Last Update: December 26, 2021, Revised: April 29, 2026

2021年読書記録


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  1. 「AI新生:人間互換の知能をつくる」"Human Compatible: AI and the Problem of Control", by Stuart Russell, スチュアート・ラッセル著、松井信彦訳、みすず書房(ISBN978-4-622-08984-1, 2021.4.16)
    AI について勉強したいと常々考えていたが、実際何から始めればよいかわからなかった。この本がまさにそのような本だと思う。AI 研究を長く続け、有名な教科書 "Artificial Intelligence A Modern Approach - Third Edition"(2010) の著者で、かつ、倫理的な問題を十分な見識をもって扱っている。特に、功利主義や多体問題について、どうしても考えなければならない問題に正面から取り組んでいる。一回読んだだけでは、十分理解できていないので、できれば、英語原文も読んでみたい。少しずつ咀嚼して理解し、そして考えていきたい。TED の講演にも、Stuart Russell: 3 principles for creating safer AI があるが、素人にもわかりやすく伝えられる話し手でもある。しかし、TED では到底表現できない、理論的根拠が、研究論文のレベルではないが、より多くの人に理解できるように書かれている。このような研究者の存在も、重要である。TED には日本語の字幕付きのものもある。「スチュワート・ラッセル : 安全なAIのための3原則」。本書においても、一つの鍵がこの3原則であるが、より広い範囲から、さらに、そのさきまで論じている。三原則とは次の3つである。1. The robot's only objective is to maximaze the realization of human value - ロボット(AI:人工知能)が目指す(べき)ものは、ひとにとってたいせつなことを実現することである。2. The robot is initially uncertain about what those values are - ロボット(AI)は、ひとにとってたいせつなことが何であるかはわかっていないところからスタートする。3. Human behavior provices information about human values - ロボット(AI)は、ひとがどのように行動し・思考し・感じるかを観察して、ひとにとってたいせつなことが何であるかを学習していく。なお、上の訳は、私訳で、松井氏のものは、以下のようなものである。「1. 機械の唯一の目的は、人間の選好の実現を最大化することである。2. 初期状態の機械は、人間の選好について不確実である。3. 人間の選好に関する究極の情報源は人間の振る舞いである。」(p.179)
    以下は備忘録: (2021.8.9)

  2. 「データ分析のための数理モデル入門〜本質をとらえた分析のために」江崎貴裕著、ソシム(ISBN978-4-8026-1249-4, 2020.5.8)
    まえがきには「本書では、数理モデルを使ったデータ分析の本質的な部分を抽出するという立場をとりながら、広い視野でデータ分析を眺めるという解説を目指しました。これにより、そもそも数理モデルを使ったデータ分析で何ができるかわからない。今自分が使っている数理モデルは適切なモデルなのか、また他の可能性があるとしたら、それをどうやって探せばよいのかわからない。数理モデルの振る舞いや性質を理解することで、より本質に迫ったデータ分析がしたい。といったニーズに対して、一定の回答ができるのではないかと期待します。」とある。この目的をもとに、読むと、私のような背景のものには、適切に書かれていると思う。あくまでも、この目的に限ったことであって、個人的には、ある程度の整理はできたと思う。しかし、多少の参考文献はあるものの、カリキュラムの一部として、今後どのように学んでいったらよいかの指針が体系的に添えられてはいないので、発展性には欠けるように思われる。
    以下は備忘録: (2021.9.5)

