は複雑であることは知っていたが、かなり詳しく説明してあり、確認ができた。後半は、日本国憲法における、平和論であるが、正直、これで、世界的なレベルで賛同者が増えるのは困難だと感じた。憲法では、理念的には普遍的なことが語られているが、基本的には、国民にしか適用されず、国民の考え方も、非常に狭く考える人たちもいるためでもある。具体的なステップを切っていくには、ある理解における理想を正しいとしている面もあり、利害関係が深く絡んだ世界で、合意を得ていく一つ一つのステップを考えると、困難を感じる。それには、受容と書いておられるが、受容できないないようについて、どのように、異なる考えを持ったひとと向き合うかが、問われなければいけないだろう。
    以下は備忘録: (2023.12.5)

  50. 「欧州の謀略を打ち破り よみがえるロシア帝国」佐藤優・副島隆彦共著、ビジネス社(ISBN978-4-8284-2449-1 2022.11.1 第一刷発行)
    出版社情報・目次。なかなか、過激な本である。むろん、副島さんが。安倍元首相殺害は、山上容疑者ではなく、アメリカのCIA が息がかかったものであり、統一教会の分裂が背景にあり、山上容疑者は、サンクチュアリ教会のメンバーだという。誰が得したかというような視点で考えれば、ある推測もできるだろうが、そうだと断定するのでは、怪しさをます。ただ、わたしたちが、理解できているだけが世界ではないと言う点については、以前からそう思った板が、ますますそう考えるようになったことも確かである。いつかは、少しずつ表面化するのだろうか。
    以下は備忘録: (2023.12.15)

  51. 「我々はどこから来て、今どこにいるのか?民主主義の野蛮な起源」エマニュエル・トッド著、堀茂樹訳、文藝春秋(ISBN978-4-16-391612-5, 2022.10.30 第1刷発行)
    出版社情報紀伊国屋による書誌情報・目次。「我々はどこから来て、今どこにいるのか?アングロサクソンがなぜ派遣を握ったか」が上巻で、本書が下巻である。何冊か、エマニュエル・トッドの本を読んで、考えさせられるというよりも、思考の技術を学ぶ面もあるように思う。ただ、分析よりも、考えを述べる部分が多く、人口人類学という分野の特色かもしれないが、説得力が十分に高いとはいえない。ただ、データサイエンスを学んでいることもあり、どのような資料を、どのような目でみるかについては、学びが多い。実際に、一つ一つデータを見ていきたいが、すべてに明確な出典があるわけではない。あとで調べるために、出典を一部書いておく。Barro-Lee Data bank, Statistical Abstract of the United States, 2012, p.151, Eurostat, OECD。
    以下は備忘録: (2023.12.27)


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