解析的整数論の著名なイギリスの学者の数学 (1877-1947) についての弁明。リトルウッドとの共同研究、インドの天才、ラマニュジャンを見い出したことでも有名。スノーの文章は非常に洗練されていて、かつ配慮もあり、読みやすい。また訳者解説もわかりやすい。しかし、圧巻は、主要部分である、ハーディの文章であろう。数学の価値を、ある視点から述べている。非常に考えさせられた。もう一度英語で読んでみたい。いくつかの引用を記す。「数学がどの芸術や科学の分野にもまして、若い人のものであることを、数学者は一時たりとも忘れてはならない。」(p.9) 「人の第一の義務、少なくとも若い人のそれは、野心的であると言うことである。野心は高貴な情熱で、様々に異なるがいずれも正当な形をとって現れる。」(p.14) 「野心は、この世の最良の仕事のほとんどすべてを成就させる力の源である。特に、人間の幸福に真に寄与するたいていのことは、野心のある人の手によってなされた。」(p.15) 「チェスの指し手の問題は真正の数学であるが、ある意味では「とるに足らない」数学でもある。その指し手が、どんなに巧妙で複雑な動きで、またどんなに独創的で人の意表を突くものであろうが、何かそこに本質的なものが欠けている。チェスの指し手の問題は重要 (important)でないのである。最高の数学は美しいばかりでなく、重い (serious) のである。」(p.23)「多数意見を述べるなどと言うのは、一流の人の時間を割くに値しない。定義によってそうする人は他に大勢いるからだ。」「数学者と物理学者の立場の違いは、恐らく普通考えられているよりも少ない。私の見るところでは、最も重要な違いは、数学者の方が実在とはるかに直接的な関わり合いを持つと言う点にある。」(p.49) 「若者はうぬぼれなければならない。しかし愚かであってはいけない。」「人は時には難しいことを言わねばならないが、しかし、それをできるだけ簡潔に言わねばならない。」
(2005年1月1日)
しばらくお休み。