  3. 「Scratch ではじめる機械学習:作りながら楽しく学べるAIプログラミング」石原淳也・倉本大資著、阿部和広監修、オライリー・ジャパン(ISBN978-4-87311-918-2, 2020.7)
    出版社のリンクと目次と関連ファイル。MITが開発した子ども用プログラミング言語との認識だったが、ボランティアで学習支援をしている児童養護施設でも、夏休み、皆、NetBook か iPad を持って帰ってきて、Scratch で遊んでいる子が多く、何人かは、それなりのプログラムも作っていたが、指導者がいないので、ちょっと勉強してみることにした。ちょっと、できる子が、習い事をして、そのちからを伸ばすのは、児童養護施設ではなかなか難しいので。その、Scratch と、機械学習はミスマッチかと思っていたが、拡張して、様々な機械学習のコンポーネントが使えるようにしたもの(https://stretch3.github.io/)があることを知り、勉強になった。児童養護施設でも、スタッフは使えず、指導もできなかったが、いまは、おそらく、多くの家庭でもそうだと思う。そう考えると、大学の、一般教養で、特にその時間以外、プログラミングや、AI にふれる機会のない、いわゆる文系学生にもよいかなと思った。あとで、こどもたちと一緒に、使えるかもしれないし、AI や機械学習について、体験できていることは重要である。中で使われている、モジュールは、ImageClassifier2Scratch、ML2Scratch、TM2Scratch など。これらも、著者の石原淳也さんが開発したもののようだ。Junya Ishihara 正直ちょっと驚かされた。ちょっと調べてみると、なかなか魅力的なかたでもある。あまり調べもしないで、日本はまだまだと思っていたが、このような方が、たくさんおられるのかもしれないが。
    (2021.9.8)

  4. 「虐待が脳を変える〜脳科学者からのメッセージ」友田明美・藤澤玲子著、新曜社(ISBN978-4-7855-1545-1, 2018.1.15)
    出版社のリンクと目次。児童養護施設で学習支援をしていて、友田明美著「いやされない傷ー児童虐待と傷ついていく脳」(診断と治療社)に興味を持ち、読んでみたいと思ったが、いくつかの図書館になかったので、手にとったのがこの本である。私が読みたかった本が医学書で、一般向けでないので、友田氏の近くで働いているライターの藤澤さんが一般のひとでも読めるようにと書いたものとのことで、正直にいうと、物足りなかった。やはり、論文や医学書を読まないと、根拠が明確ではなく、かつ関連資料を当たることもできない。しかし、一般向けに伝えたいとの情熱は伝わってきた。最後の二人がそれぞれに書いたあとがきからも多少うかがい知れるが、友田氏自身の母親としての失敗談なども、書かれており、好感がもてたことも確かである。また、8章から11章にはある程度医学的な考察も書かれている。医学的な脳の研究の背景を書いた以下の箇所はわかりやすい。「最近まで心理学者たちは、児童虐待の被害者は社会心理学的発達が抑制され、精神防御システムが肥大するために、大人になってから自己敗北感を抱きやすいのだと考えていた。精神的・社会的に十分に発達しないまま、『傷ついた子ども』に成長してしまうというのだ。だから、その傷ついた『ソフトウェア』を治療すれば再プログラムすることができると考えた。つまり、前述のトラウマを引き起こす三つの要因ー生物学的要因・心理学的要因・社会的環境ーの中の、心理学的要因と社会的環境を修復すればよい。周りの環境(社会的環境)を整え、どのように物事を捉え考えるかという認知の方法(心理学的要因)を改善すれば、完治するはずだ。」(p.109)無論、そうではないことが、書かれている。また、脳が傷ついてしまっていることがわかった今も、それは修復できるのか、その部分は修復できなくても、その他の部分が補いうるのかなど、研究が進んでいることも書かれている。個人的な経験と照らしながら、研究結果についても、論文を読み、また、MOOCs の Brain Science のコースなども受講しながら、一つ一つ学んでいきたいと思った。
    以下は多少の備忘録: (2021.10.16)

  5. 「脳科学と発達障害〜ここまでわかった そのメカニズム」榊原洋一著、中央法規(ISBN978-4-8058-3008-6, 2007.12.20)
    出版社のリンクと目次。少し古いが、基本的なことを確認したくて、この本を手にとった。広汎性発達障害(ASD(Austic Spectrum Disorders, 自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群): 社会性の乏しさ、あるいは狭く繰り返される常動的な行動や関心q)、注意欠陥多動性障害(Attention Deficit Hyperactivity re, ADHD: 注意欠陥あるいは多動、衝動性)、学習障害(LD: 誤字、書字、計算の困難)について、それぞれの説明と、脳機能の可視化がどこまで進んでいるかを、磁気共鳴機能画像法(functional magnetic resonance imaging, fMRI)、陽電子断層撮影法(ガンマ線を利用、Positron Emission Tomography, PET)、脳磁図(磁場の変化を利用、非侵襲的脳機能検査、Magneto Encephalo Graphy, MEG) にわけて基本を解説している。現在は、DSM-5(精神障害の診断・統計マニュアル第5版)であるが、DMS-4 の基準のもとで診断基準の訳を掲載している。未発達領域で、少しずつ分かり始めているといった印象である。
    (2021.10.24)

