Last Update: December 26, 2018, Revised: April 30, 2026

2018年読書記録


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  1. 「イスラームの歴史 1400年の軌跡」カレン・アームストロング著、小林朋則訳、中公新書 2453 (2017.9.25, ISBN978-4-12-102453-4)
    「どの宗教であれ、その外面史は信仰のあるべき姿とかけ離れているように思えることが多い。そもそも霊的探求は内面を探る旅であり、魂の遍歴であって権力をめぐる政治ドラマではない。」と「まえがき」が始まる。"ISLAM: A Short History" by Karen Armstrong, 2000. 2001年の9.11の直後の2002年に出たペーパーバック版の翻訳である。New York Times のベストセラーを何週間か続けている。全体を通して、アームストロングのイスラームの人たちと言うより、それをとりこむような多くのひとたちに寄りそう愛、「共感」と彼女は表現するようだが、を強く感じる。著者の履歴も興味深いがこの方の本を続けて読んでみたくなった。イスラームの歴史を学ぶと、聖書の解釈、コーランの解釈、イエスの教え、ムハンマドの教え、それぞれの弟子たちの伝えたこと、その権威、どれも、その後の世界、信仰と政治の問題、信仰覚醒運動、哲学と信仰、科学と信仰、合理主義をどのように考えるかなど、イスラム教における困難な問題とキリスト教の中でのそれとの間に類似性と並行関係があり、イスラームの人たちと共に学びたいと感じた。イスラームと、キリスト教や、ユダヤ教の最初の出会いを学ぶと、今に通じる、様々な問題を感じる。信仰は特定の信条を信じることではなく、信じたことを生きることであると思った。第1章 イスラームの成立、第2章 イスラーム国家の発展、第3章 イスラーム世界の繁栄、第4章 世界帝国の時代、第5章 戦うイスラーム、あとがき、解題、イスラーム史の重要人物、アラビア語の用語解説、読書案内、年表、索引、とかなり最近の事まで書かれており、本文以外の付録も充実している。以下は備忘録。「近代西洋では、宗教を政治と分離することが重視されてきた。これを政教分離または世俗化と言い、もともとはフランス啓蒙思想家たちが、宗教を国政運営の腐敗から救い出して本来のあるべき姿に近づけるための手段と見ていたものだった。」(vi)「しかし、超越者を直接体験することは絶対にできる、法悦はつねに『地に足をつけたまま』下界の物や人を通して体験される。」(vii)「ヤスパースのいう『軸の時代』(紀元前700年頃〜前200年頃)」(p.7)「宗教には無理強いということが禁物(クルアーン2章256節)」「それから、お前たち、啓典の民と論じる場合には、立派な態度でこれにのぞめ。というても、特に不義なす徒輩(やから)を相手にする時は別だが。こう言っておくがよい、『わしらは、わしらに下されたものも、おまえたがに下されたものも信仰する。わしらの神もお前がたの神もただ一つ。わしらはあのお方にすべてを捧げまつる』と。(クルアーン29章46節)」(pp.11-12)「原理主義者たちは、近代の歩みに対する不満を表現する際、自分たちの伝統が持つ、近代化に抗する諸要素を極端に強調することが多い。(中略)つまり原理主義は、強引な近代化と共生関係にあるのだ。」(p.222)「各種の調査によると、ヴェールを着用する女性たちの大部分は、ジェンダーなどの問題について進歩的な意見を抱いている。女性が、農村地帯から大学へ進み、男女を問わず家族で初めて基本的な読み書きだけで終わらず高等教育を受けるものである場合、イスラーム服を着用することで連続性を感じ、近代への移行で受ける精神的ショックを、着用しない場合よりも小さくすることができる。」(p.231)
    (2018.1.2)

  2. 「オックスフォードからの警鐘 グローバル時代の大学論」苅谷剛彦(オックスフォード大学教授)著、中公新書ラクレ 587 (2017.7.10, ISBN978-4-12-150587-3)
    著者のまとめによると「グローバル化とは、2000年代以降の流出留学生数の急速な増大、とりわけ中国からの留学生の増加と、それらによって拡大したグローバルな高等教育市場のシェア獲得競争の中で英語圏の大学、とくにイギリスの大学が国策として留学生の受け入れ拡大を戦略的に進めたこと、その一環としてイギリスの主要メディアを中心に世界大学ランキングがつくられ普及し、マーケティング戦略の一端をになったことに象徴される現象である。」(p.221)下にあげる目次が示すように、文部科学省の支援事業への著者の疑問が背景にある。それに関しては、一面のみ語られていると思う。さらに、いくつかの原稿をまとめたものであり、内容としてはそれほど豊かであるとも言えない。最初に引用した、まとめに、ほぼ含まれている。含まれていないとすると、日本の大学が何を目指すべきかについて多少書かれている第二部後半の「日本の文系の強み・量より質優先の政策を」であろうが、内容が豊富であるとは言えない。それでも、イギリスでの教育政策について、上記のシェア拡大の論理や、グラマー・スクール復活かなど、日本では触れることがまれな情報は含まれている。目次 序章 日本の大学が世界の「落ちこぼれ」になる 第一部 「スーパーグローバル大学」の正体 第二部 文系学部廃止論争を超えて 第三部 海外大学・最新レポート 第四部 ガラパゴスからの脱出 終章「グローバル大学」への警鐘 日本の大学は何をめざすべきなのか。
    以下は備忘録: (2018.1.8)

  3. 「世界で一番美しいサルの図鑑」京都大学霊長類研究所、X-Knowledge(ISBN978-4-7678-2402-4, 2017.11.25)
    ヒトを含む霊長類を知る上で重要な、4つの特徴、霊長類の進化、形態、社会生態、保全が最初におかれ、地域毎に、130種類のサルが美しい写真とともに紹介され、最後に「なぜ霊長類が問題なのか」(湯本貴和)の一文でとじられている。社会生態は読んでいて興味をひくが、なんと言っても、美しい写真を眺めているのが楽しい。殆どの写真で目をひくのが目である。視線かもしれない。なにを考えているのか、考えさせられる。多くの場合、疑いの目のように見える。そして、ひとつ気づいたのは、少なくともこれらの写真には、毛づくろいをしてもらっているのか、気持ちよさそうな表情はいくつかあるが、喜々としている喜んでいる表情は見られない。笑顔がない。ヒト科ゴリラ属、ヒト科チンパンジー属、特に、ボノボには興味を持つ。霊長類研究所では「くらし・からだ・こころ・ゲノム」の様々な研究領域からアプローチする独自の体制で研究教育活動を展開しているという。興味を持つ学生が多いのは頷ける。「ヒトとはなにか」「ヒトはどこから来て、どこに向かうのか」今西錦司、伊谷純一郎が戦後間もなくはじめた研究に興味をもつ。焦らず、丁寧な研究から出てくるものに興味をもって少しずつ追っていきたい。
    (2018.1.20)

