"King George III", by Robert Green, A First Book Franklin Watts, Division of Grolier Publishing, New York, London, Hong Kong, Sydney, Danbury, Connectcut, 1997 (ISBN 0-531-20333-6)
From the back cover, "King George III (1738-1820) ruled England for fifty years, in a time of revolutions and wars that changed the course of western history. The American colonies revolted and declared their independence from Britain. The French Revolution toppled the monarchy in France and let to war with Britain. Britain began to build an empire with new territories in Africa, Asia, and Autralia. George had to fight constantly to retain power in this era of democratization. He also fought an illness htat made him apear insane. In the end, he succumbed to the disease, lost his eyesight, his mind, and his throne, and was remembered more as an old tyrant than as the strong ruler he once had been."
アメリカの植民地を失った王として歴史に刻まれているイギリスの王である。Hanover 朝3代目、ドイツ系である。小学生中学年レベルと思われる。アメリカ独立を学ぶとき、その時のイギリスを知ることは、非常に有効であるだけでなく、この当時のヨーロッパの背景をまなぶこと、そのなかで王家がどのように生きていたかを知るためにも、とても興味深かった。
(2002年1月13日)
"Julie of the Wolves", by Jean Craighead George, Harper Trophy, Winner of the Newbery Medal (ISBN 0-06-440058-1)
From the Back Cover "Lost on the Tundra. To her small Eskimo village, she is known as Miyax; to her friend in San Fransisco, she is Julie. When the village is no longer safe for her, Miyax runs away. But she soon finds herself lost in the Alaskan wilderness, without food, without even a compass to guide her. Slowly she is accepted by a pack of Arctic wolves, and she grows to love them as though they were family. With their help, and drawing on her father's teachings, Miyax struggles day by day to survive. But the time comes when she must leave the wilderness and choose between the old ways and the new. Which will she choose? For she is Miyax of the Eskimos -- but Julie of the Wolves."
Winner of the 1973 Newbery Medal "Jean George has captured the subtle nuances of Eskimo life, animal habits, the pain of growing up, and combines these elements into a thrilling adventure which is, at the same time, a poignant love story." (Starred review)
小学校6年のクラスで通読の宿題として与えられた図書で、ニューベリー賞をとったものである。アメリカの文化の入りかけているアラスカの町で、早くに母親に先立たれ、父親の狩りにおぶわれながら同行していた少女が、いずれ、学校へ行き、サンフランシスコにペンフレンドを持つが、親の約束ということで、遠くの町の男性と結婚することになる。精神的に問題のある男性から逃れ、サンフランシスコのペンフレンドのところへ行くべくアラスカの原野を旅することになる、エスキモーの少女 Miyax の物語である。食料が尽きたとき、狼とのコミュニケーションにより狼と友達となり、共に生活し、あるコミュニケーションを覚え、そのなかでエスキモーの生き方に芽生えていくのだが、最後がなんとも、悲しく複雑な終わりかたである。非常に豊かな表現にあふれた素晴らしい本であるが、個人的には、英語が難しかった。動物に関する語彙が多かったからもあろう。何度も同じ単語に出会い、半分過ぎまでは、読み終わらないかもしれないと思えたほどだった。動物が好きな人には、よけい素晴らしい本であろう。Newbery Medal に輝いた図書は本当によいものが多い。
(2002年1月18日)
"The United States - Part 1/ Discovery to the Civil War, by Diane Hart, Globe Fearon (ISBN 0-822-47193-0)
高等学校 English as a Second Language (ESL) における History of the United States の1学期目の教科書 (124 pages)。2学期目は、もう少し厚いものに変わった。全体を読んでみて、気づいたこと。自分たちの国が、それぞれの問題のなかで、どのような選択をしていったか。を主題として書かれており、単なる、歴史的事件の記述ではない。現代に当てはめて、同様の問題は、無いか。それは、どのように扱うべきかなどの問いも多数含まれている。黒人奴隷、周囲の国との抗争、インディアンとの問題が、それなりにしっかりと書かれている。同時に、それぞれの暗い歴史記述、または、暗い時代のあと、内部の改革を熱心にする様子は、読み取れる。(The Americans rebel against Mexico, The Texas revolution, The War with Mexico, The Gold Rush, Conflict with Native Americans, Indian Removal by the President Andrew Jackson, known as People's President, The Trails of Tears of the Cherokees. These all are followed by The Religious Revival, The Temperance Movement, Hilping the Helpless and the Disabled, and the Women's Movement which led to the Declaration of Sentiments) しかし、自分のコミュニティー以外の人との問題解決は、非常に下手である。他の国がどのような問題を抱える中で、そのような問題が起こり、アメリカのある行動の結果、それらの国に、どのような影響を及ぼしたかについては、全く配慮されていない。これが、人間の歴史なのかもしれない。アメリカの歴史を学ぶことにより、アメリカ人を少しでもよく理解し、神様の前の罪人として、へりくだり、共に働くための、一つの助けとなればと願っている。単に興味としても、非常に面白い。
(2002年1月29日)
"The Indian School", by Gloria Whelan, Harper Trophy (ISBN 0-06-442056-6) pp.1-89
Middle School 8年生の English as a Second Language (ESL) における Reading assignment の一つ。通常は、小学校4年生程度か。From the back cover, "She would never forget what she learned there ... When shy, ten-year-old Lucy goes to live with her aunt and uncle at their mission school for Indians, she is surprised at the number of harsh rules and restrictions imposed on the Indian children. Why, she wonders, should the Indians have to do all the changing? And why is her aunt so strict with them? Then Raven, an Indian girl, runs away in protest, and Lucy knows she must overcome her timidness and stand up to her aunt -- no matter what the consequeneces. Once agan Gloria Whelan has taken a chapter from our past and transformed it into gripping, accessible, and historically accurate fiction."