  6. 「アケメネス朝ペルシャ〜史上初の世界帝国」阿部拓児著、中央新書 2661(ISBN978-4-12-102661-3, 2021.9.25)
    出版社のリンク。アケメネス朝ペルシャの初代は、キュロス二世で、捕囚となったイスラエル(ユダヤ人)の帰還を許し、エルサレム(第二)神殿の再建を始める勅令を出したとされ、聖書でも好意的に描かれている。そのあとも、ペルシャ帝国内に留まったユダヤ人も多くいるが、エルサレムを中心とした、営みが再開され、各地に散らばったユダヤ教徒(ディアスポラ)にとっても、エルサレムは重要な拠点なったことが聖書にも書かれている。(特に、エズラ記・ネヘミヤ記(ヘブル語聖書では一つの巻))アケメネス朝ペルシャの前のアッシリアについても知りたいと思っていたが、まずは、この新刊を手にとった。一般的にもよく知られている、ヘロドトスなど、ギリシャの著述家・歴史家とともに、ペルシャ側の記述としての碑文などこそ重要視すべきといるオリエンタリズムも、検証し、公平に見ようとしながら、不明な点は不明とし、しかし、著者の考えも披瀝する書き方に好感を持った。特に、ペルシャ側の資料の少なさは、大きな制約となるが、何度と無く起こったギリシャ・ペルシャ戦争のなかで、交流もダイナミックに起こり、実際に、ペルシャに行った経験のあるギリシャ人の記述などもあり、二元対立型ではなく、興味深い。わたしのような全くの素人が小学生のころから抱いていた、なぜ、アレクサンドロスは、短期間で、あのような版図を持つ大帝国を築いたのかという問には、少しでも歴史を知っている人にとっては常識であろうが、このペルシャが前にあり、それを滅ぼしたことで、広大な領土を確保したというあたりまえのことも理解できた。特に、著者が、アレクサンダーこそが、アケメネス朝最後の王とする見方もできると最後に書いていることも、興味深かった。ペルシャの衰退期、特に、エジプトや、バルカン半島(マケドニアとギリシャ)などの統治が困難であったことを、引き継いだ、アレクサンダーが結局、それらをまとめ上げるところまでは、行き着かなかったことも、ある連続性の中で理解できるように思った。中東の歴史は、これからも、少しずつ学んでいきたいと思う。
    以下は備忘録: (2021.11.3)

  7. 「数式がなくてもわかる! Rでできる因子分析」松尾太加志著、北大路書房(ISBN978-4-7628-3166-9, 2021.9.20)
    出版情報と目次のリンク。多変量解析は、それぞれの分野で様々な手法が用いられているが、その一つ、特に心理学などで用いられる、因子分析について、基本的なことを知っておこうと思い手にとった。「因子分析は、調査や実験などを行って得られたデータ(の変数)に共通する因子(要因)を見つけるだめの分析です。『共通する』ということがキーワードとして重要で、共通してない場合は因子分をする必要はありません。もう一つのポイントは、その因子(要因)を直接観察できないということです。知りたい因子(要因)から直接データを得ることができないので、『潜在している』という言い方をします。直接、その要因のデータを得ることができるのであれば、因子分析をする必要はありません。」(p.1)として、5つの教科の相関(架空のデータ)から、文系能力、理系能力を探ったり、授業評価調査から因子を見つけたりといった例を用いて説明している。主として、R の psych と、GPArotation の2つのパッケージを利用している。p.84 の実行例 8-2 のアルファ係数の算出以外は、すべて確認して、R Markdown として記述した。「因子分析の結果として出てくるのは、因子負荷量の値だけです。その結果からどのような因子であるのかを解釈するのは人間です。しかも、そこで必要とされるのは、統計学的な知識ではありません。そのデータに関しての専門的な知識です。」(77)これは、うっすら理解していたことだが、明確に書いてくださり、具体例からも確認することができた。似たものとして、主成分分析との違いについては「主成分分析は観測変数からの合成の変数を作り出すのに対して、因子分析は潜在的な共通因子を探る分析です。変数間の関係性を矢印などで示すパス図を描くとその違いは一目瞭然です。主成分分析での主成分(因子に相当するもの)は観測変数からの矢印であるのに対して、因子分析での潜在因子は、観測変数への矢印になっています。」(p.92)何をしているかを、多少理解することができた。
    (2021.11.12)