  4. 「見えない希望のもとで 永田竹司説教集」永田竹司、教文館(ISBN978-4-7642-6121-1, 2016.11.30)
    著者は、1974年生まれ、東京クリスチャンカレッジ、ゴードン・コンウェル神学校、プリンストン神学校(哲学博士)、国際基督教大学名誉教授(宗教・新約聖書学)、ICU教会名誉牧師(1981年から92年までICU教会副牧師、2002年から13年まで主任牧師)はじめにに、聖書をどう読むかについて書かれており、編者あとがきは、焼山満里子東京神学大学准教授が書いている。全体を、三部に分け、第一部 世界に開かれた生、第二部 自由を与えるキリスト 第三部 さらにまさる道と、I・C・Uに、説教がまとめられている。
    以下は備忘録: (2018.1.20)

  5. 「新聖書講解シリーズ4 ヨハネによる福音書」村上久著、いのちのことば社(ISBN4-264-00554-X, 1992.11.1)
    2015年4月から三年かかって、我が家の聖書の学びの会で、ヨハネによる福音書を読んだ。そのときに利用した一冊である。下に読書記録を書く、二冊と比較すると、正直、この本から学ぶことは殆どなかった。分析的とは言えず、文献からの直接の引用も殆どないからであろう。それでも、最後まで読んだのは、平易に基本的なことを確認できたからだろうか。
    (2018.2.11)

  6. 「聖書注解シリーズ5 ヨハネによる福音書上」「聖書注解シリーズ6 ヨハネによる福音書下」ウイリアム・バークレー著、柳生望訳、ヨルダン社(1968.3.25, 1968.12.10)
    The Gospel of John Vol.1 and 2, by William Barclay の翻訳である。英国のキリスト教の伝統のもとでの、豊富な情報が書かれている。しかし、参考文献が明確ではないので、資料のソースについての検証ができたとは、言えない。いくつもの解釈が紹介されてはいるが、分析的とは言えない。基本的な解釈の幅を理解するには、十分な情報であったと思う。
    (2018.2.11)

  7. 「ヨハネによる福音書講解 下巻」榊原康夫著、小峰書店(1978)
    上巻しか所持しておらず、図書館で古書を購入して頂き読むことができた。聖書の会での分析的な読み方は、榊原康夫先生の読み方から得たことは、殆ど間違いないだろう。ヨハネによる福音書は、講解説教を記録したものである。これだけ、豊かな講解説教を毎週続けて、聞くことができた人たちは幸いだと思う。しかし、わたしも、ルカ、使徒行伝、マタイと、榊原先生のものを利用してきたので、ヨハネでは少し違う読み方もできたように思われる。すなわち、講解から、榊原先生が考えた問いを自分の問いの一部とするという読み方である。その読み方から、多くの自分の問いや、学生が持つであろう問いを加える事ができた。以前は、解釈も吸収しようとしていたが、ヨハネにおいては、一つの情報としてのみ、記録し、自分で考えながら読むことができたのではないかと思う。先生の訓練のもとで、どうやら、自分で読むことができるようになったように思われる。むろん、それでも、榊原先生の本から学ぶことは、まだまだ多いが。このようにして読むことができたのは、本当に幸せであった。講解説教をきくことの数倍の恵みを受けることができたように思われる。すでに、先生は天に召されているが、高校生時代に、先生の説教を聞きに、東京恩寵教会を訪ねたことを、思い出す。上巻・中巻・下巻と学ぶことができたことを心より感謝する。
    (2018.2.11)

  8. 「赤道の国でみつけたもの - アフリカの子どもたちと共に生きて」市橋さら著、光文社(ISBN 4-334-97474-2, 2004.12.20)
    アフリカのケニアで幼稚園などを経営している一家のエッセー。ケニアにサービス・ラーニングのプログラム開発のための視察へ向かう、電車と、飛行機の中で読んだ。品川教会からの派遣牧師である夫、市橋隆雄と、5人のこども(うち二人はケニア人の養子)の家族の記録でもある。22歳で単身ケニアに、その後、夫とともに先に学んだ大学に、夫が講師として招かれたことから、家族で移住、キューナという比較的裕福な世界各国からの子供がつどう幼稚園と、スラムにある貧しい子供の通うコイノニアを運営している。このように、ケニアに根をおろしている、日本人または外国人との交流も学生たちにとっては、有益からもしれない。
    以下は備忘録: (2018.3.7)

  9. "THE 2030 AGENDA FOR SUSTAINABLE DEVELOPMENT", United Nations 2015, 40pp
    2015年までの開発目標を記した、"Millennium Development Goals” を踏まえ、2030年までの目標を記した、国際連合の文書である。Service-Learning の新しいプログラム開発のために、ケニアを訪れた際、ナイロビにある国際連合の本部の一つを訪問することになり、予習として読んだ。それぞれの Agent から上がってきたものと思われる。数値目標の設定や、現在までの実績、過去の Agenda などの取り上げ方が様々であるが、国連という枠組みでできることと扱えないことの可能性と限界も考えることができ、国連での会話の準備となった。"SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS", United Nations, 24pp は標語的で、内容は、2030 agenda をまとめたもので 1.No Poverty 2.Zero Hunger 3.Good Health and Well-being 4.Quality Education 5.Gender Equality 6.Clean Water and Sanitation 7.Affordable and Clean Energy 8.Decent Work and Economic Growth 9.Industry, Innovation and Infrastructure 10.Reduced Inequality 11.Sustainable Cities and Communities 12.Responsible Consumption and Production 13.Climate Action 14.Life Below Water 15.Life on Land 16.Peace, Justice and Strong Institutions 17.Partnerships for the Goals [?] What Can I Do to Help.
    (2018.3.9)