開拓時代、インディアン達が、森から追われ、白人達の生活様式を受け入れざるをえないなかでの、キリスト教のインディアンの子供たちのための学校での話がよく書かれている。このようなことも実際あったのではないかと思わされる。小説としての面白さとともに、この時代のインディアンの痛みについて、考えさせられる一つの例を与えている。
(2002年2月2日)
"Night", by Elie Wiesel, Bantam Books (ISBN 0-553-27253-5) pp.1-109
Middle School 8年生の English の Reader。クラスで ディスカッションをしながら、毎日1章ずつ進んでいく。我が家では、実際には、8年生の息子は、読めないため、私が読んで話をし、ディスカッションが多少理解出来るように手助けをした。From the back cover, "NIGHT-A terrifying account of the Nazi death camp horror that turns a young Jewish boy into an agonized witness to the death of his family ... the death of his innocence ... and the death of his God. Penetrating and powerful, as personal as THE DIARY OF ANNE FRANK, NIGHT awakens the shocking memory of evil at its aboslute and carries with it the unforgetttable message that this horror must never be allowed to happen again." "ELIE WIESEL was born in the town of Sighet in Transsylvania. He was still a teenager when he was take from his home to the Auschwitz concentration camp and then to Buchenwald. His memoirs of that experience are unforgettably recorded in NIGHT, which became a worldwide bestseller. Elie Wiesel is Andrew Mellon Profdessor in the Humanities at Boston University and founding chairman of the United States Holocaust Memorial Council. --- The Novel Peace Prize in 1986." 「夜と霧」とは大分異なる。体験をした人の年齢、背景が大きく違うためもあろう。哲学的なもの、神学的なものなしに書かれている本書は、かえって淡々と書かれている。それゆえに、生気をぬかれた人間がバタバタと死んでいく底知れぬ恐ろしさを読者が能動的に感じなければいけない状況を作りだしている。主人公の父の骨と皮ばかりになってからの超人的な頑張りには、最後に死んでしまうことがわかっていても、ついつい声援を送ってしまう。愛する息子の存在、そのために、生きなければという執念に感動を覚える。
(2002年2月7日)
"Sadako and the Thousand Paper Cranes", by Eleanor Coerr, paintings by Ronald Himler, G.P.Putman's Sons, 1977 NEW YORK (ISBN 0-399-20520-9), pp.1-64
走ることが得意な少女(Sadako Sasaki 1943 -- October 25,1955) が、被爆の後遺症として白血病になり、友人 (Chizuko) に回復する願いを込めて千羽鶴をおるようにともらった金の折り鶴に加えて鶴を折り続けるが、644羽折ったところで力つきて死んでしまう。この千羽鶴の少女は、銅像となり、広島の平和祈念公園にある。小学校6年の娘が小学校の図書館で日本に関する本として借りてきたものである。英語での書き下ろしで、英語的な表現できれいに書かれている。原爆による無数の死のうちの一つだが、改めて人間のなすことのむごさを感じさせられた。
(2002年2月8日)
"Simple Checkmates", by A.J. Gillam, Ballentine Books, New York, 1978 (ISBN 0-345-40307-X)
詰め Chess 433題をあつめたもので、すべて非常に簡単なものばかりである。私は、全くの初心者だが、囲碁での経験から、まずは、簡単な詰め将棋のようなものをたくさんこなして、読む力とそのゲームに慣れることが1番だと思っている。特に、 Chess のように、コンピュータプログラムで十分強いものがあるときには、実践はそれを利用することも出来る。著者は、小学生に長い間、Chess を指導していたひとで、その経験から、このような本の有効性を感じ書いたようである。すぐ答があり、長い説明を読む必要はない。非常に明快である。すべて Checkmate in One Move または、in Two Moves であるが、時々、1手目が、Check でないものが含まれていてそこでは、どうしても立ち止まってしまう。Chess と 将棋の違いもそこにあるように思われる。将棋では、縛りは重要でも、非常に長く、王手が続く詰め将棋で優れたものが多い。それに比べて、Chess は、コマをどのように減らしていくかが、重要な要素で、全体の形勢判断がの方が大切だということによっているかもしれない。学校教育の課外活動としての Chess は、どこでも盛んである。
(2002年2月11日)
「クイズで学ぶ大学の物理(たいくつな力学と波動がおもしろい)」飽本一裕著、講談社(ブルーバックス B1328, ISBN 4-06-257328-8, 2001.4.20)
著者は、1954年山口県生まれ。広島大学理学部物性学科卒、カリフォルニア州立大学物理・天文学科修士課程をへて、メリーランド大学物理・天文学科博士課程修了。Ph.D. ロスアラモス国立研究所を経て、現在帝国大学理工学部電気・電子システム工学科。自身、高校までは、学校の勉強が嫌いだったので、勉強嫌いの学生達に学問の面白さを教えることをライフテーマにしているとある。「物理の潜在的な面白さは、テレビゲームやお笑いをはるかに越えるものがあります。それらを、学生さんたちはもちろん、世の中に的確にアピールすることは物理学者の責任だと思うようになりました。(はじめに)p.5」非常によく書かれている。それだけに、たくさんの本を参考にし、実際のデータをたくさんのせて、身近な問題を考えられるように、頭を使うように出来ている。それでいて、数式を避けることなく、おはなしに終わらず、物理学をやさしく、興味を刺激しながらといている。まだまだ、素晴らしいものになっていくだろうとの期待を持つと同時に、この著者のような人がもっとふえ、協力して、物理学の教科書を書くようになり、より多くの人にアピールできるようになることを期待する。個人的にも、非常にたくさんの事を学び、感銘を受けた。ブルーバックスの本としても、傑出していると思う。著者には、これにさらに磨きをかけて、素晴らしい本をまた書いてもらいたい。
