Last Update : May 5, 2001
2000年読書記録
- 「科学は冒険」ピエール=ジル・ド・ジェンヌ、西成勝好、大江秀房訳 講談社 (BLUE BACKS B1271, ISMN4-06-257271-0)
『ノーベル賞受賞者の著者が、語る成功する科学の目のつけどころ』と副題がついているが、非常に話が平易に書かれており、かつ、一流の研究者の本質が表れていて、自然科学で研究者を目指す若い人には非常におすすめ。とても楽しんで読むことができました。
(2000年2月19日)
- 「インターネット『超』活用法」野口悠紀雄著、講談社
野口悠紀雄の公式サイト にはかなり良いリンク集があり、この本を買うと、中にこのリンク集をフルに使うためのパスワードが入っている。本自体は、2時間もせずに読むことができる。大学の研修会の前に渡されたが、個人的には、特記事項なし。
(2000年3月20日)
- 「アガメムノーン」アイスキュロス著、久保正影訳、岩波書店 1998 (pp210)
ギリシャ悲劇の代表作。ギリシャ悲劇を通して読んだのは始めて。女性の視点をしっかりと書いてあり、当時の人間理解の深さ、文化への浸透に非常に驚いた。このような作品を楽しめるような文化を持った人についてもう少し学びたいと思った。
(2000年4月7日)
- 「群上の調和解析」数学の風景1:河添健著、朝倉書店 ISBN4-254-115511-2
1 調和解析の歩み、2 位相群と表現論、3 群上の調和解析、4 具体的な例、5 2乗可積分表現とウェーブレット変換
「大学初年度の(数学の)教科を終えた人を念頭に書かれてい」る「群の表現論と、群上の調和解析の入門書」とありますが、大学3年か4年終えた数学の学生がひとりでのんびり、時々手を動かしながら読むのに最適な本ではないかと思います。歴史の部分と、例の部分は、特に大切にして書かれているように思います。門外漢として楽しめた一冊。
(2000年7月某日)
- 「マンガ 量子論入門 (だれでもわかる現代物理)」J.P.マッケボイ(文)、オスカー・サラーティ(絵)、治部真理(訳) 講談社 (BLUE BACKS B1295, ISBN4-06-257295-8)
1927年のソルベイ会議の写真の登場人物を追って、量子論の成立をマンガを用いて示している。私の執務室の壁にこの写真があり、どこかで見た顔は何人かいるが、名前を特定できるのは、アインシュタインぐらいしかいなかったので、名前が分かるだけで十分な感動があった。マックス・プランク(1858ー1947)、マリー・キューリー(1867ー1934)、アルベルト・アインシュタイン(1879ー1955)、ポール・ディラック(1902ー1984)、ルイ・ド・ブロイ(1892ー1987)、マックス・ボルン(1882ー1970)、エルビン・シュレーディンガー(1887ー1961)、ウォルフガング・パウリ(1900ー1958)、ウェルナー・ハイゼンベルグ(1901ー1976)、ニールス・ボーア(1885ー1962) ワクワクする。もう少し、私も、議論の中身が理解できたらと思う。十分よく、まとめられていると思う。
(2000年8月某日)
- 「暗記しないで化学入門 (電子を見れば化学はわかる)」平山令明 講談社 (BLUE BACKS B1296, ISBN4-06-257296-6)
電子の動きで化学反応などを説明していき、覚えることからの脱却を示唆している。立体構造とそれのもたらす性質の違いなどから、良く説明されている。ただし、著者の目標は専門の有機化学であるため、途中から非常に急いでしまっている。それは、仕方のないことかもしれないが、同時に、結局は、暗記せざるを得ない学習者への配慮に欠けるように思われる。一貫してゆっくりで通しても、十分、読者を魅了することはできたのではないだろうか。しろうとの私には、はじめて知る部分も多く、楽しめた部分は多い。
(2000年8月某日)
- "the Holy Bible" New Revised Standard Version
国際基督教大学教会で使用している訳。1999年1月1日から一日2章ずつ読み、旧約と新約を通読。英語の通読は4回目だが、私の英語力では、まだ、深くは理解できない。通読の記録については、生涯学習での講演参照。
(2000年8月15日)
- 木村良夫著「数学パズルで遊ぼう」日本評論社 (ISBN4-535-78250-4)