  8. 「Scratchではじめよう! プログラミング入門 Scratch 3.0版」松尾太加志著、北大路書房(ISBN978-4-7628-3166-9, 2021.9.20)
    出版情報と目次のリンク。Scratch は、初心者が、プログラムを学ぶのに、とても適していると思う。適当なテキストを探していたが、これは、非常に良い構成になっている。小学生には、難しいと思うが、高校生や大学生・社会人には、適しているだろう。大学の教養として、Scratch というより、プログラミングを教えるにも適していると思う。プログラミングの基礎知識をもっているかどうかは、これからの社会において、重要であろう。副題には「ゲームを作りながら楽しく学ぼう」とあり、シューティング・ゲームを作っていく構成になっている。だれでも、一回は、遊んだことがあるだろうから、イメージがつきやすく、目的も明確である。「15+1(micro:bit)ステージで着実に学べる、プログラミングの基本が、この1冊で、分かる」と表紙下に書いてある。教科書的なものに作り込んでいくためには、それぞれのステージで学んだことを利用して、多少発展させればできる、例題を載せ、回答のリンクを示す。または、それほど、複雑ではない、様々な作品を紹介して、リミックスを促すなどが考えられる。これが時間がかかるのだが。まずは、わたしも、いくつか、作成してみようと思う。時間を見つけて。
    (2021.11.18)

  9. 「データサイエンスの基礎 Rによる統計学独習 An Introduction to Statistics with R : A Self-Learning Text」地道正行著、 裳華房(ISBN 978-4-7853-1578-8, 2018.10.25)
    出版情報と目次と掲載データとコードなどのリンク。昨年、データ分析を一緒に教えることになった方から、自分で持っていたのでと、献呈本を頂いた。今年また同じコースを教えることになったので、自分とは違った視点からのものも勉強しておこうと思い、手にとった。流し読みの部分がなかったとは言えないが、コードもすべて実行し、著者が伝えたかったことを少しは受け取れたと思う。本にQRコードがついており、データもコードもダウンロードできるようになっている。理系の大学一年生程度の数学の訓練を受けていれば、書名の通り、独習も可能なのではないかと思われる。数学の部分を簡便にし、省略もしているものの、文系の学生には、式の形、変形などを考えると少しハードルが高いと思う。確かに、統計学はデータサイエンスの基礎ではあるが、パブリック・データの入手・分析などを考えると、このようなものを基礎とするのが良いのかは個人的には、疑問が残る。R については、読者が使いやすいように、いくつも独自の関数が定義されていて素晴らしいが、ggplot2 以外は、tidyverse package の活用について述べられておらず、少し古い感じがする。ここまで丁寧に、情報が提供されているなら、bookdown での出版が考えられてしかるべきだと思う。出版社にとっては、大きな脅威となると思われるが、日本はあまりにも遅れているように感じる。データサイエンスを一般の学生が学んでいくためには、質は下げず、もっとハードルを下げる必要があると思う。統計学や数学は、データサイエンスの基礎として学ぶのではなく、必要に応じて、徐々に学んでいくのでも良いのではないだろうか。実際のデータにおいては、どの程度正規分布かなど、母集団の分布を仮定できるかが課題で、十分、Data Visualization をいろいろな形で活用していく、Exploratory Data Analysis(EDA, 探索的データ分析)のほうが重要に思う。
    (2021.12.26)


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