(2002年2月24日)
"Our Presidents - James Earl Carter", by Lori Hobkirk, The Childs's World, Inc., Chanhassen, Minnesota (ISBN 1-56766-873-9, pp.1-48)
子供向きの写真も多い本である。39代目のアメリカの大統領。1977年から1981年。私がアメリカに最初に来たのは大学院の学生のときで1977年から1980年。その時の大統領である。人柄も、政治に対する姿勢も違和感なく受け入れられる数少ないアメリカの大統領だったが、アメリカ人への受けは良くなかったようで、ランキングでもワースト何位というように言われたようである。そういうこともあって、図書館の新刊に並んだときにすぐ借りてしまった。人種隔離政策に反対し、教育を重んじ、ジョージア州の州知事から大統領になったカーターのしたこと。Department of Education および Department of Energy を新たに作ったこと。教育の大切さを説き、エネルギーの節約をといて、1977年から1980年だけでオイル消費の20%をカットし、森林を守るため、アラスカのかなりの部分を保護地域とし、パナマ運河をパナマに返すという agreement を交わしたこと、Camp David Summit で Egyptian President Anwar Sadat と Israeli Prime Minister Menachem Begin を仲介してシナイ半島に関する、そしてパレスチナの平和について何らかの進展をさせたこと。SALTII という核兵器削減の協定をソ連と結んだこと。負のこととして言われるのは、経済政策についての対処がおそく、簡単に動かなかったこと。イランのアメリカ大使館での人質事件解決で、ヘリコプターの事故などでうまくいかなかったこと。結局解決は次のレーガン就任の直後となる。ソ連のアフガニスタン侵攻に反対し、穀物の輸出禁止とともに、モスクワオリンピック参加拒否、SALTII 批准の遅延などをし、経済的に打撃をアメリカにもあたえ、スポーツに携わる人の志気をおとしたこと。これらをもう一度復習しても、やはり、アメリカ人と私との考えの違いに思いをはせてしまう。アメリカの好きな大統領についても勉強してみたい。
(2002年3月20日)
"Dragon's Gate --- Golden Mountain Chronicles 1867", by Laurence Yep, Harper Trophy (ISBN 0-06-440489-7, pp.1-336)
From the back "In 1867, Otter travels from Three Willows Village in China to California --- the Land of the Golden Mountain. There he will join his father and uncle. In spite of the presence of family, Otter is a stranger among the other Chinese in this new land. And where he expected to see a land of goldfields, he sees only vast, cold whiteness. But Otter's dreams it to learn all he can, take the technology back to the Middle Kingdom, and free China from the Manchu invaders, Otter and the others boards a machine that will change his life --- a train for which he would open the Dragon' s Gate." 中国人から見た南北戦争直後のアメリカ。人種偏見の中で単にそれに抵抗するだけではなく、アメリカを冷静に評価して学んでいこうとする柔軟性は、魅力的。しかし、今の中国人たちは、このような夢を追い求めているのだろうか。そして、私はどうだろうか。アメリカをどう見るかどうかともに、日本になにを生かすか。まさに今考えているテーマがあるような気がする。文学としては、アジア人から見たアメリカに新鮮さを感ぜず、特別の感動はない。しかし、アメリカ人には、それなりに新鮮なのかもしれない。心の動きの形容に、アジア的なものを含んでいるように感じる。
(2002年3月26日)
「アメリカ古典文学研究」D. H. Lawrence、大西直樹訳、講談社文芸文庫 (ISBN 4-06-197682-6)
背表紙から「二十世紀文学の主要な一翼を担う D.H.ローレンスのアメリカ古典文学を論じて、近代批判にまで及ぶ名著。フランクリン、クレヴクール、フェニモア・クーパー、ホーソーン、メルヴィル、ホイットマンとアメリカ文学の古典たる作品をとりあげ、魂のありかを探る。ヨーロッパから見たアメリカとは、デモクラシーとは。現代アメリカを読み解くための重要な鍵。」前書き、地の霊、ベンジャミン・フランクリン、ヘクター・セント・ジョン・ド・クレヴクール、フェニモア・クーパーの白人小説、フェモニア・クーパーの「レザーストッキング小説連作」、エドガー・アラン・ポー、ナサニエル・ホーソーンと『緋文字』、ホーソーンの『ブライズデール・ロマンス』、デイナの『マストの前で過ごした二年間』、ハーマン・メルヴィルの『タイピー』と『オムー』、ハーマン・メルヴィルの『モウビー・ディック』、ホイットマン、それに訳者による、解説、年譜、主要著作・参考文献と続く。残念なことに、私はこの古典として取り上げられている本をどれ一つとして読んだことが無い。名前を聞いたことの無い本が殆ど。文学研究といった書物をひも解くのも初めて。大西先生から頂いた本を、この背表紙の言葉にひかれて、またアメリカの精神構造についての本に興味があり読んでみることにした。かなり刺激的な、そして多少頭が痛くなる本である。しかし、すぐにこのような文章を書く、ローレンスの精神状態と背景が知りたくなる。ローレンスは「チャタレー夫人の恋人」などで知られるイギリスの作家で詩人としても知られているらしい。ドイツのスパイと疑われたりもしたようで、ヨーロッパへの絶望と、アメリカへの期待、アメリカへの移住をも考えて、アメリカ文学をひもとき、批評・エッセーなどをある時期に書きためたようだが、動機をはるかに通り越して、自分と、アメリカの精神史を掘り起こす本にまでなったようだ。最後の訳者解説は非常に興味深い。そこでもあるように、この書を読んでいた感じたのは、白人にとっては、「ヨーロッパ精神からの逃避と接ぎ木」そしてアメリカ構成メンバーとしては、まったく、ビッグバンのように、爆発がなかなかとまらず「古典」などというものの議論がこの国にはにつかわしくないところで、ある普遍性のある批判的文章を書いているのには、やはり驚かされる。しかし、私には難しすぎたようだ。