1 頭の体操、2 切手バズル、3 引き算遊びの数学、4 ぶどうの房パズル、5 反魔方陣、6 ネットワーク、7 パイプ並べの数学、8 ありの問題、9 三山くずし、10 クロスクラム、11 パズルの王様ペントミノ、12 ソリティアの必勝法、13 アフリカの石とりゲーム、14 解答編
小学校高学年以上。「数学は嫌いじゃないけど苦手」と言う人、「中・高で数学は嫌いになった」と言う人にはお薦め。面白く、かつ、ある程度突っ込んで書かれてあり、読んでいてだれでも楽しめると思います。著者が実際に、一般の学生向けに何回か話した話だと思いますが、良く練れていて、著者の人柄も現れているのではないかとおもいます。著者は、大学院の先輩で、個人的にお世話になった経験もあります。[August 30, 2000]
(2000年8月30日)
- 「算数オリンピックに挑戦 '95〜'99年度版」算数オリンピック委員会編、講談社 ブルーバックス (ISBN4-06-257288-5)
最近一般の人向けの数学・算数の本で面白いものがたくさん出て来ていますね。色々な人が数学・算数の魅力を伝えたい、と思うようになって来たと言うことでしょう。もしかすると数学離れに危機を感じている人も多いのかも知れませんが。最近では、1991年から「算数オリンピック委員会」(広中平祐会長)もでき、ピーター・フランクルが専務理事で「算数・数学アカデミー」を組織して、英才教育をしているようです。ぱらぱらとめくってみましたが、ちょっとつまってしまうものや、軟らかい頭の子供の方が得意かなと思う問題など面白い問題も幾つかありました。小学生が対象で、5年生以下のジュニア大会というものも行っているようです。中学ごろまでは、算数・数学好きだった。というひともたくさんいますよね。ちょっと、チャレンジしてみてはどうでしょうか。
(2000年11月10日)
- 「心はどのように遺伝するのか (双生児が語る新しい遺伝観)」安藤寿康著 講談社 (BLUE BACKS B1306, ISBN4-06-257306-7)
一卵性および二卵性双生児の研究から、身長や体重だけではなく IQ や性格への遺伝的性格を明らかにしながら、「優生学」との批判を受ける呪ばくから開放され、科学的研究として確立されることを求めて、様々な反省・弁明を含めながら論を進めている。進化論のダーウィンと、優生学のゴールトンがまたいとこであるという記述から、似ている面、似ていない面などを記述しながら、学問の盛衰と個人的な興味ある例を引いていく筆致は興味を感じる点が多い。しかし、まだ、統計的優位さと、遺伝子レベルの遺伝の仕組みを結びつけるには、まだまだ道は遠く、自然科学の意味での「科学」となっていくためには、まだまだ、最初の段階と感じた。「親は二人目の子どもを持つまでは環境論者でいられるが、二人目の子どもができると遺伝論者となる、と行動遺伝学者は言う。(106頁)」とあるが、息子3人、娘2人をもつ親としては常々思っていることである。しかし、そのことと、遺伝子レベルで科学的に証明するためには、まだ問題すらも整理されていない気がする。
(2000年12月3日)
- 「決定版 完訳 グリム童話集 1」野村ひろし訳 筑摩書房
グリム兄弟の、兄のヤーコップ(1785ー1863)は言語学者、弟のヴィルヘルム(1786ー1859)は文芸学者で共に、ベルリン大学教授、「ドイツ伝説集」「ドイツ語辞典」も共同で編簒。兄27歳、弟26歳の頃第一版を出し、後半は、弟が中心に、70歳ぐらいまでで、第7版までを出したその第7版の完全訳。子供の目の視点より、読み聞かせる側、または与える側の親の視点がまだ、多く残されている気がするが、版を重ねるにつれ、子供の視点に近くなっているとのこと。その辺りも興味ぶかい。しっかりとしたことばで書かれているのは、訳だけでなく、おそらく原文のドイツ語もしっかりとした言葉で書かれているからであろう。意地悪な継母と、気はやさしいが、結局尻にしかれる夫のパターンが多い。その意味でも、男の視点が強いが、男自体はこの時代も弱かった(だらしなかった)のかも知れない。
(2000年11月28日)
- 「新約聖書」(口語訳) 日本聖書協会
ギデオン協会版の日英訳対照聖書(英語版は、Today's English Version) を一日2章ずつ8月16日から読み始め、日本語を中心にして、聖書ノートをつけながら12月26日読み終える。今回もいくつもの新しい発見ができた。感謝。2001年1月1日からは、日本聖書協会の新共同訳と、Today's English Version が併記されている聖書を入手したので、これを日英両語で読みたいと思う。
(2000年12月26日)