  10. 「関係性の学び方 『学び』のコミュニティとサービスラーニング」サラ・コナリー(Sara Connolly)、マージット・ミサンギ・ワッツ (Margit Misangyi Watts)著、山田一孝、井上康夫訳、晃洋書房(ISBN978-4-7710-2108-2, 2010.2.10)
    Student Orientation Series の "LEARNING COMMUNITIES" と "SERVICE LEARNING" の訳を一冊にまとめたものである。第一部は、大学入学1年後の退学率を下げるために、多くの大学で開発された、幾つかの形の、Learning Community について記されている。学生コホート・統合ゼミ、連携科目・科目群、調和した勉強、生活し学ぶ「学びのコミュニティ」と続く。最後のものは、Living Learning Community として、新々寮(Momi-Maple)建設にあたって、議論したものである。ICUでは、他の形で学びのコミュニティと言えるものもある程度あるので、それを踏まえて、かつこの学びのコミュニティの背景などについて理解して議論していればと反省する。第二部は、サービスラーニングであるが、基本的なことを除いて、実践的なフォームや、課題案がある。英語版を読んでから、利用できる部分を捜したい。
    以下は備忘録: (2018.3.13)

  11. 「大学における海外体験学習への挑戦 Challenges to Overseas Experience Learning at University」子島進(ネジマススム)、藤原孝章(フジワラタカアキ)編、ナカニシヤ出版(ISBN9784779512018、 2017.12.15)
    サービス・ラーニング・センターのコーディネータも書いており、原稿段階から読ませていただいたので、少しずつ読んでいたが、海外への出張中に読み終えた。日本中の大学において、様々な形で、海外体験学習が為されており、かなりの経験をもった教員、職員もいることも分かった。
    以下は備忘録: (2018.3.17)

  12. 「ケニアの教育と開発〜アフリカ教育研究のダイナミズム〜」澤村信英・内海成治 編著、明石書店(ISBN9784750337081、 2012.12.12)
    ケニアの小学校でのサービス・ラーニング・プログラムを始めるため、現地を訪問・調査した帰途から読み始めた。多少、現地の状況を知ったのみであるが、開発教育というもの自体について、考えさせられた。著者に、長期間にわたって、現地で教育に関わったかたはいないようである。記述を見ても、一つ一つの課題について、共通理解をえるための、分析も議論も十分できていないようである。アフリカでは、教育に関してはすでに途上国とはいえない、ケニアでもこの程度なのだと知らされた。学生たちが、ケニアの人たちに仕え、ケニアの人たちの教育への関わり、現地の方たちと、現在の外的・内的要因に起因する変化とともに、現状と課題をしっかりと学ぶことが、できることを願っている。本書は、3部に分かれている。第1部 伝統的社会と学校、第2部 子どもの生活世界と学校、第3部 地域コミュニティと学校。
    以下は備忘録: (2018.3.23)

  13. 「西郷隆盛と聖書〜『敬天愛人』の真実〜」守部喜雅著、フォレストブックス(ISBN978-4-264-03878-8、 2018.1.25)
    西郷隆盛は、現在NHK大河ドラマで放送中の「西郷(せご)どん」でも、内村鑑三の「代表的日本人」にも取り上げられているが、政治的な役割の背後にある実像について理解できないでいた。評価には100年かかると内村が書いているが、亡くなってから、100年を遙かに超した今も、十分理解されていないのだろう。ここに書かれていることの裏付けは、簡単ではない部分もあるが「敬天愛人」は本当によい言葉である。キリスト教の一つの本質の最も短い表現とも言える。さらに、知りたくなった。勝海舟なども。
    以下は備忘録: (2018.3.27)

  14. 「風と土の秋田〜二十年後の日本を生きる豊かさのヒント〜」藤本智士著、リトルモア(ISBN978-4-89815-465-6、 2017.8.3)
    秋田県発行フリーマガジン「のんびり [のんびり終了?]」取材制作チームによる「のんびり」Vols. 04「マタギから授かったもの」, 05「のんびりまっすぐ寒天の旅」, 06「20年後の日本酒」, 09「秋田弁でした伝えられないもの」, 16「田舎の教養、決して消えないローカルメディアの灯」からの文章を含む。「人間が道路を作っちゃうとみんな一緒になっちゃってるなぁ」(p.241)つまりは、グローバル化が進む世の中で、ローカルとは何かという問いが背景にある。そのなかで「高質な田舎」(p.243)というコンセプトの「あきたびじょん」を考えているひとたちからの発信である。「のんびりの思い。秋田にはうまい飯とうまい酒があります。その豊かさが秋田の実直なものづくりを支えてきました。」と始まる。「なんもっす!なんもっす! なもなもなもなもなも!」(p.206)謙虚さもある、仕える心を持って「どういたしまして」を伝える言葉か。Na Li(哪里哪里)に近い。授かりものという意識のもとでの、マタギ勘定。棒寒天がつなぐ、茅野と、秋田。純米酒にこだわる酒造り。標準語教育が、方言の豊かさを育むという「遠藤熊吉と秋田西成瀬小学校(無明舎出版)」にも教えられた。このフリーマガジンの編集の中心は、秋田以外の人たちである。外から見ての気づかされる良いところ、中のひとに寄り添って発信するサービス。グローバル化を排除してはいない。学ぶことが多いが、答えはまだない。
    (2018.4.1)

  15. 「途上国世界の教育と開発〜公正な世界を求めて〜」小松太郎編、上智大学出版(ISBN978-4-324-10115-5、 2016.4.15)
    ケニアに行った際に、勧められた。開発教育という分野の教科書として書かれており、よくまとまっていると思う。基本的な部分は、一般常識とも言えるが、学生がまず理解すべきことはまとまっているのだろう。目次:序章 なぜ、途上国世界の教育なのか? 第1部 途上国世界の教育:4つの視点 第2部 途上国世界の教育分析レベル 第3部 国際教育協力のアプローチ 第4部 途上国世界の教育課題 の四部構成。編者はJICA, UNESCO などでの経験を持つ。
    以下は備忘録: (2018.4.8)