(2002年3月28日)
「永遠と愛 - ブルンナー教授説教筆録集」新保満筆録
1953年から1955年まで2年間国際基督教大学に滞在した エーミル・ブルンナー氏の説教の筆録集である。筆録者は現在社会学者、カナダエスキモーの研究をしている。この書のできた経緯などは、綴じ込みに日高第四郎氏が書いている。「1953年国際基督教大学の教養学部が開設された際、世界的な神学者 Emil Brunner 博士がはるばるスイスのチューリッヒから東京に教授として赴任してこられた。先生は教室で基督教概論について感銘深い講義をされると共に、日曜日には教会堂で生きた信仰と霊感にあふれた説教を、接する人々に生涯忘れ難い影響を与えられた。その頃の学生に新保満(1953年入学)という人がいた。彼は、敗戦後まもなく父を失い、満州から引きあげてきたのであるが、新京?の小学校の級友 S 君と偶然福岡でめぐりあったのである。この級友もまた彼の地で両親を失い弟妹を引き連れて故国に帰ってきたものの、頼るべき身内もなく、戦後の混乱と無秩序のうちに生活難と戦い、すさび果てたのであろう。自暴自棄に陥って極めて重大な罪を犯し、長く刑務所に暮し裁判の結果、ついに死刑の宣告を受けたのである。新保君はこの級友を忘れがたく、何とかしてその力になろうとした。そしてブルンナー博士の説かれるキリスト教の福音と福音に浄化された先生の人格の高貴さと潤いにいたく感激して、その英語による説教を丹念に筆録し、さらに和訳してこれを顧みる人なきこの級友に読ませたいと2年以上も送り続けた。しかるに人を怨み世を呪うこの青年は、新保君のただならぬ友情も誠意もすなおに受け入れることができず、ただただその善意を利用して物品などの差し入れをしばしば要求してきた。これに対して、新保君は自らも学費の免除や補助を他人からうけなければ勉学できないような苦しい立場にあったにもかかわらず、その乏しい費用を節約して忍耐強くその求めに応じてきたのである。しかし新保君の送り続けた説教集は、この青年には長い間読まれずに積み重ねられていた。そのかわりに不思議にも刑務所の同房の囚人 U 氏に読まれた。U 氏はそれに感動し、悔い改めて篤き福音の信者になった。級友 S 君もまた処刑の時期の迫るにつけ、恐らくは一方には死の恐怖と生の不安に駆り立てられたであろう。他方では、同房の U 氏の熱心な勧めに動かされてはじめてそれまで顧みなかった説教集を熟読し、ブルンナー先生の精神に打たれて、はじめてたましいの目覚めを体験し前非を悔悟して真人間にたちかえって静かに刑にふくしたという。死刑囚のこの世の最後の浄められた遺言の一部始終は、改心した囚人 U 氏をとおして同時の大学総長湯浅博士に報告された。われわれ教授達は、教授会におけるこの報告の発表によって、はじめてこの地味な学生の底知れぬ経験、たゆみなき隣人愛、かくれた奉仕とを知らされた。われわれも一週間や十日ならこういう殊勝な心情ももつことはありうるであろうが。反応も見込みもない愛の奉仕を二年以上も祈りと沈黙の内に続けることは全くただ事とは思われない。私は遠くから頭を下げて新保君に心からなる敬意をあらわし、同時にブルンナー先生にも感謝と祝福を送らざるを得なかった。私は、長年学校の教師をしていて、折々驚嘆すべき秀才や頭抜けて頼もしい学生にめぐりあう格別の幸福を味わってきたが、こういうおのずから頭のさがるような学生にあったことは他では全くない。新保君は教養学部では、故 Dr. Jesse Steiiner 先生(アメリカの有名な社会学者でまれに見る高潔な人格者)などの特別な庇護のもとに社会学科を好成績で卒業した後、東京教育大学の大学院で社会学をおさめた。そして今はカナダにある Saskatoon 大学の Center of Community Studies の研究員として北部エスキモー人の実態調査と研究に従事している。かれの国際的な研究と人類愛に根差す奉仕に、上よりのゆたかな恵みを祈るものはきっと私ばかりではないと思う。」日高氏のような目で学生を見る先生がおられたことも国際基督教大学のすばらしいところだと感じ、記者の承諾を得ずに全文を打ち込んでしまった。
内容も2度ずつ熟読したが、非常に基本的なことをしっかりとしかしまた、キリストに人の心を結びつけようと説いておられるブルンナー氏の説教に感銘をうけた。これからも著作集などでもっと、ブルンナー博士について学びたいと思う。内容についてのコメントはその時まで延ばすことにする。
(2002年4月20日)
"Earthquake at Dawn", in Great Episode, by Kristiana Gregory, Gulliver Books Harcourt, Inc. , San Diego - New York - London (ISBN 0-15-200099-2)
From the back -- Photographer Edith Irvine and her maid, fifteen-year-old Daisy Valentine, are en route to a photography exhibit in Europe when their travels are abruptly canceled. From a boat in the harbor, Edith, her father, and Daisy watch the San Fransisco shoreline in horror.... something thumped our boat. Edith and I grabbed the rail. Mr. Irvine hugged Edith protectively and looked beyond the bow. "See anything?" the captain called to his crew. Before anyone could answer, we heard an ear-splitting boom, as if ten cannons had exploded. All heads turned toward shore. Immediately every light blacdked out, darkening the city into a silhouette agains the litening sky. "papa, what's happened?" A woman next to us screamed, then someone cried out the horrible word: "Eartyhquqke!" -- 1906 年4月18日のサンフランシスコ地震を、実在の女性写真家 Edith Irvine のもとで働く処女の目をとおして描いている歴史小説である。写真を撮ることを禁止される中、隠れてとった80枚の写真は、80年後に Utah にある Brigham Young University に寄贈され、そこで現在も保管されている。小学校6年生の課題図書として与えられたもの。実際に体験して人の手紙を各章の最初に引用し、臨場感を出している。読みやすく、その背景となる事実を隠そうとする知事、また中国人の様子なども書かれていて、ジャーナリストとしての目が現れている。行列についての記述を最後に記す。"The line would along a broken sidewalk for three blocks. People waited patiently; some sat on bricks or boxes along the way. There was an air of community as folks talked to those around them. Servent girls were treated as graciously as matrons in pearls. Chinese men were not shoved aside." (page 137)