  16. 「影裏」沼田真佑著、文芸春秋(ISBN978-4-16-390728-4, 2017.7.30)
    著者紹介には、本作で第122回文學界新人賞を受賞しデビューとあるが、本作で、第157回芥川賞(2017年)も受賞している。選考理由としては「私の意見では、この作品は3.11の大震災を踏まえ、人間の外部と内部の“崩壊”を描いたものだと思います。大震災を小説化するには、こういう描き方しかないと思い、私は強く推しました。」(高樹のぶ子)とある。殆ど小説を読まないわたしが興味を持ったのは、あるラジオ番組で、著者が「アンチ共感」「簡単に共感ということへの反発」と述べていることに、(あえて論理的矛盾を含む書き方をすると)共感したからである。94ページととても短いことも、読もうとした決断に影響しているが。確かによく分からない。しかし、意識的に謎めいた人として書くよりも、ひととは謎めいた者として、一人ずつについて、最初からほんの少しだけ表現するということは、わたしがいま考えていることと近い。選考理由にもあるように、特に、大震災でひとり一人の人間の尊厳を思うとき、その人を分かったように書くのはかえって冒涜であろう。美化して書いたとしても。人は分からないものだから。分かったような設定をすることは、ひとを、人の作り物にしてしまう。ただ、小説という、ある種の娯楽がこれでよいのかは、議論もあろう。実際、わたしも、さらに読みたいとは思わないのだから。
    (2018.4.15)

  17. 「サンプリングって何だろう - 統計を使って全体を知る方法」広瀬雅代、稲垣佑典、深谷肇一著、岩波科学ライブラリー271、岩波書店(ISBN978-4-00-029671-7, 2018.3.6)
    統計に関する啓蒙書に興味があった。どのように教えるのだろう。その教育方法における数学との違いにも考えたかった。三つの章に別れている。第一章 サンプリングの有用性ーその科学的根拠、第二章 世の中の動向を捉えるー社会調査とサンプリング 第三章 生物を数えるー生態調査におけるサンプリング、もっと深く学びたい人に向けてー文献案内、となっている。第一章では、こども教室での、BB弾サンプリングについて記し、第二章は、社会調査、統計数理研究所での「日本人の国民性調査」について記されているが、プライバシーの観点から調査が困難になってきているという統計的記述が興味深かった。第三章は、生態調査についてで、捕獲再捕獲法のリンカーン・ペテルセン推定量について説明している。正直に言うと、物足りなかっただけでなく、まだ教育プログラムとしては、洗練されているとは言えないと思った。また、数学でたいせつにしていることを、含めることはできないのかとも考えた。もう少し勉強してみたい。
    (2018.4.24)

  18. 「不可能を証明する - 現代数学の挑戦」瀬山士郎著、青土社(ISBN978-4-7917-6546-1, 2010.6.4)
    大学の授業のネタのためにと思ったが、予想以上に、分かった気にさせる工夫もされていて、調べるだけのはずが全部読んでしまった。「おわりに」に「不可能を証明しようとすれば、それは単に難しいだけではなく、まったく新しいアイデア、概念、考え方、証明技法を考え出す必要があった。不可能の証明は数学を新しいステージに導くステップだったのである。」とある。背後にある、背理法の考え方など、丁寧に説明されている良書である。ただ、巻末を見ると、似た書名の本も挙げられており、わたしが単に知らないだけなのかもしれない。数がくとしても、よい内容を多く含んでいるが、一般教養科目などで教えるとすると、演習問題が常に鍵となる。個人的に、テーマ毎に、問題を付けてみても良いと思った。
    以下は備忘録: (2018.4.29)

  19. 「不完全性定理-数学的体系のあゆみ-」野崎昭弘著、ちくま学芸文庫(ISBN4-480-08988-8, 2006.5.10)
    大学の授業の準備のためにと考え、説明が分かりやすく、教養豊かな野崎先生の本を手に取った。多少冗長なところもあるが、裏話など、全く知らなかったことも書かれており、内容も豊かである。本質は十分に記述されているが、数学的に理解したい場合は、適切とは言えないかもしれない。ただ、数学的に書かれた本は、専門的になりすぎて、楽しめないこともある。要点のみ、もう一度、確認しながら読んでみたい。
    以下は備忘録: (2018.5.6)

  20. 「四色問題-どう解かれ何をもたらしたのか-」一松信著、BLUE BACKS B-1969 講談社(ISBN978-4-06-257969-8, 2016.5.20)
    大学の授業の準備のためにと考え、2016年版と新しかったので手にとった。少し残念だったのは、1997年に発表されている、Robertson-Sanders-Seymour-Thomas について p.259 に引用されているにもかかわらずなにも書かれていなかったことである。しかし、BLUE BACKS のレベルとしては全体的に丁寧によく書かれていると思う。不可避集合(unavoidable sets)と、可約配置(reducible configurations)とその還元(p.55)について丁寧に説明され、その土台を確認しながら、ケンペ(A.B. Kempe, 1849-1922)の方法、ヘーシュ(H. Heesch, 1906-1995)の放電法(Discharging Method)についても丁寧に説明されており、K. Appel と W. Haken の証明(1976)において、コンピュータによる検証が必要になっていくいきさつと、何に、コンピュータが使われたか、その検証についても理解できる程度に書かれている。解決の余波についての備忘録。 (2018.5.12)

  21. 「経済数学入門の入門」田中久稔著、岩波新書 1707 岩波書店(ISBN978-4-00-431707-4, 2018.2.22)
    経済学で数学がより頻繁に使われるようになり、実証科学としての経済学と言う面が強くなってきたとされ、一次関数、二次関数、関数の微分(需要関数と供給関数の導出)関数の最大化(市場の均衡)多変数関数の最適化(マーシャル型需要関数)、マクロ経済学と差分方程式(最適成長理論、オイラー方程式)、動的計画法(ベルマン方程式)などが紹介されている。平易に書かれているが、ある程度の数学的素養がないと、追うのは難しく、追わないと何のことか分からなくなりそうである。クルーノー、レオン・ワルラス、ポール・サミュエルソンなどが、紹介されている。ケインズの師匠でもある、アルフレッド・マーシャルの「経済学者に必要なものは、冷たい頭脳と温かい心である」(p.29)も紹介されている。入門書として以下の三冊が紹介されている「改訂版 経済学で出る数学 高校数学からきちんと攻める」小山大輔・安田洋祐編著、日本評論社(2013)、「経済数学入門 初歩から一歩ずつ」丹野忠晋著、日本評論社(2017)、理系の人向けとして "Fundamental Methods of Mathematical Economics" by Kevin Wainwright Professor, Alpha C Chiang, McGraw-Hill Education (4th Edition, 2004)「現代経済学の数学基礎(上・下)」A・C・チャン、K・ウエインライト著、シーエービー出版(2010)が紹介されている。数学者用には「経済数学教室(全9巻)」小山昭雄著、岩波書店(2010)を紹介している。
    (2018.6.10)

  22. 「目からウロコ 福音書の中にイエスを『見る』祈り」祈りの学校校長来住英俊著、女子パウロ会(ISBN978-4-7896-0667-7, 2009.1.15)
    ある方から頂いた。カトリックの大学と交流のあったときに、持って行き、移動中に読んだ。「福音の中にイエスを『見る』ための心得(1)つねにまず、イエスその方にスポット・ライトを当てる。(2)イエスの発言より、まず先に、行動・振る舞いに注目する。(3)目立つ出来事だけでなく、イエスの日常の生活を見つめる。(4)現代の問題、今の自分の生活に性急に結びつけようとしてはいけない。(5)場所と時間を意識する。(6)想像力を働かせるのは、福音書の正しい読み方である。」(pp.19,20)
    (2018.6.21)

  23. 「アマルティア・セン講義 グローバリゼーションと人間の安全保障」アマルティア・セン 著, 加藤幹雄 翻訳、筑摩学芸文庫 C0133、セ-5-2(ISBN978-4-480-09819-1, 2017.9.10)
    1998年度ノーベル経済学賞受賞者 Amarutya Sen 氏による第13回石坂記念講演(第1章 グローバリゼーション―過去と現在、第2章 不平等の地球規模拡大と人間の安全保障)に、東京大学名誉博士授与(1人目)を記念した講演(第3章 文明は衝突するのか―問いを問い直す)と「ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス」に掲載された論文の和訳(第4章 東洋と西洋―論理のたどり着くところ)が加えられている。アマルティア・センの業績との関係などを付した山脇直司の解題がついており、他の業績などとの関係もわかる構成になっている。
    以下は備忘録: (2018.6.29)

  24. 「国際基督教大学ーシリマン大学 国際サービス・ラーニング・モデル・プログラム 報告書」平成19(2007)年3月、国際基督教大学サービス・ラーニング・センター
    United Board of Chrstian Higher Education in Asia (UBCHEA) の支援に加えて、平成17年度「大学教育の国際化推進プログラム」に採択され、2006年度から三年間、Silliman University, Lady Doak University, アフリカの Malawi と三カ所で実施したモデルプログラムの一回目の報告書である。Silliman University で、30日間のサービス・ラーニングを行う学生に引率して来たときに読んだ。学生は、最初24名参加の計画だったようだが、結局は、20名、国際基督教大学(6人)以外は、Lady Doak College(1人), Seoul Women's University(2人), Soochow University(東呉大学・台湾 1人), Silliman University(8人)。教員は、Silliman University から、Betsy Joy Tan 副学長を含む、8人、国際基督教大学からは、西尾隆、センター長以下、Tamario Rivera 教授、毛利勝彦準教授、村上むつ子、コーディネーター、Florence McCarthy 特別顧問が参加、それ以外に、UBCHEA, LDC, 香港中文大学、東呉大学からもひとりずつ参加している。
    以下は備忘録: (2018.7.3)

  25. 「超入門 インドネシア語」左藤正範著、東京大学書林発行(ISBN978-4-475-01830-2, 平成9年5月30日)
    サービス・ラーニングでのインドネシア引率時に読む。とても、よくできている、または、わたしにあっていると思う。DVD, CD も付いていないが、この本は読みやすい。例が多く、言い回しがたくさん書かれており、辞書も付いているので、チェックしながら進められる。何回か読めば、基本的な会話がすぐにでもできそうな気がする。インドネシア語は、発音も、文法も、比較的簡単なことと、以前、ほんの少し学んだからもあるかもしれないが。ぜひ、また、インドネシアにくる時は、この本を友としたい。
    (2018.7.21)

  26. "DIRT, The Ecstatic Skin of the Earth" by William Bryant Logan, W.W. NORTON, NEW YOIK - LONDON (ISBN:978-0-393-32947-6, 1995, pp.202)
    ミンダナオでの植林事業について、サービス・ラーニングで調査に行くときに、環境研究で土壌の専門家でもある方から、お借りして読んだ。実際には、ほかの本も読んでいたからだが、土壌という、勉強したことのない分野で、知らない単語も多く、何を意味しているのか想像することも困難で、辞書も使ったため、時間がかかってしまったことも確かである。予想していたとおり、すばらしい本である。裏表紙にある次の言葉だけでも十分である。"You are about to read a lot about dirt, which no one knows much about."
    以下は備忘録: (2018.7.22)

  27. 「On Ethics and Economnics, Amartya Sen アマルティア・セン講義 経済学と倫理学」アマルティア・セン、徳永澄憲・松本保美・青山治城訳、ちくま学芸文庫セ−5−1(ISBN978-4-480-09744-6, 2016.12.10)
    アマルティア・センの少し古い講義である。ちくま学芸文庫版となったものを、インドネシアとケニアへの旅行中に読んだ。備忘録にも引用しているように、経済学の基本前提として「実際の行動の決定要因は自己利益最大化」であるとしていることに対する問いから論じている。倫理学と経済学が離れてしまったことに違和感を感じていると言っても良いだろう。互いに、もっと影響しうるものとしている。
    以下は備忘録: (2018.7.23)

  28. 「山口組 顧問弁護士」山之内幸夫著、角川新書 K107(ISBN978-4-04-082093, 2016.10.10)
    ヤクザが行く場所の無い社会的弱者の受け皿となり、一般的に好まれない仕事(産廃・倒産)の処理を行っていることを知り、2015年11月に弁護士資格を失うまでその弁護士をしていた山ノ内幸夫氏に興味をもった。温和そうな顔立ちにも惹かれ、自分は、ヤクザの弁護をするか考えたいと思い、読むこととした。実際のヤクザ社会と関わって来ているため、文章に勢いがあるが、こなれているとは言えない。
    以下は備忘録: (2018.7.29)