(2002年4月30日)
"An Introduction to the Mainland Chinese Soul", LEAD Consulting, 2001 (pp.1-66)
中国人伝道を助けるための小冊子である。大陸の中国人の心を理解してもらい、福音宣教に役立てて欲しいと書かれたものである。現在の中国の状況から、かかわった人たちの名前は明らかにされていないが、About the Authors として次のように書かれている。"A diverse team of more than 30 people from different backgrounds and locations worked on this project. Most have actively studied or engaged in ministering to Chinise for more than a decade. They have volunteered to contribute to this project anonymously. The prayer of all who have been involved is that the insights woven together in these pages will enable you in your desire to relate to and serve the Chinese." となっている。(Contact Address: LEAD Consulting, PO Box 32026, Raleigh, NC 27622, USA) What can we learn from Chinese? という節などにもこの小冊子を編集した人たちの素晴らしさがよく現れている。アメリカにおけるこの手の冊子は、往々にして、"The Manual for Salesperson of 'Gospel'" になりがちだが、アメリカ人のクリスチャンが理解しやすい言葉で丁寧に書かれている。むろん、受け取るがわが他の読み方をすればどうしようもないが。この小冊子をとおして、わたしは、アメリカ人がこれは自分たちと違うとして書いていることをつうじて、アメリカ人との違いを認識できた麺が多かった。中国人と、日本人、非常に似ている面が多いが、やはり歩んできた道の違いか、相違点も学ぶことができたのは、よかった。最後に、上記の "What can we learn from the Chinese?" の出だしを抜き出す。"God's Love for Diverse Humanity --- Jesus came to demonstrate the full extent of the Father's love to humanity. Since Mainland Chinese are nearly 20 percent of humanity, one of the obvious aspects is that we can learn more of the Father's love for them. Learn to see His delight in the Chinese people and His passion for them. Let learning to love people different from you deeply impact your understanding of God's expansive love for all men and His specific love for you. Many have discovered new insights into God's character through the unique qualities in this culture. (p.56)"
(2002年5月28日)
"Meet the Amish", in the Peoples of North America series, by Fred I. Israel, Chelsea House Publication, New York - New-Haven - Philadelphia, pp. i-xvi + 1-80 (ISBN 0-87754-853-6)
著者は Professor of American History at City College of New York. From the back: "Though relatively small in number (total of 80,000 - 90,000), the Amish people have established a strong identity in North America. Like other ethnick groups, their history is unique and dramatic. Forced to migrate to the New World to retain their devout religious beliefs, the Amish founded settlements throughout the United States and Canada. The uniqueness of the Amish has brought them into conflict with the outside world on many issues, especially medicine and higher education. Apart from describing Amish customs, occupations, religious practices, this book explores the roots of the strong ethnic life of the Amish." このような本がたくさん出版されていることはすばらしい。Amish country in Ohio を訪ねたことを機会に読んだが、非常に良くまとまっていてかつ、いろいろなことを考えさせられた。中学や、高校のプロジェクトとしても良いだろうし、一般的な読み物としても良いと思う。
(2002年7月18日)
A Picture Book Biographies by David A. Adler, illustrated by John & Alexandra Wallner, Holliday House, Inc.
A Picture Books of Simon Bolivar [READ]
A Picture Books of Christopher Columbus [READ]
A Picture Books of Frederick Douglas [READ]
A Picture Books of Anne Frank [READ]
A Picture Books of Benjamin Franklin [READ]
A Picture Books of Thomas Jefferson [READ]
A Picture Books of Helen Keller [READ]
A Picture Books of John F. Kennedy [READ]
A Picture Books of Martin Luther King, Jr. [READ]
A Picture Books of Robert E. Lee
A Picture Books of Abraham Lincoln [READ]
A Picture Books of Florence Nightingale
A Picture Books of Jesse Owens [READ]
A Picture Books of Rosa Parks
A Picture Books of Jackie Robinson [READ]
A Picture Books of Eleanor Roosevelt
A Picture Books of Sitting Bull
A Picture Books of Sojourner Truth
A Picture Books of Harriet Tubman [READ]
A Picture Books of George Washington [READ]
some more
Carter G. Woodson The Father of Black History, by Patricia and Fredrick McKissack, Illustared by Ned O.
Great African Americans Series, Enslow Publishers, Inc.
Marian Anderson, A Great Singer
Louis Armstrong, Jazz Musician
Mary Mcleod Bethune, A Great Teacher
Ralph J. Bunche, Peacemaker
George Washington Carver, The Peanut Scientist
Frederick Douglass, Leader Against Slavery [READ]
Martin Luther King, Jr., Man of Peace [READ]
Mary Church Terrell, Leader for Equality
Ida B. Wells-Barnet, A Voice Against Violence [READ]
Carter G. Woodson, The Father of Black History [READ]
A Rookie Biography, Childrens Press, Chicago
Laura Ingalls Wilder, Author of the Little House Books, bu Carol Greene [READ]
Let's Celebrate, Silver Press
Priscilla Alden
Christopher Columbus [READ]
Abraham Lincoln [READ]
Harriet Tubman [READ]
Martin Luther King, Jr. [READ]
George Washington and President Day, by Dorothy and Thomas Hoobler puctures by Ronald Himler [READ]
Fraklin Watts biographies by Robert Green
King George III [READ]
Welcome to Japan, by Meredith Costain, Paul Collins,
ISBN 0-7910-6541-3
以下は夏の旅行の前後に読んだもの。
Coronado, by Robin S. Doak, Compass Point Books, Minneapolis, Minnesota,
ISBN 0-7565-0123-7 [READ]
The Battle of the Little Bighorn, by Marc Tyler Nobleman, Compass Point Books, Minneapolis, Minnesota,
ISBN 0-7565-0150-4 [READ]
Slavery - The Struggle for Freedom, by James Meadows, The Child's World,
ISBN 1-56766-923-9 [READ]
The Liberty Bell, by Tristan Boyer Binns, Heinemann Liberty, Chicago, Illinois,
ISBN 1-58810-403-6 [READ]
Massachusetts, by J. F. Warner, Lerner Publishing Company,
ISBN 0-8225-4050-9 [READ]
Washington, D.C., by Dennis Brindell Fradin, Childrens Press, Chicago,
ISBN 0-516-03851-6 [READ]
Washngton, D.C., by Kathleen Thompson, Steck-Vaughn Company,
ISBN 0-8174-472-9 [READ]
Arlington National Cemetary, by R. Conrad Stein, Childrens Press, Chicago,
ISBN 0-516-06625-0 [READ]
The Lincoln Memorial, by Chatherine Reef, Dilllon Press, New York,
ISBN 0-87518-624-6 [READ]
Independence Hall, by Sandra Steen and Susan Steen, Dillon Press, New York,
ISBN 0-87518-603-3 [READ]
New York City, by Deborah Kent, Children's Press, A Division of Grolier Publishing, New York, London, Hong Kong, Sydney Danbury, Connecticut,
ISBN 0-516-20025-9 [READ]
Rushmore, by Lynn Curlee, Scholastic Press, New York,
ISBN 0-590-22573-1 [READ]
Yellowstone National Park, by Deborah Kent, Children's Press, Chicago,
ISBN 0-516-06678-1 [READ]
Yellowstone, by Norbert Rosing, Firefly Books, Willowdale, Ontario,
ISBN 0-55209-238-0 [READ]
South Dakota, by Kathleen Thompson, A Turner Book, Austin, Texas,
ISBN 0-8114-7387-2 [READ]