  29. “Service-Learning in Asia, Curricular Models and Practices”, Edited by Jun King and Carol Hok Ka Ma, Hong Kong University Press (ISBN 978-988-8028-47-4, 2010)
    Three themes: service-learning and indigenous traditions; service-learning and social justice education; and service-learning and multicultural education. Contents. Forward by Edward K.Y. Chen, President of Lingnan University 1995-2007.
    List of Contributors. (2018.8.3)

  30. 「『維新革命』への道 『文明』を求めた十九世紀日本」苅部直著、新潮社(ISBN978-4-10-603803-7, 2017.5.25)
    「明治維新で文明開化が始まったのではない。すでに江戸後期に日本近代はその萌芽を迎えていたのだ。」と裏表紙にある。サミュエル・P・ハチントンの「諸文明の衝突?("The Clash of Civilization?" Foreign Affairs, Summer 1993)」から始めて、明治維新を理解する「和魂洋才」と「民衆不在」の二つの罠(p.26)について説く。この分野は勉強したことがないが、おそらく意欲作なのだろう。興味深かったのは「維新」は「復古 Restoration」か「革命 Revolution」かを、西洋での受け止め方と、日本における理解とを対照させた点。「文明」と「開化」の言葉の語源と意味、儒学は「堯舜三代」や文王など、過去の名君を理想の統治者とし、西洋の将来の理想を追う進歩と比較している点である。「江戸後期にすでに日本近代は萌芽を迎えていた」というのであれば、この書を読む限り、徳川吉宗の享保の改革で1720年に「中国から長崎を通じてもたらされる漢訳洋書について、キリスト教と関係のないものについては輸入を解禁する措置をとった」(p.133)ことと、このあと、米の生産量も増え、商業が振興するなかで、学問を学びたいという意欲が一般の人にも広がり、広く学ばれたことが鍵であると思った。懐徳堂、山片蟠桃、Rutherford Alcock「大君の都ー幕末日本滞在記」に興味を持った。本人も「研究の中間報告」(p.272)としているが、論理的には、粗い部分が多く感じられる。
    以下は備忘録: 最後の文章は、サービス・ラーニングに通じる。著者の専門である「思想史」の研究手法に通じる要素があるのかもしれない。
    (2018.8.7)

  31. 「高俊明詩集 瞑想の森」高俊明著、医学出版社(2018.2.9)
    著者は1929年台湾で生まれる。台南神学院卒業、(山地族など原住民のための)玉山神学院院長13年、台湾基督長老教会幹事18年、4年3ヶ月台湾の人権運動のために入獄、台湾と世界各地で伝道、夫人高李麗珍との間に一男二女。一老人の死:身もとに残したのは八十二円と十銭(中略)人の眼にはいやしい者、神の眼には貴い宝、人の眼にはあわれなもの、神の眼にはさちあるもの(p.20)ひきさかないでください:イエスはささやいた、私はあなたがたのものです、私をひきさかないでください、私を四つざき(天主教・ギリシャ正教・プロテスタント・無教会)にしないで下さい、あの凄惨な十字架の苦杯を最後まで飲みほした私ではあるけれども、あなたがたの残酷な四つざきには、堪えられないのです。(p.96)百合は百合らしく:迷信化したからプロテスタントに!形式かしたから無教会になりたい!よくけんかわかれするからカトリックになりたい!などと考えてはいけない。雄々しく担うのですその罪となやみを!責め且つあげつらうのです愛するが故に!ひきさかれるまで戦うのですその場で!(p.106)サボテンと毛虫(p.111)美しい日本に(p.113)最後に「台湾に光を」が掲載されている。おそらくここにすべてが詰まっている。それは、ネットには掲載できないのかもしれない。台湾に光を:愛、それは結婚と友情を通して台湾の住民、つまり高砂族、台湾人、大陸人、客家のひとたちを、美しく調和した一つの民族に、織り上げる。(p.154)
    (2018.8.8)

  32. 「分かちあう心の進化」松沢哲郎著、岩波科学ライブラリー 273(ISBN978-4-00-029674-8, 2018.6.14)
    著者は霊長類学者で、チンパンジーの研究を中心にすえアイ・プロジェクトを行っている。比較認知科学の紹介、また、化石には残らない、こころの進化の研究とも著者はいう。類人猿を名前でよび、男性、女性について語る著者からは、類人猿たちへの敬意と表現してもよいほどの、愛情を強く感じ、研究手法にも、共感をもつ。
    以下は備忘録: (2018.8.11)

  33. 「東京バプテスト教会のダイナミズム 日本唯一のメガ・インターナショナル・チャーチが成長し続ける理由(わけ)」渡辺聡著、YOBEL,Inc.(ISBN978-4-946565-43-4, 2010.8.25)
    東京都渋谷区にある国際教会の内部からのレポートである。2000年ごろには300人程度の教会だったが、2009年時点で1300人程度が5回の礼拝に集っているとされている。約半数が日本人で残りの半数は世界中から集っているという。知人も知り合いの学生も通っている教会である。アメリカでいくつかのメガ・チャーチを訪ねた。その経験もあり、個人的には、メガ・チャーチといわれる教会、その宣教とは距離をとっているが、学ばせていただきたいとは思っているので、今回、手にとった。簡単に、なぜ距離をとっているかについて書いておくと、神様の御心または真理を、自分は得ていないと考えていること、それゆえに、他者と接するとき、一人ひとりの尊厳(神様の作品、愛しておられる存在)をたいせつにすることは、自分が信じていることを直接的に伝えることではなく、愛を持って互いに仕え合い、ともに生きる道を模索する営みだと考えているからである。この本を読んで、わたしの現在の信仰とはかなり異なること、しかし、多くの学ぶことがあること、すなわち、わたしにはわからないことがよりたくさん見えてきたことを記しておく。
    以下は備忘録: (2018.8.13)