Bryce Canyon Naational Park, by David Petersen, Children's Press, Danbury Connecticut,
ISBN 0-516-20048-8 [READ]
The West, by Thomas G. Aylesworth, Virginia L. Aylesworth, Chelsea House Publishers, New York - Philadelphia,
ISBN 1-55546-563-3 [READ]
Wyoming, by Patricia K. Kummer, Capstone Press, Hankato, Minnesota,
ISBN 1-56065-686-7 [READ]
Pennsylvania, by Charles A. Wills, The Millbrook Press, Brookfield, Connecticut,
ISBN 1-56294-595-5 [READ]
New Jersey, by Dennis Brindell Fradin, Childrens Press, Chicago,
ISBN 0-516-03830-3
Connecticut, in The Thirteen Colonies, by Christina M. Girod,
ISBN 1-56006-892-2
New York, by R. Conrad Stein, Childrens Press, Chicago,
ISBN 0-516-00478-6
New York, by Linda Tagliaferro, Lerner Publication Company, Minneapolis,
ISBN 0-8225-2793-6
The Statue of Liberty, by Natalie Miller, Childrens Press, Chicago,
ISBN 0-516-06655-2
Life among the Puritans, by Louise Chipley Slavicek, Lucent Book, San Diego,
ISBN 1-56006-869-8
The Spanish-American War, by Edward F. Dolan, The Millbrook Press, Brookfield, Connecticut,
ISBN 0-7613-1453-9
Gold Rush Fever, by Barbara Greenwook, illustrated by Heather Collins, Kids Can Press, Toronto Tonawanda,
ISBN 1-55074-852-1
North Dakota, by Kathleen Thompson, Raintree Steck-Vaughn, Austin, Texas,
ISBN 0-8114-7379-1
The Shoshone, by Raymond Bial, Benchmark Books, Marshall Cavendish, New York,
ISBN 0-7614-1211-5
Canyonlands - National Park, by David Petersen, Childrens Press, Chicago,
ISBN 0-516-01132-4
The Colorado River, by Carol B. Raolins, Franklin Watss, Danbury, Connecticut,
ISBN 0-531-11738-3
Holocaust Memories, by Elaine Landau, Franklin Watts,
ISBN 0-531-11742-1
"Building Bridges --- Christianity and Islam", by Fouad Elias Accad, NAVPRESS, 1997 (ISBN 0-89109-795-3)
From the back cover: "Muslim and Christians both worship one God. In fact, they have much in common. Although the history between Muslims and Christians has been strained at best, it doesn't have to be that way. There are many areas of common ground between the two faiths, providing ample opportunity to build relationships. Fouad Accad grew up in Lebanon and spent most of his life there building bridges between indivisual followers of Christianity and followers of Islam. His passion was to bring two communities together --- Mulsim and Christian. What Accad built were bridges of understanding, communication, and love. Builiding Bridges provides personal expreiences based on a lifetime of understanding the Arab world, as well as research and analysis of the texts of the Qur'an and the Bible to show the similarities between the two. This book supplies readers with the information, concrete examples, and insights necessary when dialoguing with Muslims. If you want to reach out to Muslims around you, Building Bridges will equip you to build relationships of mutual respect and trust."
最近のテーマとして「日本人は福音を受け入れるために西洋化しなければいけないか」を考えている。その問いに対する答の糸口がこの本の中にもあるような気がして、読んだ。キリスト教宣教団体の一つ Navigators からの出版物。後半は Muslim に「コーラン」の助けもかりながら福音をどのように提示するかという "Seven Muslim-Christian Principles" の解説からなっている。これは、以前私が95年から96年にかけて、アメリカに滞在中にコピーの形で見たものが、説明とともにここに収められていた。Muslim から離れてキリスト教に回宗した人について、"As it is, because of what he suffers physically and emotionally, the convert may suceed in impressing Western Christian, but he is totally cut off from having any influence on his own people." (p.8) には日本人キリスト者の姿も重なり、考えさせられた。これは次のように続く。"Today there are Muslims trusting Christ in Muslim lands who do not consider that they have become "Christians" (the word has a political connotation to Muslims), but instead see themselves as having become truly Muslim (the word Muslim means `surrendered to God')" 日本においてもこのようなことは可能だろうか。この本も戦略的な一つの方法として受け止められる可能性もあるが、世界各地での contextualization の様々な試みの一つとして貴重な本だと思う。