  34. 「人生で一番知りたかったこと ビッグクロスの時代へ」高橋佳子著、三宝出版社(ISBN4-87928-041-0, 2003.5.8)
    この本をはじめとして、友人から合計で5冊の同著者の本を頂いた。そのうち、この一冊のみを読んだ。著者は宗教法人GLA(God Light Association の略とある)を主宰し、各種、TL(トータルライフ)人間学(魂の学)を提唱しセミナーなどで講演をしている。本書の印象は、著者が求めて、理解したり、示されたとしていることを、丁寧に書いているということである。普遍的な問は含まれているが、全体としての普遍性には疑問を持つ。現代の世界の問題はわたしには、もっとずっと複雑に思われる。むろん、わたしが、答えを持っているわけではない。問自身や答えを求めて日々生きていきたいと願い考え行動しているが。表題にかけるなら、人生で一番知りたいことがなにかという問からも、わたしはまだはるかに遠い場所にいるように思われる。そのぐらいにしておこう。
    (2018.8.13)

  35. 「みんなで学ぼう その人を中心にした認知症ケア」長谷川和夫・中村考一共著、ぱーそん書房(ISBN978-4-907095-33-8, 2016.5.8)
    "Person Centered" による認知症ケアに関する小冊子。長谷川氏が主として書いているのは、最初の序文と、項目に時々現れるコメントのみ。42項目の問題行動について「原因を考えてみましょう」「ケアのコツ」そして「寄り添う視点」が書かれている。基本的な考え方以外は、実際の原因は個人個人異なり、不明なことが多いので、記述に重複が多い。
    以下は備忘録: (2018.8.15)

  36. 「いま世界ではトヨタ生産方式がどのように進化しているのか!」中野冠著、日刊工業新聞社(ISBN978-4-526-07722-7, 2017.6.23)
    「日本のものづくり」「トヨタ生産方式」「ひとづくり」に興味を持って、手にした。わたしの目的には合った本ではなかった。しかし、京都大学の数理工学から豊田中央研究所にはいり28年働き、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授として、世界の有名大学からも大学院生を受け入れ指導している著者から学ぶ点はあったように思う。最初の目的に合った本はまた探してみたい。
    以下は備忘録: (2018.8.18)

  37. 「人間性尊重のモノづくりを極める トヨタ式人財づくり」トヨタ生産方式を考える会編、日刊工業新聞社(ISBN978-4-526-05925-4, 2007.7.31)
    トヨタ式カイゼンと言われているものは、日本の文化的背景のもので、特殊な状況下の最適解を求めたものなのか、それとも、普遍的なものが読み取れるのかを考えながら読んでみた。Community Development の要素が強いと思うが、普遍性が高いものとして移植できるかは、もう少し考えたい。そのためにも備忘録を残す。 (2018.8.22)

  38. 「こどのも貧困 日本の不公平を考える」阿部彩、岩波新書1157(ISBN978-4-00-431157-7, 2008.11.20)
    著者は、Massatusette Institute of Technology 卒業、Tafts University フレッチャー法律外交大学院修士・博士、国際連合、海外経済協力基金を経て、現在、国立社会保障・人口問題研究所社会保障応用分析研究部長。サービス活動に関わっていると「こどもの貧困」は大きなテーマである。しかし、サービス・ラーニングで学生の大学での学びとの関連づけを経験してもらうためには、ぜひ、このような本も読んでほしいと願っていたが、次女が政治学のテキストで読んだと家にあったため、読むことにした。「筆者は、児童福祉関係者でもなければ『貧しいこども』に日々接しているわけではない。そのため、現場における一人一人具体的なこどものケースや描写を本書に含めることはできない。本書の目的は、日本の子どもの貧困について、できるだけ客観的なデータを読者に提供することである。データは、政治を動かす上でパワフルなツールである。これらのデータを精査しながら『日本の子どもについて、社会が許すべきでない生活水準=こどもの貧困』が何であるかを、読者と共に考えていきたい。」(vi)とはいえ、アンケートによる質的調査での自由記述結果も含む。相補的で、適切な本である。
    以下は備忘録: (2018.8.24)

  39. 「聖書の全体像がわかる 神の大いなる物語」ヴォーン・ロバーツ著、山崎ランサム和彦訳、いのちのことば社(ISBN978-4-254-03482-7, 2016.7.10)
    "God's Big Picture: Tracing the Storyline of the Bible" by Vaughan Roberts の翻訳。訳者を個人的に知っていることもあり、いつか読もうと考えており、積んであったので、旅行中に読んだ。「聖書の内容を一つにまとめる最も重要な主題が一つあります。それは、イエス・キリストを通して神が提供される救いです。」(p.23)「神の言葉=聖書が一人の著者」として統一的に見る見方は、今のわたしの聖書理解の立場ではないが、宗教の聖典とするとき、このことから逃れることが困難であることも、理解はしている。
    以下は備忘録: 人は単純な理解に魅力を感じるのだろう。
    (2018.8.27)

  40. 「解決!フェルマーの最終定理 現代数論の軌跡」加藤和也著、日本評論社(ISBN4-535-78223-7, 1995.10.15)
    1993年6月23日に、プリンストン大学のA.ワイルスが、フェルマーの最終定理の証明を宣言し、その後、証明の不備が見つかり、1年以上に苦考の末、1994年9月19日にその修正に成功したこの期間に、著者が証明の解説として数学セミナー読者向けに書いたものを集めたものである。厳密性はないが、極力丁寧に、正確に伝えようとする、著者の誠実さと、理解の深さが伝わってくる。原論文の 1. A. Wiles; Modular elliptic curves and Fermat's last theorem, 2. R. Taylor, A. Wiles; Ring theoretic properties of certain Heck algebras にも、整数論にも、非常に惹きつけられる内容だった。購入時にも読んだと思われるが、詳しく覚えていないところをみると、理解しようとはしていなかったのかもしれない。むろん、今回も十分な時間をかけて読んだとは言えないが。
    以下は備忘録: (2018.8.29)

  41. 「ありがとうも ごめんなさいも いらない 森の民と暮らして 人類学者が考えたこと」奥野克巳著、亜紀書房(ISBN978-4-7505-1532-8, 2018.6.22)
    著者は1962年生まれで、立教大学異文化コミュニケーション学部教授。人類学。ボルネオの狩猟採集民「プナン」でのフィールドワークから、自らの価値観を問い直し、ニーチェのことばを手がかりに「当たり前」をひっくり返していく、人類学を通しての知の探検のエッセイである。東南アジアの最初が、わたしも1970年に訪ねた、ボルネオ島のサマリンダであったことも、興味を惹かれた。ニーチェのことばの引用に興味を惹かれた。いつか、挑戦してみたい。
    以下は備忘録: (2018.9.2)

  42. 「AI時代に『頭がいい』とはどういうことか」米山公啓著、青春出版社(ISBN978-4-413-04550-6, 2018.8.15)
    興味のあるトピックの新刊だったので、読んだが、正直、著者(作家・医学博士、脳神経内科)はAIの最近の状況についてなにも勉強しないで書いているようだ。それでも、脳神経内科の知識などが得られるかと思い、読み進めたが、残念ながら、あまり益はなかった。
    以下は備忘録: (2018.9.14)

  43. 「交わりの宗教 ヨハネ書翰講釈」松村克己著、西村書店(昭和二十二年十二月二十日)
    ヨハネの手紙一・二・三を聖書の会で学んだときに、少しずつ読み進めた。他に注解書を6冊ほど最初は借りたが、結局、基本的な聖書注解で情報を確認する以外は、この書のみが残った。キリスト教神学からの解釈から聖書の一巻を読む姿勢は、変わらないため、講釈に本質的に同意できるとは言えないが、交わりの宗教として、そこに本質を見定めようとして、そこから、解釈しようとする、著者の一環した読み方に、しばしば目を開かれる思いがした。日高善一、山谷省吾両先生にささぐととびらにあり、石原謙文庫の印が押されている。「基督教の本質・特徴は何であろうか。色々の方面から色々にこれを規定することが出来ようが、わたしは『交わりの宗教』としてこれをいひ表はすことができると思ふ。基督教は愛の宗教と言はれる。がその愛とは交りにおける愛に他ならぬ。神と人との間の交り、それによって開かれ、また固くされる人と人との間の交り、愛の共同としての結合、それが基督教の真髄だと思う。そして、この両面の交りを同時に成立たしめ可能にするものがイエス・キリストである。基督教信仰は所詮イエス・キリストにおける交りとして現実となり、彼との交りのうちに生きる。これは私の二十余年に亘る信仰の生活と基督教に関する学問とを通して確かめられた単純な真理である。」(はしがき)一気に読んでわけでは無く、十分理解はできていないが、このような古い書物から、学びを得ることができたことは、喜びでもあった。
    (2018.12.10)

  44. 「アリになった数学者」森田真生・文、脇坂克二・絵、福音館書店(ISBN978-4-8340-8434-4, 2018.10.5)
    絵本ではあるが、子どもがどのように受け取るのかは不明である。プレゼントして頂いたので、数学者として読ませていただいた。「『数』や『図形』は、からだや星とちがって、この宇宙のどこを探してもない。3本のペンとか、3匹の羊ならあっても、『3そのもの』はどこにもない。『このあいだほんものの3を見てきたけど、思ったよりも小ぶりで青かった!』なんて話は聞いたことがないはずだ」「数学者は、存在しないものについて研究しているのだ。」「存在しないものに興味があるのは、数学者だけではない。だれだって友達の笑顔を見たらうれしくなるし、落ち込んでいる人を見たら悲しくなる。このひとはいまうれしいとか、この子はいま悲しいとか、そういうことがわかるはずだ。では、喜びや悲しみ『そのもの』はどこにあるのか。」「数学のいいところは、国を超えて、人種を越えて、世界中の人と通じ合うことである。」「数学は、人間どおしであれば、だれにでも通じるのである。でも、この地上の生きもののほとんどは、人間ではない。その人間ではない生きものたちに、果たして数学は通じるのか。」「『だれにでもつうじるはずだ』とぼくが信じていた数学のことばは、アリには少しも伝わらないのだ。数のない世界。数学の通じないくらし。それがアリの日常なのだ。」「わたしはここで、朝の露をかぞえていたのよ。今朝数えただけでも三万五千六百七十一の露・・・」「あなたにはそれが、みえるんですか?」「見えるというより、じっと耳を澄ませて聞くの。音で、味で、あるいはにおいで、あらゆる感覚で、露のことばを聴きわけるのよ」「わたしたちにとっての数は、人間の知っている数とはちがう。わたしたちにとって数には、色や輝きや動きがあるの。」「昨日も雨が降るまえに、アリたちはいち早くそれを察知していた。人間が膨大な計算をしても外れることがある天気予報とはちがうしかたで、アリたちは未来を正確に『計算』していた。その計算を支えていたのは、人間の知っている数とはまったくちがう種類の『数』だった。」「人間が知っている数もいまだに変化し続けている」「『うごいて生きている数』ということばが人間にもわかる日がくるかもしれない。」ほんの一部をとりだしたが。安野光雅氏が帯に書いているように「この本は、数学の核心にしっかり触れたとても美しい『絵本』なのです。」上手に数学のひとつの本質が表現されている。
    (2018.12.23)

  45. 「バルト自伝」カール・バルト、佐藤敏夫編訳、新教出版社(新教新書279)(ISBN978-4-400-834050-8, 2018.4.30)
    1939年「クリスチャン・センチュリー」誌の企画で「最近十年間に私の心はいかに変化したか」(How My Mind Has Changed in the Last Decade)とのテーマで依頼された寄稿文である。ヨーロッパからはバルト一人、同じ企画に3回応じた文章が収録され、それに、含まれていない1939年以前のことと、背景を訳者がつけている。バルトは1886年5月10日生まれであるから、I.1939年(バルト42歳から52歳)、II.1949年(52歳から62歳)、III.1959年(62歳から72歳)、歴史的にも、ナチの台頭で、ミュンスターのあとに赴任したボンからバーゼルに戻った時代、戦中・戦後と、冷戦時代にわたっており興味深い。個人的にはIIIの冷戦時代のものが最も興味深い。教義学は、私がもっとも距離をとる分野であるが、その中に、自らを置いて、最大の貢献をし続けたバルトに敬意を表すると共に、そのすべての知的営みを冷静に行い、特に冷戦時代において、西側に単純に与しないで批判もつづけ、冷静に共産主義を批判し、そこにいるキリスト者との関係を大切にするバルトの姿勢と、それをなかなか理解できない世界状況に最も感銘をうけ、考えさせられた。
    以下は備忘録: (2018.12.26)


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