(2002年8月19日)
"The Adventure of the Devil's Foot", by Sir A. Conan Doyle, 三木健嗣註解, 学生社 アトム・ミステリー英文双書466
この双書は、単語集が各ページにあり、辞書無しで原著を読むことができるようになっており、註も多い。ドイルのシャーロック・ホームズシリーズ「悪魔の足」の内容については、記さないが私は日本語でも読んだことがあるような気がする。この本は大学受験のころであろうか、読んだものでたくさん線が引いてあって。そろそろ子供たちも読めないかなと思い手に取ってみたが、なかなか難しい。ドイルの文体が一つの文章で巧みにたくさんのことを表現していることもあるかも知れない。特に最初の部分は私の英語力では何回か世見直さないと意味がはっきりしなかった。学生時代はおそらくそこまで手が届かなかったのであろう、最後に文中の表現を使った作文の問題が100問ついていた。すこしやってみた。このような訓練をゆっくりすることは表現を深く味わうためには、有効であろう。日本語の表現も稚拙なわたしとしては、一生手が届きそうにないレベルであった。
(2002年8月)
「武器よさらば」ヘミングウェイ著、大久保康雄訳、新潮文庫 (ISBN4-10-210003-2)
Ernest Hemingway の "A Farewell to Arms" の訳。背表紙から「第一次大戦にイタリア軍士官として参戦したアメリカの青年フレデリックは、絶望的な戦場で戦ううちに、婚約者を失った看護婦キャサリンを知る。戯れに始まった恋は、彼が負傷して病院で再会したことから発展し、悪化する戦況の中で激しく燃えあがるが、キャサリンは脱出したスイスで死んでしまう……極限状況における純愛と結末のむなしさによって読後に悲劇の長い余韻を残す傑作。」著者本人が第一次世界大戦に赤十字要員として従軍、負傷した体験などがかさなり、新聞記者として働いた筆致もいかされた文章となっている。第一次世界大戦による思想的幻滅をくぐりぬけてきた「ロスト・ジェネレーション」の心情がさまざまに表現されている。ヘミングウェイがこれからどのように進んでいくのか、もう少し作品を読んでみたい気になった。今のアメリカとのなにか大きな時代的断絶を感じてしまった。そこまでの期間を埋めるのは、そう簡単ではないであろう。訳者の解説は分かりやすく書かれていて、共感する部分が多かった。
(2002年9月14日)
「コンピュータは名人を超えられるか」飯田弘之著、岩波書店(岩波科学ライブラリー90, ISBN 4-00-006590-4)
将棋プロ6段、上智大学理工学部数学科、東京農工大学大学院工学研究科博士課程終了、工学博士、現在静岡大学情報学部情報科学科助教授の著者が、コンピュータチェスのプログラミング技術とその発展を踏まえつつ、コンピュータ将棋について解説したこの方面の入門書である。著者が友人の上司ということもあり、手に取ったが、同時に囲碁の愛好家としては、コンピュータ囲碁の前段階の人工知能の開発として、非常に重要なステップのコンピュータ将棋に興味があったからである。アメリカの大学院留学の時以来、囲碁のコンピュータソフトに興味があるが、こちらは、まったくまだ満足の行くレベルに達していないと思う。しかし、この書に、将棋のコンピュータプログラムが名人を破る年の予測が2012年とあるのを見ると、そろそろ囲碁のソフトも動き始めるべき時かとも思う。すこし、真剣に勉強を始めようかな。
(2002年11月5日)
"Up From Slavery", by Booker T. Washington, 太田芳三郎註解, 学生社 アトム英文双書32
1856年4月5日ヴァージニアのプランテーションの奴隷(1860年ごろの格付けで400ドル)として生まれ、解放後教育を受ける事を熱心に求め、Alabama の Tuskegee Normal and Industrial Institute の初代学園長として赴任、黒人の教育に生涯をかけた著者の自伝である。高校生に十分読める平易な英語で書かれ、このシリーズの形式で単語だけでなく解説が詳しいため、英語の独習書としても適している。黒人の問題を考える時、私にとっての疑問は、なぜ支配者の宗教である、キリスト教が黒人の中にこれほどまで広まったかと言う事である。解放後、大体は北軍の軍人であった人達が、黒人の教育のために、一生をささげ、その献身的な愛に満ちた働きが、解放後の特に黒人が社会にどのように入り、受け入れられていったかに大きな影響を与えたようだ。Booker T. Washington にとっては Hampton Normal and Industrial Institute の General Armstrong がそのような人である。"The older I grow, the more I am convinced that there is no education which one can get from books and costly apparatus that is equal to that which can be gotten from contact with great men and women. Instead of studying books so constantly, how I wish that our schools and colleges might learn to study men and things! I have spoken of my admiration for Genaral Armstrong, and yet he was but a type of that Christlike body of men and women who went into the Negro schools at the close of the war by the hundreds to assist in lifting up my rce. The histroy of the world fails to show a higher, purer, and more unselfish class of men and women than those who found their way into those Negro schools." (p.52)
(2002年11月21日)
「怪奇短篇集」スティーヴンソン著、河田智雄訳、福武書店(福武文庫 ISBN4-8288-3081-2)
Robert Louis Stevenson (1850-94) イギリスのエディンバラに生まれる。「宝島」「ジキル博士とハイド氏」などで知られる。88年、南太平洋のサモアを訪れ、ここを永住の地と決める。幼いときから病弱で、94年脳溢血のため、44歳の若さで世を去る。死骸盗人、ねじけジャネット、びんの小鬼、宿なし女、声の島、トッド・ラブレイクの話、マーカイム、の7編が収められている。ICU教会の日曜礼拝で、永田牧師が「びんの小鬼」を引用されたのをきっかけに興味をもち、読んでみた。正直言うと、「宝島」の著者と「ジキル博士とハイド氏」のそれとが同じということさえ知らなかった。8編はそれぞれに、人気があるようだが、個人的には、「びんの小鬼」、「宿なし女」が面白かった。人間の内面とそれをどのように外に表現するか、そしてハワイ、サモア、アイスランドなどの場所の設定、批判的・科学的な思考と、宗教的かつ怪奇的な精神の描写。文学の優劣をわたしには語れないが、十分楽しめた一冊だった。
(2002年12月7日)